7時間目 帰ろうか?
ちょっとシリアスな暗い話が続きます。
ふぅ・・・やっと座れたぁ。
俺は掃除を終わらせて自分の席に着いた。
あの後俺は、ほとんど一人で掃除をやっていた。
白鳥さんは邪魔してくるし、先生は飽きたとだけ言って帰ってしまうので大変だった。
しかし、俺の運も捨てたものでなかった。
なんと天宮さんが手伝いに来てくれたのだ。
俺は天宮さんに感謝をしながら手伝ってもらい、早く終わらせることができた。
・・・ってか、白鳥さんが来なければ二時間くらい前には終わっていたのだ。
その当の本人は天宮さんが来ると、
「もう遊び飽きたから、麻奈美ちゃん後ヨロシクですぅ」
と言って帰ってしまった。
何のために来たんだよっ!
っつーか、こんなに自由な学校、普通はないだろっ!?
「天宮さん、ありがとうね」
「ううん、いいよ。一人で大変だったでしょう?」「まあ、掃除する事は嫌いじゃないけど・・・白鳥さんがきつかったなぁ」
「あはは、だよね」
ホントに大変でした。
しかし、思い出したくないので話させないでもらいたいです・・・シクシク。
「月森君はこれからどうするの?」
「んあ? 何が?」
「このまま学校にいる?」
・・・。
「帰ろうか、な?」
「んー、それじゃ、私も帰ろう」
「うん。帰ろうか」
「うん」
俺等はこのまま居ても生徒どころか先生までもが来なそうなので帰ることにした。
本当に自由だなぁ。
〜〜〜〜〜
ってな訳で俺と天宮さんはまだ早い帰宅の道を歩いていた。
やはり、他の生徒達はまだ授業をしているためにとても静かだった。
「いい天気だね」
「うん」
「掃除大変だったね」
「うん」
・・・。
「明日晴れるかな?」
「うん」
「俺って馬鹿だよね?」
「うん。・・・!? え、私・・・その」
天宮さんはあたふたとしだした。
「あはは・・・。ごめんね。なんかボーッとしてたからさぁ」
「ごめんなさい!」
「いいよ、謝らなくて」
俺は天宮さんの頭を撫でながら言った。
「私、その・・・男の子と帰ったことなくて」
「あはは、そうかぁ。なら、俺は初めての男なんだなぁ」
俺は冗談のつもりだったが、天宮さんは顔を真っ赤にしていた。
俺は、それが何だか可笑しくなってきてしまった。
「月森君、私って変?」
アハハ、これまた唐突な・・・。
「いや、そんなことないよ。」
「ホントに? 私と居てつまんなくない?」
「シシシ、そんなことないよ。すごく(見てるだけで)楽しいよ」
「ホント?」
「俺は滅多に嘘はつかないよ」
「ホントに嘘はつかない?」
俺は小さく頷いた。
天宮さんは俺の顔を見ている。
沈黙が二人の間に訪れる。
あれ?
なんかおかしな事でも言ったかな?
それにこの状況って、もしかして・・・。
俺は自分の心臓が強く脈打ってるのを感じた。
「月森君って・・・。」
「はいっ!?」
「月森君ってホントは・・・。」
ああ、そんな目で見つめないで。
俺の心臓は更に脈を強く打ち始めた。
「ホントは・・・魔法が使えるんじゃないの?」
ドーン!
急な話題変換に俺はその場にコケてしまった。
「い、いきなり何言い出すんだよ」
「あ、ごめんなさい。ただね、そんな気がしたから」
・・・だからって、こんな話題の変更はないだろ!?
ってか、さっきの間は何だったんだよ。
俺は自分の体についた埃を叩いた。
「で、なんでそう思うの?」
「ただ・・・なんとなく」
なんとなくってか、ただの思いつきだろ。
「はあ、わかったよ。正直に全部話すよ」
「えっ!? それじゃあ・・・」
「いや、魔法が使えないのは本当だよ」
天宮さんは不思議そうな顔をしていた。
どうやら、洗いざらい全部話さないといけないらしいな。
はあ、めんどくさいなぁ。
〜〜〜〜〜
俺は話が長くなりそうなので、近くの公園でベンチに座りながら話すことにした。
ちなみに、ここは俺が散歩をしたときに小雪と一緒に来た公園である。
俺は静かに腰を下ろした。
やはり誰もいない。まあ、時間的に子供は幼稚園や学校に行っている時間帯なので当たり前である。
「天宮さん」
「何?」
「本当に聞きたい?」
「うーん、月森君が話したくないならいいよ」
「・・・いつかは、話さないといけない事なんだよな」
俺は自分の過去を語ることにした。
「天宮さんは月森家の事は知ってる?」
「確か、魔法を強く持つ一族、だよね?」
「そう。月森家の一族は全員魔法を使え、また力が強いとされてる。それが表の話だね。でも、その例外が俺らしいんだよね」
天宮さんはただ黙って俺の話を聞いてくれるらしい。
「しかし、この話には裏があるみたいなんだ」
「裏?」
「うん。・・・俺が魔法を使えない・・・いや、使えなくなった原因は俺の父親にあるらしいんだ」
続きます。