私の嘘
一月十五日。日曜日。
そして、今はその直人君と図書館で勉強中だ。
困った事に、十七歳の二人は、年齢的に不釣合いな教科書に四苦八苦していた。
みんなで、頑張ろうね。
やっぱり、私は介護の道を目指している。
具体的な方法は未定だけれども。このまま高校在学中に資格を取り、卒業して直ぐに就職するのもいいだろう。専門学校や大学も良いかも知れない。より、専門的な資格や、違う系統の資格も取れるからだ。できる事が増えるのは、良い事なのだと思う。
そして、この仕事を目指すなら、これからも多くの別れが待っているのだと思う。
それでも、支えてくれる人たちがいるから。
それでも、喜んでくれる人がいるから。
なによりも、私はディケア施設にいた時間が幸せだったのだから。
私は介護の道を歩む。そう、決めた。
最近の私は、物事を前向きに捉えられていると思う。
今、こうして隣で中学校で習う因数分解と必死に戦っている、頼りない少年。直人君のおかげだ。
私は、一つだけ嘘をついている。
自分自身にも、直人君の心にも、弥生さんにだって。
もちろん、無神経なお兄ちゃんには言えない。
本当は聞こえていた。
除夜の鐘と共に、直人君が言ったあの言葉を。
「僕は、由紀ちゃんが好きだ。だから、僕が由紀ちゃんの闇だって全部受け止めてみせる!」
嬉しかったよ。




