17時間目 月光荘
今日は日曜日です。
・・・早っ!!
絶対何日か飛ばしたよ。
ま、いいけどね。
花月ちゃんはあの次の日に体調が良くなって学校に来ました。
そして、俺等以外のみんなも(太田先生も)すっかり忘れてたみたいでした。
やっぱり可哀相な花月ちゃんでした。
まあ、今回はそれは置いといて。
今日は麻奈美達のすんでいる『月光荘』に行きます。
俺は今、恵魅と一緒に月光荘に向かっていた。
「お兄さま?」
「ん?なんだ?」
「最近私の出番が少ないのは気のせいでしょうか?」
「安心しろ!裕司と和彦と花月ちゃんの方が少ないからな!」
「・・・なんか、あんな脇役共と一緒にされたくないですよ」
「ひどっ!?ってかお前が土日に寝てばっかいたから悪いんだぞ」
「お兄さま!私から寝ることを取ったら何が残るんですかっ!?」
逆ギレっ!?
「ああ、わかったよ。ごめんな」
「わかればいいんですよ」
・・・なんで俺、謝ってるの?
〜〜〜〜〜
ピンポーン
建物の中に単調なその音が鳴り響いていた。
ダッシュで逃げてみようかな?
「はーい」
逃げる暇もなく麻奈美が中から出てきた。
「新聞の勧誘ですか?」
うん。100%あなたのクラスメイトですよ。
「あはは、冗談だよ。さ、入って」
最近、麻奈美がボケ役だと気付きました。
中に入ると玄関があり、そこで靴を脱ぐようになっていた。
俺は麻奈美に連れられて管理人室に通された。
「管理人さん、拓海君達が来ました」
中には小雪と若い中年とも老けた青年ともいいにくい男がいた。
そう、この人こそが俺の叔父さんである。
「おお!拓海も恵魅も久しぶりだな」
「お久しぶりです。準二さん」
俺はホントに久しぶりに叔父さんと会うのだ。
ちなみに、この人は叔父さんと言うと怒るので、準二さんと呼ぶように言われている。
「さ、早く座りなさい」
俺等は言われるままに座った。
「いやぁ、ホントに久しぶりだな。今日子さんとはたまに会うんだがな」
今日子とは家の母親の名前だ。
「ええ、月森家を出てから一度も会いませんでしたからね」
「準二さんはここで管理人をしてたんですね」
「まぁね。ここは月森が管理してて、俺はそれでここを任されたんだよ」
「へぇ」
「いやぁ、それに麻奈美ちゃんや小雪ちゃんは本当にいい子だよ。拓海はこういう子を嫁にしなさい」
「へっ!?」
×3
「な、何言ってるんですか!?」
「そうですよ」
「いきなり変な事言わないで下さい」
俺等は叔父さんの言葉に反論した。
そして、変な空気が俺等を包んだ。
「あはは、冗談だよ。冗談」
叔父さんは陽気に笑っていた。
「まったく、俺の事より自分の心配した方がいいんじゃないですか?」
「お、言ってくれるな。あはは・・・」
この人、まったく変わんないな。
昔からこうやって俺の事からかったけ。
はあ、成長してくれよ。
・・・まったく、変な事言うから頭がボーッとして来たよ。
・・・・・・ああ、二人が今こっち見たよ。
なんか、目合わせずらいな。
・・・はぁ。
「拓海?お前魔法課に入ったんだってな?」
「え?ああ、そうですよ」
「魔法、か」
「シャレかい?」
「いや、違うよ。ただお前がまだ兄さんを怨んでるんじゃないと思っただけだよ」
・・・。
「そうか、やっぱりまだ・・・。」
「別にいいですよ」
思い出したくもない。あの親父のせいで俺は魔法が・・・。
「拓海よ。怨むならそれもいいが、お前の親父さんは」
「わかってます。でもわかってるからこそ・・・。」
さっきとは違う、重いイヤな空気が流れた。俺等は全員が無言になった。
何も知らない小雪。
だいたいの事情を知る恵魅と麻奈美。
そして全てを知ってる叔父さんと俺。
それぞれの理由で俺等の間には沈黙が訪れた。
コンコン
そんな沈黙を破ったのは誰かがドアを叩いた音だった。
「開いてるよ」
入って来たのは・・・なんと
「よぉ、月森」
「おはよう拓海君」
太田先生と留美さん、そして、
「拓海さん、久しぶりだね」
・・・どちらさま?
その人は中年の男だった。
もちろん見覚えはなかった。
「あら?覚えてないって顔ですね。まあ、最後に会ったのは赤ん坊の頃でしたからね。では、改めまして初めましてです。私は橘建造と言います。よろしく」
「ど、どうも」
そりゃ、赤ん坊の頃じゃ覚えてないよ。
「あ、そっか!私も拓海君に会ったのって14年前だから覚えてもらえてなかったのか!うん。納得だね」
気付けよ!アホ教師!!
「あはは、そりゃそうか」
「まったく、留美もアホだね。ま、私は最初から覚えてたけどね」
え?太田先生も俺に会ったことが?
「今日は久しぶりに拓海って呼ばせてもらうよ」
「ええ、お好きに」
なんだ?ここにいる人達って俺と会ったことがある人ばかりじゃん。
しかも、赤ん坊の頃・・・。
「さて、全員集まったみたいだから」
「そろそろ」
何?何するの?
「麻雀やりますか」
出たぁーーー!!
そういえば、先生の好きな事って麻雀だったんだっけ。
「さ、拓海はそっちな」
うわぁ、俺入れられてるよ。
てな訳で、俺は麻雀をさせられるはめになってしまいました。
まったく、めんどくさいな。
「はい、それチーで」
「あ、私ポンです」
「よっしゃ、リーチだ」
ああ、なんか三人とも気合入ってるな。
仕方ない。さっさと終わらせるか。
「それ、ロンです」
「え?」
×3
カタカタ・・・
俺はもちろん容赦なかった。
「や、役満!?」
「うそぉ!?」
「うわぁ、やられちゃった」
「ちなみに、俺今親ですからね」
俺は三人からそれぞれ点棒をもらった。
〜〜〜〜〜
「うわぁ、全然ダメだぁ」
「負けちゃったぁ」
「私も全然ダメ」
結局終わってみれば俺の一人勝ちだった。
「拓海君、勝ったの?」
俺の後ろでずっと見ていた麻奈美が言った。
「ああ、まあね」
「お兄さまってこういうのは強いですからね」
「なんか引っ掛かる言い方だな?」
「いやぁ、やっぱり強かったですね」
「ホントだよ。こんな負けたの功一さん以来だよ」
「・・・俺の親父も?」
「ええ。拓海さんと同じくらい強かったですよ」
「・・・そう、ですか」
〜〜〜〜〜
「それじゃ、お邪魔しました」
「ああ、また来いよ」
「はい!」
俺等は月光荘を出て、家に帰った。
「お兄さま?」
「ん?なんだ?」
「・・・なんでもないです」
「なんだそりゃ!?」
「えへへ」
恵魅はその後機嫌良さそうに帰った。
しかし、俺には恵魅があの後言おうとした言葉がわかっている。
「お父さまってどんな人だったんですか?」
だ。
恵魅・・・ごめんな。