キミとたこやき
キミとつないだ手があったかい。
キミとのこの時間がとても愛しい。
キミとの絆を確認して、幸せな気分。
「優梨、どこで食べる?」
「どこでも良いよ。空いてる所にしよう。」
「おう。」
こんな、何気ない会話が嬉しい。前は考えられなかった事。
「あ、ココ空いてるぞ。」
「んじゃ、ここにしよっか。」
着いたのは1年生の模擬店。タコ焼き屋だった。
「よし、一番多いのにするぞ。」「えっ…それって、12個入りの?大丈夫かなぁ…」
「二人で半分づつだから6個ずつじゃん、余裕だろ♪」
「え〜…大丈夫かなぁ…」
「優梨は大丈夫だって」
「優梨はって…何よ…私そんなにたくさん食べないよ…」
「ま、余ったら俺がくっちゃる。ちょっと待ってて。買って来るから」
そう言って、キミは屋台に走る。
ふと空を見上げた。
綺麗な秋晴れだ。
少しのびをした。
この時間が…いつまでも続いて欲しいと願った。
「優梨っ!買ってきたぞ!」
笑顔でキミがこっちに来る。
「ありがと。ごめんね…買いに行かせちゃって…」
「んな事気にすんなよ。それより、どこで食べようなぁ…」
「別に、どこでも良いよ。あ、そこの階段にしよう。」
私が言ったのはコンクリート製の木陰にある階段だった。でも階段数は3・4段ほどだった。
「よいしょ。」 階段に腰掛ける。
ひんやりと冷たい。
「ほら、優梨。」
そう言ってキミはタコ焼きのパックを差し出す。
「んじゃあ、頂きます。」
「ほいほい。」
爪楊枝をタコ焼きにさした。以外に重い。
なぜか、キミは笑ってる。
タコ焼きを口に入れた。
「…。」
「どうだ?うまい?」
「…」
とても喋られる状況じゃない。
なぜ口の中に、大粒のタコがあるのか理解できなかった。
…キミはやっぱりにやにやしてる。…やられた。
「もう、良平君!このタコ焼き何?!」
「何って?」
キミのクスクス笑いは止まらない。
「タコ焼き!こんなおっきなタコが入ってるなんて聞いてないよ!」
「なんにも入ってないよりは良いだろ。」
私は少しふくれながら、
「…いじわる…」
と言った。
キミは少し笑って、
「ごめんごめん。でも、優梨はやっぱりかわいいな。」
と言った。
みるみるうちに顔が熱くなる。
キミをみれない。
「…でも…食べる…」
そう言って私が新しいタコ焼きに手を伸ばすと、キミは言った。
「…なぁ、『あーん』、して。」
「えっ?何それ…」
「だから、食べさせて。俺に。」
「えぇっ!」
思ってもみなかった。そんな光景は有り得ないと思ってた。
「い…嫌だよ…恥ずかしいよ…」
「いいじゃん。誰もみてないし、はい、あーん…」
そう言ってキミは口を開ける。
「しょ…しょーがないなぁ…これじゃ、ホントに3歳児だよ…」
そう言いながらも、キミの口へタコを運ぶ。
「…ん…うまい!確かにタコでかいな。ははは。」
キミが笑う。こんなにも近くで。
次の瞬間、私はいきなり笑い出した。
「えっ?なんだよ…どーした?」
私は笑いを堪えながら、やっと言った。
「…だって…青ノリ…前歯に…付いて…んだもん…あ〜、苦しい…」
「えっ…マジで?」
キミは急いで爪楊枝で青ノリを取った。
「おい、もう青ノリ取れただろ。」
キミは『イー』と白い歯を見せる。
その仕草がおかしくて私はまた笑う。
「…なんだよ…優梨…笑いスギだよ…」
「ごっ…ごめんごめん」
ようやく笑いが落ち着いた。
「なんかさ、良平君って、いいなぁ…って思ったんだ」
「えっ?」「初めて話した日、傘貸してくれたじゃん、でもあれは…」
「穴…開いてたな…」
「それと同じで、なんていうんだろ…あったかいっていうのかな…和むなぁって。」
「そ…そーゆーもんかな…」
「他の女の子は分からないよ。でも、私は良平君のそんなところ、スキだよ。」
そう言うとキミは、
「そぉか?ま、優梨がスキでいてくれたら別に良いんだけどな。」
と、タコ焼きを頬張りながら言った。
私ももう一つ食べた。
キミと並んで…キミの隣りで食べると、いつものタコ焼きが…ちょっと違った。
最も、タコの大きさはいつもと比べるとかなり大きいけど。
タコ焼きを食べ終えた頃、放送がかかった。
『そろそろ、2日目の日程の終了時間です。生徒の皆さんは、後片付けにとりかかりましょう。職員は…』
「えっ!もうそんな時間か?!」
「…ホントだ…タコ焼き食べてたら終わっちゃったよ…」
「集計係って、この放送があったら教室で売り上げ計算するんだよな?」
「うん。亜花莉と田辺君も一緒に…」
「あーあ…結局俺たちって、少しケンカして、仲直りして、タコ焼き食べて終わりかぁ…」
「いいじゃん。楽しかったよ。」
「そうか?優梨がそう言うなら良いけど…」
「…良平君は?」
「えっ?」
「今日、楽しかった?」
「勿論じゃん。優梨と一緒で楽しくない訳ないじゃんか。」
そう言ってキミは、また笑う。
キミの笑顔が眩しい。
「あのさ、優梨。」
急にキミが真面目な声で言う。
「なぁに?」
「いつかさ、ちゃんと…デートに誘う。」
「うん。楽しみにしてる。」
「あぁ、その時はもう少しビシッとキメる様にする。」
「なんで?そのままで良いよ。」
「えっ?」
「今日みたいに、リラックスした、そのままの良平君と、デートしたい。」
「…そうなのか?」
「うん。肩の力抜いてさ、今日みたいな笑顔、もっと見せて。」
「…優梨ってやっぱり面白いヤツだよ。」
キミは笑う。
「なによ。私はね、2枚目のカッコつけより3枚目の人の方が好きなのよ。」
「…そうなんだ。」
キミはやっぱり笑う。
「なっ…なによ…」
堪え切れなくて、私も笑う。
幸せな瞬間。
こんな瞬間…キミと一緒に…もっと味わいたい。
「…行こう。二人とも、待ってる。」
今度は、私が左手を差し出す。
キミはほほ笑んで、右手をつなぐ。
突き抜ける様な青い空に、今日は、背伸びしたら届く気がした。
「おっ、ラブラブカップルが帰ってきましたよ。」
「お〜。どうだった?」
教室に行くと、すでにみんな帰り、亜花莉と田辺君だけが残っていた。
「ごめんね…遅くなっちゃって…」
「いいのよ。別に。ところで、どーだったのよ。前野と、どこ行ったの?」
「う〜ん…タコ焼き食べたかな。それだけ。」
「はっ?それだけ?他には?」
亜花莉の目が、真ん丸になる。
「…行ってないよ。」
「おやおや。あれからずっとタコ焼き食べてたの?キミたち。」
呆れたような口調の田辺君。
「そーだよっ。悪いかっ。」
「…別に。ま、良いんじゃない?」
「亜花莉たちは?どこか行ったの?」
「当たり前よ。ほとんどのクラス回ったわよ。」
「タコ焼き食べたけど…そんなに時間かけて食べたの?1つ食べるのに何十分かけてるのさ。」
「別に良いだろ。」
「まぁ、部外者は口を挟まないけどね。」
「優梨、それで満足なの?」
「うん。勿論。なんで?」
「…だめだこりゃ。」
亜花莉は呆れた様に溜め息。
「筋金入りのバカップルだな。」
田辺君も溜め息。
「別に良いだろ。また改めて別の日にデートするよ。」
「そーなんだ…」
亜花莉が、ニヤリと笑う。
「…なっ…何?亜花莉…」
「べぇ〜つにぃ〜。あんたたちには敵いません。もう、勝手にやってて。」
「そーそー。一緒に居るとヤケドしちゃう。」
「なっ…」
キミは言葉に詰まる。
「はいはい、キミたちの話聞いてるとね、歯がぐらぐらするの。」
「そうそう。どうせ、その様子だとバザーに、顔すら出さなかったんでしょ。だから最後の仕事ぐらいはきちんとやりなさい。」
「はぁ〜い。」
私たちは、二人でそろって返事をした。
集計が終わったのは、文化祭が終わってから2時間後だった。
辺りは真っ暗。
「…優梨、送ってく。」
「えっ?だって…反対方向じゃ…」
「いーんだよ。危ないし、もう少しで部活再開だから、今から足腰鍛え直さなきゃな。」
「大変ねぇ…遠距離恋愛は。」
「亜花莉…これは遠距離なの…?」
「逆方向も、立派な遠距離恋愛よ。」
「俺たちは、二人共東町だもんな。」
「だから中学も一緒なのよ。東中。」
「そうなんだ…」
「ま、大切なのはさ、どこに住んでるかじゃなくて、どれだけ好きか…って事じゃん。」
どこか熱心な視線の田辺君。
「真章、お前、たまには良い事言うな。」
キミは、感心した様な表情。
「悪かったな。お前程言うの、たまにじゃないぞ。」
「なんだと…」
「はいはい、ケンカはおしまい。ほら、真章、行こう。」
亜花莉の言葉で、私たちはお互い分かれた。
「じゃあね。」
「うん。また明日ね。」
「良平、ちゃんと有沢守ってやれよ。」
「当たり前だろっ」
…二人で並んで歩く。
空には、三日月。
「…三日月だねぇ。」
「ほんとだ。満月じゃないのか…」
「良平君、満月が好き?」
「う〜ん…三日月も嫌いじゃないけど、どうせなら月そのものを全部見たいじゃん。」
「ふふふ。良平君はらしいね。」
「そう?」
二人で笑いあう。
「そう言いえば、前にも送ってもらったよね。」
「そうだな。あの時はまだ、付き合ってなかったけど。」
「不思議だね。ホント、ついこの前だよ。」
「ホントだな。…あ、あれじゃないか?」
家の前に着いた。
「送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね。」
「おう。今日は楽しかった。ありがとな。」
「私もだよ。…デート、改めて楽しみにしてる。」
「あぁ。俺も楽しみ。」
「そうだね。…それじゃあ…また明日…」
「おっ!んじゃな!!」
キミはランニングをするかの様に、軽やかに走って行った。
少し夜風が冷たい。
なんだか、新婚カップルの気持ちが分かった様な気がした一日だった。
笑うと白い歯が見えるキミ。
たくさんの宝物をくれるキミ。
…前野良平。幸せな瞬間をくれるキミの名前。
今回は、いつも以上に甘々にしてみました。目標は新婚カップル(笑)
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次回は新展開を考えています。もし機会があれば見てやって下さい★




