39時間目 新たな始まり
「うーん・・・」
俺は目が覚めた。
そこは懐かしい場所だった。
月森家の俺の部屋だった。
頭が痛い。
俺はそんな体を起こして辺りを見た。
あの頃と変わらないこの部屋。
そして、あの頃と一緒なら・・・。
ドダドダ・・・。
誰かが俺の部屋の方に近づいて来た。
そして、開かれた障子。
その先には・・・
『拓海君っ!?』
聞き慣れた声と懐かしいような声の二つが言った。
「あれぇ?二人とも、どうしたの?僕に何か用?」
『えっ!?』
「拓海君、まさか記憶がないのっ!?」
「でも・・・なんで拓海君だけ?」
「だって、鬼さんに負けちゃったもーん」
『えっ?』
からかってみました。
「二人とも平気ですか?」
「もぉ、脅かさないでよぉ」
「ホントにびっくりした」
「ハハハ、ごめんごめん」
二人はあの時の身長だった。
そう、今日は・・・
また一人、俺の部屋に近づいてくる足音があった。
「拓海さん?」
その正体は住職さんだった。
「赤ちゃんと会ってもいいですよ」
俺らは急いであの部屋に向かった。
部屋には全員集合している状態だった。
なつかしい顔ぶれ。そのせいで俺の目が潤んだが、我慢した。
「おお!拓海来たか!」
親父だ。
「うん!」
あー、なんか喋り方使い分けねーといけねーなぁ。だりぃ。
俺は見た目は純粋な子ども、中身は俺のまんま。
どう思う?
おっとこんなことしてる場合じゃなかった。
俺は部屋の真ん中に敷かれた布団に向かった。
俺は麻奈美達と急いで中を覗き込んだ。
デジャブ?
その姿は過去にも見たことがある。
俺は彼女に手を延ばした。
彼女は俺の手を握って笑ってくれた。
お前も・・・。
「名前はどうするんだ?」
「そういえば・・・」
「もう少しでね、雪が降るの」
俺は二人の会話に入り込んだ。
「小さくて綺麗な雪だよ」
俺は日向夫妻に言った。
「雪が・・・降る?」
その場にいた全員が障子の方を見た。
俺は立ち上がって障子を開けた。
空からはあの時のままの幻想的な小さな雪が降り出したばかりだった。
全員の目がそちらに向いてる頃、俺は赤ん坊に近づいた。
「小さな雪の降る日に生まれた子、小雪って名前はどうですか?」
「え?小雪、か。うん、いい名前だな」
こうして、この日生まれた彼女は小雪と名付けられた。
ってか三歳の俺が漢字の話をしていても奇妙に思わないのは何でだ?
俺の戦いは終わりではない。またここから始まるのだ。
俺ら四人はずっと一緒だった。
楽しい日々が毎日来た。
それから十年以上の時が過ぎた。