20時間目 願いと決戦
前回の続きになってます。
木刀なら死ぬことはないだろう。
しかし、どちらも本気。
死ぬ気でやらないと俺も足元掬われちゃうよ。
さあ、来なっ!!
お師匠さんの願い、俺が叶えてやるよ。
〜〜〜〜〜
俺はお師匠さんが亡くなった事を知り、月森家に向かった。
何故なら、お師匠さんは俺に自分が死んだら月森の屋敷に行けと言われていたからだ。
だから、俺はお師匠さんに焼香ができなかった。
しかし、それはお師匠さんの願いなのだ。
月森家に着くと、俺はお師匠さんと修業した道場に向かった。
あの時のままの道場。中は昔と全く変わってなかった。
俺はお師匠さんの引出しに手を延ばした。
すると、中には俺宛の手紙があった。
俺は封を切り、すぐに中を覗いた。
―――――
拓海よ。
お主がこれを読んでいる時、私はこの世にいないだろう。
実はお主に二つ頼みがある。
一つは私の孫と手合わせしてほしい。
私はお前といた時ほど、体が良くない。
だから、お主が代わりにそれを叶えてほしい。
そして、もう一つはお主のお袋さんに託した。
しかし、一つ目が終わった時に聞いてほしい。
拓海よ。私はお主が好きだった。
本当はお主とも手合わせしたかった。
しかし、それも叶わぬようだ。
だから、お前と孫を戦わせたいのだ。
海堂流は孫に託したが、お主は自分で強くなれる。
拓海よ。たくさんの人を守れるようになれよ。
―――――
俺は手紙を読んでぶちギレた。
「じゃあ、なんで死んじまったんだよ!?死ぬなよ。なんで・・・なんで・・・」
俺は自然と目から雫が流れ落ちていた。
「バッキャロ―――!!」
俺はそのまま、床に伏してるしかなかった。
ただただ流れる雫の雨が止み終わるまで・・・。
〜〜〜〜〜
あれから三年。
俺はこの時をどんなに待ちわびた事か。
そして、目の前に構える最強の相手はクラスメイトというから皮肉なものである。
しかし、それも今日で終わる。・・・いや、もう一つあるらしいから始まりなのかな?
どちらにせよ、俺等は戦う。これだけは決まっていることなのだ。
始まる・・・やべぇ、足が震えて来た。
これは恐怖?それとも嬉しさ?
どちらにしてももう始まる。
どっちが勝っても恨みっこなしだ。神無月さん!!
「では!」
「いざ尋常に!」
『勝負っ!!』
先手は神無月さんだ。
木刀から風の魔法を出してる。
右!左!また左!
俺はそのカマイタチにも似た剣先の風をかわしながら、相手に近づいていった。
今俺は刀を二つとも収めている。
それは動きやすいという理由と、もう一つ理由があった。
まだだ・・・もう少し・・・・・・今だ!!
俺は収めていた木刀の一本を力いっぱい、それでいて自然な軌道で静かに抜いた。
所謂、居合いという奴だ。
しかし、神無月さんはすれすれのところで避けた。
俺は空を切った。
「ほほぉ、見事な居合いだな」
「静かなる事林の如しってやつですよ」
「ほぉ、山はカウンター、林は居合い、なら残りの二つはどうなのかな?」
「まあまあ、まだ始まったばかりだよ。朝も早いしね」
「そうだな。では、気長にやらせてもらおうか」
おやおや、いつもの平静さがなくなってる。
やっぱり本気で来るんだね。神無月さん。
俺も本気出させてもらいますっ!!
次は俺が先手を取った。
しかし、神無月さんは俺を少しでも遠ざけようと、風を俺にぶつけて来た。
いやぁ、境内が物凄く広くて良かった。
多分、下手すると神社ぶっ壊れるぞ?
よく住職さんも許可したな。
そんな事を考えながら、俺は今度は構えた状態で懐まで突っ込んだ。
そして、神無月さんの木刀に向かって俺は振り下ろし攻撃した。
また避けられた。
俺の振り下ろした打撃は地面に穴を開けた。
「ほぉ、こんどは火だな。力がよく生かされてる」
「ありがと、ね!!」
俺はその状態から木刀を振り上げた。
まったくもって、神無月さんの身体能力はすごい。
そして何より・・・楽しい。
俺は喧嘩は嫌いだが、これは試合だ。それも真剣だったら殺し合いになるほどの。
この感じは、まるでお師匠さんと手合わせしたときにそっくりだ。
だから、楽しい。いや、これはそれ以上のもの、快楽に似たものだった。
俺は自分では気がつかなかったが、笑顔になっていた。
それは神無月さんも同じだ。
こんな時間がいつまでも続けばいい。俺は久しぶりにそう思えた。
しかし、やはり体力は長くは続かなかった。
それは神無月さんも同じだ。
始めて一時間が経っただろう。
俺も神無月さんも息が上がっていた。
「ハァ・・・ハァ・・・神無月さん?」
「フゥ・・・フゥ・・・何だい?」
「ハァ・・・そろそろ、終わりにしようか?」
「そうだね。フゥ・・・フゥ・・・」
境内は俺等二人のせいでボロボロだった。
俺はこの一撃のために一本の木刀を捨て、もう片方を収めた。
俺が最後に出す技に決めたのは、林だった。
神無月さんは上段の構えを取った。
じりじりと近付く二人。
俺は全神経をこの攻撃に捧げるつもりだった。
神無月さんも同じだ。
静かな村で対峙している二人。
何時間という時間が経った気がする。
しかし、時間はそれほど長くはなかっただろう。
そして、俺等は自分の最後の
「やーーーー!!」
「たーーーー!!」
技を相手にぶつけた。
そして、勝ったのは・・・。