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37時間目 すべての決着

「ケーケッケ、やった。やったぞ。余は月森の一族に勝ったんだーー!!ケーケッケ・・・」


鬼は俺に勝った嬉しさで高笑いをしていた。


「そこまで嬉しいか?カスがっ!!」

「んなっ!?」


鬼は俺の方に振り返って幽霊でも見るように驚いていた。


「幽霊じゃあないよ」

「き、貴様、もしかしてそこに転がってるガキは日向の者かっ!?」

「ああ、そうだよ!それと同時に俺の一番大切な子だっ!!」


「そうか・・・通りで似ていると思った。揃いも揃って似やがって・・・。しかし、それももうおしまいだぁ」


ウザい奴だぜ。


俺は自分の上にもう息のない小雪に触れた。

まだ温かい。

俺はそのまだ熱のある唇に自分の唇を触れさせた。


小雪・・・俺、頑張るよ。


俺は近くに転がっていた月光と月影を持った。



「さあ!来るがいい!今ここで、俺はすべてを終わらして見せる!!」

「ヘッ!人間如きに何が出来るっ!?余は最強だ!この世で余が負けるはずはないのだっ!!」

「なら、俺はその上を行く!テメーのようなカスに俺が・・・俺らが負けるはずがない!!」

「馬鹿かっ!?お前が月森の一族だからってお前が今日勝てるはずがないっ!!今宵は満月。余の力が最大になる日なり!そのような日に貴様のような人間が余に勝てるはずはないのだっ!!」

「なら試してみろよ!俺はこの戦いは負けない!いや、負けられねーんだ!掛かってきやがれ!今日この場所がテメーの命日、そして墓場になるんだっ!!」

「ホザケェ!!」


鬼が俺に攻撃を仕掛けて来た。


俺は鬼の出した突きを左手の月影で止めた。

そして、右手の月光で鬼の首を狩ろうとした。


鬼は身を低めてそれを避けた。


俺はすかさず鬼の顔面に蹴りを食らわした。

それと同時に鬼は俺の腹を殴っていた。


俺らは思わぬ攻撃にお互い一旦身を引いた。



さっきまでの傷は小雪のおかげで全快していたので、骨折も風穴もなかった。


だから俺は万全の状態、万全の心で戦っていた。

それでも互角。厳しい現実をぶつけられた気分だ。


鬼はというと・・・。

どうやら同じ事を考えていたらしい。

恨めしげに俺を睨みつけていた。

まあ、プライドが高そうだったから、それも仕方ないか。


さて、・・・まだ決着はついてない。

気を引き締めろ!!


俺はもう一度、刀を構えた。


「ほぉ、やはり余は貴様を甘く見ていたようだな」

「それは光栄だねぇ」

「ケケケ、そこで私はその敬意に答えて本気で行ってやる。次の一撃で終わりだっ!!」

「なら、こちらもそうさせてもらおうかっ!!」


鬼はそう言うと、何か大きな黒い玉を手のひらで作り出した。

それはさっきの火の玉とは桁が違う。

あれを喰らったら人間等跡形も無く吹っ飛ぶだろう。


それに対して俺は、両手に持っている刀を逆手に持ち直し、魔力をその中に注ぎ込んだ。

そう、これこそが俺の最後の技・風林火山の風である。

魔力を使わなくてもその力は人間三人を一秒で片付けられる。

それに魔力を注いだのだから、負けるはずかない!


お互いに準備は完了したようだ。


「行くぞ!」

「来いっ!!」


鬼はありったけの力でその球体を俺に投げつけて来た。


俺はそれを月影で受け止めた。

すごい力だ。

押し負けたら待っているのは死のみ。


負ける訳にはいかない。

俺は死なない。

約束したんだっ!

必ず帰ると。

必ず負けないと。

必ず終わらすと。

必ず守ると。


そして・・・何よりも忘れないと約束したんだっ!!


そのために俺は生きる!

生き続ける!

そして・・・小雪達と一緒に生きていくんだっ!!

そのために俺は負けられないんだーーーーー!!



「オッラァッ!!」




俺は鬼の出したそれを粉砕した。


「な、何だとぉっ!?」

「これで、」


そう、これですべてが、


「終わりだぁーーーーっ!!」


俺は相手に見えぬくらいの速さで鬼に斬りかかった。


「うぐっ!?」


鬼は自分が斬られるとは夢にも思ってなかったらしい。


「クソッ!また・・・負けた!」


鬼は悔しそうにしていた。


「ハァ、ハァ・・・オイ?」

「ああ?」

「貴様は余が憎いか?」「知らん!死んじまったら変わらねーよ」


「そうか。・・・余はこのまま消えるだろう。もう未来にも過去にも現れない。最後にあやつと決着がつけられたみたいで嬉しいぞ」


「あいつ?」

「ああ。余を封印した貴様に顔の似た月森のものだ。余は鬼だ。だから、余は人間に毛嫌いされた。いつだったか、余は人間を殺すようになった。しかし、あやつは鬼である余を殺そうとしたが、終わりの瞬間、奴は私が哀れだとその刀に余を封印したのだ。」


そうか。御先祖は鬼に同情しちまったのか。



「余はありがたいと思う半面、憎しみが生まれたのを感じた。あやつと余の勝負の決着が着かなかった事とあやつが余に同情なんぞをしたからだ」

「そっか!それで?勝負の方は俺でも満足だったか?」

「ああ。すまなかったな」

「いや、もういいよ。あんたのその憎しみは消えたか?」

「ああ」

「そっか!じゃあまたこの中に戻ってくれ」俺は鬼の目の前に月光を差し出した。


「何故だ?同情等いらんぞ!」

「いやぁ、自分のためだから。あんたみたいな鬼がいるなら他にも鬼とかいるんじゃないか?って事はだ、まだ平和になったとは限らないだろ?」


鬼はア然とした顔で、俺を見ていた。


「だから俺と契約しろ!俺と共に戦うと!」


鬼は刀の中に入っていった。


「すまん」



とだけ言い残して・・・。



ふぅ・・・これで全部終わったか。


俺は小雪に・・・小雪だった物に近づいた。

もうその体は冷え切っていた。


俺は最後にもう一度だけ・・・その冷え切った唇に口づけをした。



じゃーな、最愛の人。


そんな俺の目からは涙が溢れて来ていた。




何故人は死ぬ?

何故別れなければならない?

傍にはいる。

しかし、それは悲しい・・・近くて遠い距離。

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