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夢を見た

 十二月一日。木曜日。

 朝の変な夢で、少しテンポ悪く出かける準備をしていた。

 普通の人は学校に行ってる時間ね。

 同級生は高校二年生で、季節を考えると、そろそろ受験を意識しての期末テストがあるのかしら。

 でも、彼女たちと私は違う。

 私は未だに高校一年生のままだ。留年したみたい。まだ、学校には籍はあるみたいだけど、良くわからない。

 もう、行かないもの。行けないもの。

 私はもう一年以上も学校に行ってない。

 これから私が向かう先は学校じゃない、心療内科を専門にしている病院だった。毎週木曜日は、診察を受けている。通い始めて、そろそろ半年ぐらいになる。

 あんまり、人に言える事実じゃないのだけど、私はこの日が楽しみだった。

 担当の先生がステキな人だから。

 地元の駅、そこは札幌市の最果ての駅なのだけど、それ故にか、そこそこ栄えていた。そんな駅近くに建ち並ぶビルの一つ、三階に病院はある。

 病院のドアを開けると、私が声をかけるより先に、受付のお姉さんが話しかけてくれた。

「あら、由紀ちゃん。おはよう~」

 受付の人に名前を覚えてもらえるのは、なんだか、こそばゆい。

「おはようございます」

 あ、笑顔だったかな。顔まで意識してなかったわ。どうしよう。怒ってるような顔だったら失礼だよね。大丈夫かな。

 診察券を渡す時は、笑顔にならなきゃ!

 今度は、言葉を出すのを忘れてしまい、無言で診察券を渡してしまった。だけど、受付のお姉さんは「ありがとう」と気持ちの良い返事をくれた。

 どうして、私は人前で、うまく立ち回れないんだろう。

 でも、病院の人たちは、ちゃんと私を見てくれて反応してくれてる。


 言いたい事が言えなくなったのは、いつからだろうか? 

 小学生の時?

 中学生の時?

 それとも、高校に入学してからかな?

 高校生活にも慣れ始めた、一年生の夏休み。

 私は、友達に捨てられた。

 ううん。

 私が友達だと思って、勝手に付きまとっていただけだった。


 病院の待合室で自分の診察を待つのは、孤独な時間だった。

 心療内科という病院に通う人は、それぞれに悩みを抱えているのだろう、と思わせる暗い顔をした五人の待ち人たち。

 私はその一人だった。

 そして、暗い気持ちになると、今朝の変な夢を思い出す……。

 不思議な夢を見た。

 虚無の空間。何も無い空間。

 ただ、一人その部屋の主を除いては、何も無い部屋だった。

 そこには、悪魔がいた。

 なぜ、そう思ったのかはわからない。外見は少し可愛いとすら思う少年だったのに、体の細胞全てが『彼は危険だ』と知らせている、そんな恐怖を感じていた。

 彼は、ただ選べと告げていた。

『人類は、世界に必要か?』と。

 そんなものは、決まっている。

 みんなに幸せになってほしい。それに、誰であっても、たとえ神様だったとしても、頑張ってる人の努力を無下に踏みにじって良いはずが無い。

 人類は世界に必要にきまっているわ。

 でも、私は世界に必要なのかな……。

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