38時間目 あれから・・・
あれから十年以上の時が流れた。
俺は神様学園・魔法課校舎の屋上にいた。
『おい、拓海?』
「ああ?何だよ修羅?」
修羅とはあの時の鬼の名前だ。
『いいのか?こんな所にいて?』
「いいんよ。頭首の仕事とかもつまんねーもん!」
『まったくぅ!』
あれから本当にいろいろあったなぁ。
でも、やっぱり俺と修羅の戦いが終わったあとが一番印象に残ってる。
それは・・・・・・。
―――――
十年前
―――――
全てが終わった。
鬼は刀の中。
おじさんと麻奈美、そして小雪を綺麗に拭いてあげた。
みんな寝てるような安らかな顔だった。
守れなかった。俺は何もできなかった。
悔しいよ。
みんな・・・みんな、なんで死んじまうんだ?
なんで置いてくんだろう・・・。
お師匠さん、天宮おばちゃん、日向おばちゃん、海堂おばさん、海堂おじさん、夜未、麻奈美、・・・小雪。みんなみんないい人だった。
でも、もう・・・。
『おい、拓海!』
月光の中の鬼が俺に話し掛けて来た。
「あ?なんだ?」
『誰かいやがる!』
俺は耳をすました。
確かにコツン、コツンと誰かが階段を下りてくる。俺は階段の方を見た。
一歩、また一歩と足音が近づいて来た。
そして、その足音の主は・・・
「おお!拓海!もう終わったのか?」
なんと、親父だった。
親父は何かでかい鏡を後ろに担いでいた。
「お、親父?」
「久しぶりだなぁ。」
「んなっ!?何が久しぶりだなぁ、だよっ!?今更ノコノコと現れやがって!!」
「うむ。そうだな」
「そうだな?そうだなだとっ!?」
俺は我慢の限界に来ていた。
「ふざけるなっ!この戦いのせいでみんな死んだんだっ!!」
俺は急に力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「なんでだよっ!?なんでみんな死ななきゃならないんだよっ!?頼むよ!みんなを返してくれよ!俺はどうなってもいい!だから、・・・だからみんなを返してくれよ。頼むよ・・・」
俺は誰に言うでなく、こう口に出していた。
しかし、死んでしまったみんなを生き返らせるのは不可能。
わかっていても悲しい運命だ。
俺はそれを受け入れるしかなかった。
しかし、一人の男が急に口を開いた。
「なんでもするのか?本当に?」
親父だ。
「え?」
俺はその言葉の意味がわからなかった。
「拓海、本当になんでもするな?」
「で・・・できるのか?」
「できない事もない。しかし、失敗したら死ぬぞ」
「死?・・・上等だよ。どうせこのまま生きてても意味はねぇからな!」
「そうか。わかった!」
親父はそう言って背中に背負っていたでかい鏡を床に置いた。
そして、脇に掛けていた鞄から何か玉を取り出した。
「拓海、月光と月影はあるか?」
「ああ!よし、ならあそこに星型の魔法陣の所に行くぞ」
俺らは星型の魔法陣まで移動した。
「拓海。月森の魔法の属性は知ってるか?」
「全・・・だよな?」
「確かにそうだ。しかし天宮、日向、海堂の三つと月森のその力が合わさったとき、新たな力が生まれる」
「新たな・・・力?」
「ああ、その名も『時』」
「時・・・?」
「ああ、すべての時間を戻すことのできる究極の魔法だ」
「究極の・・・。」
「拓海。おまえはやるか?」
「ったりめーだろっ!」
俺は魔法陣の上に月光と月影を置いた。
親父も鏡と玉をそこに置いた。
『おい、拓海!余も罪滅ぼしとして手伝うぞ!』
「ああ、ありがとう」
「さあ!拓海、始めろ!」
親父の指示により、俺は魔力を全部解放した。
夜未、麻奈美、小雪。
お前らの力、借りるぞ。
『我、月森拓海の名の本に命ずる。また月、天、海、日の四つの一族の頂点に立ちしは我なり。我の名の本に集いし神器よ。汝らの力を我に示したまえ』
俺が呪文を唱えると辺りが眩しい光で包まれた。
俺は・・・意識が飛んだ。