3時間目 戦いですか?
どうも、月森拓海です。
前回もピンチだったのですが、今回はもっとまずい状況です。
前回、俺は裕司と千鶴の喧嘩を止めようと、裕司とテストで勝負しようと言いましたが、俺の言い方が悪かったのでしょう。彼は勝負は喧嘩と勘違いしてしまったらしいです。
そして俺は彼と対峙してる最中です。
では、続きをどうぞ。
「さあ、かかってきな。」
はいぃぃぃぃっ!?
何でこうなったんだ?
『俺と勝負しよう。』
はっ!?
『俺と勝負しよう。』
『勝負しよう。』
『しょぉおぉぶしよぉ。』
ああ、なんか最後スローで聞こえるよ。
やばい。
『テスト』って単語入れ忘れたァ。
ああ、どうしよう。
裕司は未だに構えて俺の攻撃を待っているようだ。
さて、どうしようか。
「いやぁ、拓海は男らしいね。裕司とさしで勝負とはねぇ。」
千鶴、お前もそう受け取ったのか。
「そっちから来ないならこっちから行くぞ。」
え?
裕司が急に突っ込んで来たので俺はそれを避けた。
すると、裕司が放った突きは俺の後ろの壁を貫いた。
うそぉ!?
粉々になった壁はその恐ろしさを物語っていた。
俺はこんなのを相手にしないといけないのか?
「どうだ、俺は『地』の属性を持ってるんだ。」
地?
そういえば恵魅が話してたな。
魔法にはいくつかの属性があるって。
よくわからんが、とにかく力はすごいらしいな。
魔法の使えない俺はどうすればいいんだ?
「よし、いくぞ。」
嫌だァ。吉○蔵さん助けてぇ。
あらら、お兄さまったらおかしな事言ってますよ。
どうも、ここからは私、月森恵魅がみなさんの案内致します。
さて、お兄さまったら裕司先輩の攻撃から逃げているだけですね。
「ふむ。お前さんの兄者、できる人間でだろうな。」
「でも、逃げてばかりねぇ。」
「あ、蜜柑先輩、もも先輩。」
神無月蜜柑先輩。普段から物静かでおとなしめでいつも片手に木刀を持っているので、恐い人と勘違いされやすいのだが、本当はいい人で私の尊敬できる先輩の一人である。
穂村すもも(ほのむらすもも)先輩。武術をやっていてとても強い先輩なのだ。この人も仲が良く、私の尊敬できる先輩の一人である。
「恵魅の兄さん、確実に裕司の攻撃避けてるなぁ。」
「ええ、お兄さまは喧嘩というものを好まないだけで、本気なら裕司さんと互角だと思いますよ。」
「いや、それはどうかな。・・・恵魅、あやつを戦わせるにはどうすればよいのだ?」
「簡単なことですよ。」
お兄さまが逃げる度に教室の壁や床が壊れてしまうので、私はお兄さまに言った。
「お兄さま、私が許可します。」
そう、この一言でお兄さまは禁断のアレを使います。
まあ、アレが出ればいくら裕司先輩だって・・・ね。
「わかった。」
お兄さまは段々と自分に有利な広い場所へと逃げていた。
まあ、お兄さまなら一回くらい当たっても死なないでしょう。だって、直径1メートル程の氷を直撃しても生きてるんですもの。
さて、自分の有利な場所に移動すると深呼吸した。
「なあ、恵魅よ。あやつに許可すると言ったが、何を許可するのだ?」
「本気で戦うことですよ。」
お兄さまが逃げるのを止めると、裕司さんも立ち止まった。
「おい、俺ばっかりじゃつまらないから、そろそろ攻撃してくれよ。」
「いいよ、俺は。」
お兄さまはそう言って腕を下ろした。
ふーん。そう来たんだ。なんか、またすごいものが見れそうだな。
「恵魅ちゃん、月森君は大丈夫かな?」
天宮先輩だ。
そして、その後ろには小雪ちゃんと花月ちゃんがいた。
三人とも心配そうな顔をしている。
そして、その小雪ちゃん達の後ろには和彦さんがいた。
しかし、和彦さんからは心配という言葉とは全く関係のない顔をしていた。
それは千鶴さんも同じだった。
しかし、この人に関しては面白いなぁ、という顔をしていた。
「ええ、大丈夫ですよ。むしろ、心配なのは裕司さんですよ。」
「えぇっ!?」
三人は声を揃えて驚いた。
そんな三人とは違い、和彦さんと蜜柑先輩、それとすもも先輩は涼しい顔をしていた。
「おお、そうかい。それじゃ、これで最後だァァァ!!」
突っ込んでくる裕司さんに対して、お兄さまは息をめいいっぱい吸い込んで、次に備えた。
それは一瞬の出来事だった。
突っ込んだはずの裕司さんがお兄さまの後ろで浮いているのだ。
まあ、本気を出したお兄さまなら当然ですね。
でも、ちょっとやり過ぎかもしれませんね。ほら、お兄さまも裕司さんに謝ってますし。
それでは、そろそろお兄さまに視点を帰すとしましょうか。
では、これからも私の活躍にご期待してくださいねぇ。
はい。やっと俺に視点が戻りました。
今俺は、裕司に侘びをいれてるのだが、彼はなかなか反応しないのだ。
「裕司君、大丈夫? 大丈夫?」
ああ、やばい。何か勢い余って壁にぶつけちゃったよ。
だから使いたくなかったんだよな。
ああ、どうしよう。
「ちょっとよいか?」
後ろから黒髪の女の人が言った。
俺はその言葉に従い、裕司から離れた。
あ、木刀。
彼女は裕司を起こし、手刀を頭に当てた。
ああ、そない殺生な。テレビやないんやから。
しかし裕司はそれで目を覚ましたようだ。
お前は壊れかけのテレビか!!
「んん? あれ、俺何してたんだっけ?」
まだ目がうつろだ。
ってか、マジで危ないなぁ。
やっぱり人間には使わないようにしよう。
「あ、そうか。俺吹き飛ばされたんだな。」
「う、うん。ごめんよ。」
「いや、いいんだ。」
「お主、さっきの技は一体・・・?」
「さっきのは風林火山の山っていうんだ。」
「山?」
「うん。つまり『動かざること山の如し』ってやつだよ。」
「ほほぉ、それでさっきお主は立ち止まってたんだな。」
「そういうことです。」
「そうか。お主、今度小生と一戦交えぬか?」
「いや・・・遠慮しときます。」
「そ、そうか。・・・あ、自己紹介が遅れたな。小生、神無月蜜柑と申す。以後お見知りおきを。」
「月森拓海です。よろしくお願いします。」
「にゃはは。」
うわっ! 誰だ?
誰かが俺に飛び付いて、おんぶをしている状態になった。
「私、穂村すもも言うよぉ。ヨロシクなぁ。」
「あ、あはは。よろしくお願いします。」
うわぁ。何か自己紹介してくれるのはいいけど降りてほしいなぁ。
「お兄さま、久しぶりに見させていただきましたよ。」
あ、恵魅とみんなだ。
「お兄さま、相変わらず手加減というものを知りませんね。」
「いやいや、手加減したくてもできないんだよ。マジで。」
「ふーん、そうですか。」
「ああ。」
それにしても、何でこんな危険な技を俺が知ってるんだ?
危なっかしいなぁ。
「拓海、すごいじゃないか。」
「そうでもないよ。和彦。」
「アハハ。なんか拓海がここに呼ばれたのがわかった気がするよ。」
「いやぁ、お恥ずかしばかりです。」
「拓海はおもしろいのですよ。」
「ありがとね。小雪ちゃん。」
「おい、すまなかったな。」
「いや、俺はいいけど裕司君は大丈夫?」
「まぁな、大事ない。」
「へぇ。」
「あのさ、お前がいれば面白くなるからこのクラスにいろよ。」
あれ? さっきとは違う反応だ。っていうか真逆だなぁ。
「ありがと。ではお言葉に甘えて。」
裕司は何も言わなかった。
「さ、帰ろうか。」
おっと、ここでもう一人のバカの登場だぁ。・・・つまり千鶴だ。
みんなはそれに従って帰りの準備を始めた。
俺も鞄を取って、みんなと一緒に帰った。
ああ、やっぱりこのクラス面白そうだな。
ありがとな。神様。
あ、誰かに月曜の事聞かなきゃ。