アルバイト
十二月二十五日。日曜日。
日曜日は、いつもなら由紀ちゃんが来る曜日だ。
だけど、ぽっかりと空いた時間があるだけだった。
今日、由紀ちゃんは来ない。
僕は昨日の夜から、二つの決意を固めていた。
一つは、自分で自分自身を認められるまで、愛の告白はお預けにする事だ。
そして、もう一つの決意のため、僕は昼の外に出る事にした。
一度出てしまったからかな。
あるいは、昨日は色々と嬉しい事があったせいかもしれない。
少しの恐怖はあるものも、僕は前を向いて歩けていた。
もう一つの決意。それは、みんなを早く安心させる事だ。そのための一つの手段として、アルバイトをしなくてはいけない。
スタンプラリーの公園に行く時、新聞配達員募集中の張り紙を見つけたのだ。
僕は、新聞販売店のドアを開ける。
中には、折込みチラシの整理をしている三十後半と思われる、真面目そうな女性がいた。明日の分だろうか?
「あの。表の張り紙を見たのですが、まだ募集していますか?」
昨日から、ひたすら練習したからスラスラ言えた。なれた動作で履歴書も渡す。これも練習したから、スムーズに出来た。
「えぇ。まだ、募集してますよ。あなたは、学生さんかしら?」
「いえ。何もしてないです」
「そう。朝刊の募集なんだけど、いつから来れる?」
「えっと、いつでもです」
「ふーん、明日からでも大丈夫?」
「はい!」
「それじゃ、合格の際には電話するわ。あら、携帯電話の番号が書いてないわね。自宅でいいのかしら?」
「はい!」
五分もかからず、面接は終わってしまった。
一目見て、引きこもりだとばれたのだろうか?
面接するまでもなく、不採用決定なのだろうか?
そんな心配は、考えすぎだったみたいだ。
二時間後に『所長』と名乗る男から、電話が来た。
そして、やんわりと、初の注意を受けた。
「募集の張り紙があっても、電話で訪問の折を伝えたほうがいいね。事実、私がいなかったから、事務の子が困っちゃったんだよ。それに、今日は日曜日だ。出来れば平日の方が良いよね」
言われれば何で気がつかなかったのかと恥ずかしい事ばかりで、僕は社会の常識の欠片もないのだと実感した。
その後、電話での面接をした。
所長さんの不幸は、僕の幸運だった。
とても人手に困っていたらしく、
「うん。分かったよ。それじゃあ、明日から来てくれるかな」
その場で採用してもらえた。
まるで、世界は僕を受け入れてくれているみたいだった。




