変わっていく
今日は、いつもより、長めに拘束してしまった。
公園を出た時には、弥生さんと合流してから、三十分程の時間が過ぎていた。
家路を目指すも、僕の視線は白い雪道だけを見ていた。上は向けなかった。
でも、すれ違った札幌市民は、僕へキモイと言わなくちゃいけない義務を、忘れてしまっていた。まるで、弥生さんは魔法使いで、公園での話は、札幌市民への『忘却呪文』のように感じた。
家に戻り、スタンプカードのコメントを確認すると。
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洋介君も由紀ちゃんも私も友達だよ。
過度の遠慮は相手を傷付ける事もあるさ。
由紀ちゃんには言ったら駄目だよ。彼女は、きっとうまく対処出来ないからね。
安心したまえ!
由紀ちゃんの答えも、私たちと一緒さね!
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注意が書いてあった。
それから、数日は勉強とゲーム、由紀ちゃんが貸してくれた小説を読み直したりして過ごした。
申し訳ないことに、スタンプラリーは確かな日課となってしまった。
僕は、辛い思い出の再検証もしていた。
弥生さんの言う通り、僕はキモイと言う言葉に恐怖するあまり、勘違いしていただけかもしれないと思い始めていたからだ。
僕の勘違いかもしれないものが五十%、多分勘違いじゃないものが三十%だった。そして、どう考えたって勘違いじゃないと解るほど、ハッキリと言われたのは二十%程しか思い浮かばなかった。
それに誰かがあの言葉を言ったとしても、僕にはちゃんと価値がある。かもしれないんだ。
これも弥生さんの優しい嘘なのかもしれない。それでも、僕の心は軽くなった。
こうして、日に日に外に出る恐怖も薄れ、食べたご飯をトイレに捨てる回数は減っていった。
だけど、僕が幸せになるのと反比例するように、弥生さんは微笑みを失っていくように感じていた。




