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人類は滅ぶべきです

 一月一日。日曜日。

 除夜の鐘の音と共に、僕は見た事のある場所に来ていた。

 真っ白な世界。

 何もない不思議な世界。

 いるのは僕ともう一人だけ。

 あの、少年だ。この前のような、神々しさはなく、恐ろしくさえ感じる。

 天使なんかじゃない、彼は悪魔だった。

「約束の時間です。答えを聞かせてください」

 少年は、事務的に僕の答えを促す。

 答えは決まっている。

「人類は滅びない。滅びたくない」

 今でも、人類が必要かと問われるならば、その答えは必要ない、だと思っている。

 だけど、僕はみんなを失いたくない。

 みんなに終わりになって欲しくない。

 一分ほどだろうか。

 少年は黙って、僕を見つめる。

「答えが出ました。必要でないが三百二十六票。必要だは三百二十五票。無効票が十五票」

 そして、無表情だった少年に、初めて表情が見えた。嬉しそうに笑って、こう言ったのだ。

「人類は滅ぶべきです」

 その時、全身の骨が砕けたような激痛が走る。思わず、悲鳴を上げてしまった。

 心なしか、周りからも同じような悲鳴が聞こえた気がする。

 ここは、白い世界じゃなく、現実の世界に戻ったのだろうか。

 それを確かめる気力もない。

 僕の身体は、耐え難い苦痛から逃れる術として、意識の遮断作業に取り掛かった。

 薄れいく意識の中、辛うじて聞き取れた言葉が耳に残った。

「システムエラー。なんだよ、お前も人類が好きなんじゃないか」

 

 気がつくと、視界に映ったのは、元いた公園だった。

 僕は、大の字で寝そべっている。

「大丈夫?」

 由紀ちゃんが、いつもの太陽の笑顔で手を差し伸べてくれる。

「うん。ありがとう」

 僕は手を握り、答えた。

「こちらこそだよ。ありがとう、直人君」

 理由はわからないけど、由紀ちゃんもお礼を言った。

 僕らは、結局その日そのまま帰った。

 僕も由紀ちゃんも、お尻がビショビショに濡れていたからだ。

 北海道の冬にぬれた服で過ごすのは、いささか辛いものがある。

 僕はともかく、由紀ちゃんに風邪を引かせるわけにはいかない。

 結局のところ、僕は何が起きたかわからない。

 だけど、今こうして再び由紀ちゃんと過ごせる事が嬉しかった。

 そして、これからも……。

 理由も確証も無いことだけど、僕にはある確信があった。

 彼女の闇は消えたのだ。

 あの笑顔が戻ったのは、きっとそういう事なんだ。


 それから、元旦からの一週間程は、由紀ちゃんも弥生さんも、それぞれに用事があるらしく スタンプラリーも休みだった。

 そして、取り残された斉藤家長男である洋介の病室に見舞いに行ったら、ぼやいていた。

「息子が入院してるのに、家族みんなで、親の実家に帰りやがって……」

 階段で転んだ、なんて嘘をつくからだよ……。

 洋介、大丈夫さ。

 僕も暇人だ。

 毎日来るよ。

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