25時間目 起きてる?
「拓海さんは明日行くそうですよ」
「そうか。拓海?お前は今日子さんにどこまでの話を聞いた?」
「俺は・・・。」
〜〜〜〜〜
この世には必ず表と裏の二つがある。
魔法の世界も同じ。
表は政治的な活動を行い、裏は表の護衛、つまり隠密というやつを行う。
月森はその表にあたるのだ。
月森は表で様々な形で政治に参加する。
そして、その月森は表なら裏は・・・海堂だ。
海堂家は昔から月森を裏で支えてきた。なので、月森には信頼されてきた一族だった。
そして月森は他にも信頼できる一族がいた。
天宮、日向の二つもその海堂と同じ役割を果たしていた。
昔は月森を先頭に四大魔法一族というほど有名な一族だった。
しかし、それは俺が記憶を封印される前の話。
そのきっかけは・・・。
〜〜〜〜〜
俺は隣で寝ている日向一族最後の一人を見た。
・・・ふぅ。
俺は理事長達の方を見た。
「あの・・・先に理事長室に向かっていてもらっていいですか?」
「え?でもここでも・・・。」
「行こう」
理事長が橘さんの肩を叩き、途中で言葉を止めた。
橘さんはわけがわからないようだったが、仕方なく理事長と店を出て行った。
「拓海」
理事長が出ていく時に声をかけた。
「自分のしたいようにしなさい」
「・・・ありがとうございます」
理事長達は静かにドアを閉めた。
・・・。
「俺さ、明日から少しの間いなくなるから」
「・・・。」
「だから、みんなのこと頼んだわ」
「・・・。」
「・・・さっきから、寝息止まってるよ」
「・・・すー、すー」
「いつから聞いてたか知らないけどさ、ついて来ちゃダメだよ」
「・・・拓海?いつに帰ってきますか?」
小雪はテーブルに伏せながら話した。
「・・・わからない。でも必ず帰ってくるよ」
「小雪も・・・行きたい」
「・・・ダメだよ。巻き込みたくないもん」
「その話って小雪も関係してるのですよね?」
「なくも・・・ないかな」
「じゃあ連れてって下さい」
「・・・本当に危ないんだよ。だから黙って出ていきたかった。でも、朝に桜咲さんに何処にも行かないでって頼まれたんだ。約束・・・守れないね。だから小雪からみんなに説明してほしいんだ」
「嫌です」
「頼むよ」
「一緒に行きたい」
・・・。
「どこまで知ってる?」
「月森の家で小雪が生まれた朝に海堂が・・・。」
小雪はそこで話を止めた。
「そこまで、か。ほとんど聞いてたんだ」
「・・・はい」
「そっか」
〜〜〜〜〜
月森家の頭首には魔法の力を高めるために魔法を封印する習慣があるらしい。しかし、それは学校に通う年までで、それまでは体を鍛えるのが習わしになっているらしい。
俺はその事を知らなかったし、昨日の夜に母さんに聞いたばかりだ。
しかし、俺は今も魔法を使えない。
その理由はあの朝、月森の家で小雪が生まれた朝に秘密があったのだ。
そしてその記憶こそが俺の・・・いや、俺等の封印された記憶だったのだ。
そう、すべては悲しい一族の悲しい物語だったのだ。