真相
その日の夜。明子さんからの電話があった。
「もしもし。由紀ちゃん。急にゴメンね」
「いえ」
「あのね。突然でビックリするかもしれないけど落ち着いて聞いてね」
なんだろう。
明子さんの様子がおかしい。
やっぱり、急に押しかけたのが後から問題になったのかな。
もしかして、もうあの施設には行けないのではないだろうか?
「何から話したらいいかな。タケゾーさんがね、この施設には来れなくなったの」
「え?」
「タケゾーさんはね。今日の朝ね。連絡もなく、私たちの所にも来なかったのね。念のため、ご自宅に様子を見に行ったのよ。そしたらね……」
それ以上言う事が出来ないとでも訴えるように、少しの間言葉に詰まっていた。
「それでね。アパートの管理人さんもね、二日ほど見かけてないと言うのね。だから、部屋の様子を見させてもらったの。タケゾーさんが八十を超える御高齢だと知っていたから、直ぐに部屋の鍵を開けてくれたわ」
また、言葉に詰まる。
数回の深呼吸をして、言葉を何とか搾り出すように一言。悲しい一言が伝えられた。
「お亡くなりになっていたわ」
そんなはずはない。
日曜日に会ったばっかりなのに。
あれから三日しか経ってないじゃない。
人がそんな簡単に死ぬなんて……。
「眠っている様な安らかなお顔だったわ。今にも起きてきそうだった。由紀ちゃんが最後に許してくれたからよ」
そう言うと、明子さんは泣き出してしまった。
明日、東京にいるタケゾーさんの息子さんの元へ遺体がご輸送されそうだ。
その後、明子さんがタケゾーさんの思い出話を聞かせてくれた。
だけど、なんだか思い出話は世間話にしか聞こえなかった。
タケゾーさんらしいエピソードを聞いても涙は出てこなかった。
事態が飲み込めない。
信じられない。
だって、あんなに元気だったのに……。
タケゾーさんの死の実感が沸いてきたのは、寝る時だった。
全ての活動を停止し、目の前に闇が広がると、考え込んでしまう。
せっかく、明子さんに楽しい思い出を聞かせてもらったのに、私の頭には、あの弱々しくうずくまるタケゾーさんばかりが思い出される。
結局、一睡も出来なかった。




