キミとつないだ、てのひら
ずっと、ずっと私をスキだったキミ。
ずっとキミがスキだった私。
やっと両思いになれた。
文化祭2日目。今日はキミとずっと一緒。
…これってデートかなぁ…
こんな自問自答を、昨日から何回繰り返したかな。
「優梨〜!おっはよう!!」
いつもの明るい声で声で亜花莉が声をかけてきた。
「おはよ。今日、楽しみだね!」
「うん。っていうか、あんたたち、今日のが事実上初デートな訳?」
初デート…その言葉を聞いただけで顔が熱くなる。
「おっはよう!優梨!!」
キミが来た。
いつもと同じで、明るい声。
ただ、いつもと違うのは私たちの関係。昨日の朝は友達同士で、今日からは恋人同士。
「真章から聞いた。今日、4人で回ろうって。」
「うん。楽しみだね。」
「…。」
「?どうしたの?」
「どうせなら二人っきりがよかった…」
「…でも、私たちの事はまだみんな知らないし…」
『キミは女子から人気があるから。』
言葉を途中で飲み込んだ。
そんな事、キミに言えるはずがない。
「そーゆーのって、関係あんのかなぁ…俺は別に気にしないんだけど…」
「…そーゆーもん。」
言葉に詰まる私に、亜花莉の助け船。
「いい、前野。あんた、文化祭最終日=ラブラブなデートなんて、あんたちぐらいなのよ。みんなバカップルだけだと思わないで。」
「バカップルとはなんだよ。それはお前らだろ。」
「なによ。恋愛初心者のくせに今年で3年目の先輩に向かってその態度。」
「れ…恋愛初心者…」
「まぁ、あれだ。俺たちはバカップルなんてとうに過ぎてるんだよ。」
田辺君が口を挟む。
「だから、俺たちに向かって何でも知ってるような口きくなよ。」
「まっ…真章ぃ…」
「有沢、コイツまだまだ考えの浅い3歳児だけど、よろしくな。俺からも頼むわ。」
「なんだよ。お前らまで。まぁ、いいよ。その代わり二人っきりにさせろよ。」
「はいは〜い。」
と、亜花莉。
「おアツいねぇ。秋なのに、夏に戻ったか。」
…と、田辺君。
私は笑った。同時に言葉に詰まる私を見てフォローしてくれた二人に、感謝した。
二人っきり…いつその場面が来るか分からないけど…そんな時、私はどんな顔をしたらいいの?
キミの事、スキだって言い切る自信、あるよ。
キミと話したいこと、伝えたいこと、知りたいこと…でも…
もし会話が途切れたら?
もしキミが嫌がる話をしちゃったら?
…そういう時は、どうすればいいのかな。
こうして、キミの事で一喜一憂する。
これって、きっとすごく幸せな事だよね…
「はい、じゃあ集計係は今のところこれでOK。後は全部終わってからまたお願いします。」
クラス委員長・松下さん。バザーを総合的に取り仕切っている人。
私たちは集計係で、今のところ仕事は無い。なのでこれから自由時間。
「ちょっと、優梨。」
亜花莉が私を呼び出す。
「なぁに?」
「あのさ、ホントに二人が良かったら、私たち退散するけど…いいの?」
「いいの。亜花莉たちが居てくれると安心だし…」
「そう?なら良いんだけど…」
きっと、亜花莉は私の浮かない顔を見て、二人にしたほうが良いと思ったんだろう。
でも、私が考えてるのは正反対。
これって…キミに凄く失礼だよね…
小さな溜め息を、みんなに聞こえないようにそっとした。
文化祭は最終日ということもあってか、昨日とはまた違う盛り上がりだった。
亜花莉と田辺君が前、私とキミがその後ろ…
私は口数が少ない…
キミは田辺君や亜花莉と話している。
私のこと、つまらないヤツって思ったのかな…
そんな時、急にキミが私の手を掴んだ。
…といっても、急だったから手首…に近いけど…
「?!…良平くん…?」
「わりぃ、俺、やっぱり優梨と一緒にいる。」
「良平…」
田辺君も驚いている。亜花莉も。
でも、一番ビックリしているのは私。
私の手首を掴んで、キミは人込みを避けて校舎裏に…あの紅葉の木の場所に…
「…良平君…?」
「…」
キミは何も言わない。
…キミ、怒ってる。
言わなくても、何となく分かる。
背中を私に向けて…キミは口を開いた。
「なぁ、俺といても…楽しくないか…?」
「…えっ?」
「だって、優梨…俺といつもみたいに話してくれないじゃん。」
「それは…」
どうしても、キミと話をする前に…悪い事を考えてしまう。
「あのさ、嫌ならはっきり言ってくれよ。俺が嫌だったら…無理に付き合ってくれなくていいよ。」
「そんな…無理してないよ。」
「じゃあ、なんでダブルデートにしたんだよ。俺と付き合ってるのは恥ずかしい事なのか?」
「そんな事ないよ!…ただ…」
「ただ?」
…もう、言った方がいいのかなぁ…
「…良平君…女子から人気あり過ぎなの。」
「えっ?!」
キミの驚いた顔。相当予想外だったみたい。
「自覚、無いかもしれないけど…そうなの。だから…私が彼女って知られたら…」
「…理由、それ?」
この際…はっきり言っとこう。
「口数が少ないのは…話をしようと思っても、その場の雰囲気とか壊したら嫌だから…そう考えたら話できないの。」
…それを言い終わったら…キミは急に笑い出した。
私は脱力。紅葉の木の側に座り込んだ。
「悪い悪い。…でも…そんなことで…」
「そんなことじゃないよ。真剣に悩んでたんだから。」
「…あのさ、」
急に真面目な顔になったキミ。
「女子から人気があっても、そんなこと関係ないんだよ。実際に付き合ってるのは俺たちだろ。」
真剣なキミの瞳。
「そうだけど…」
それでも、まだ煮え切らない態度の私。
「それとも優梨は、俺が優梨の事をロクに守れない様なヤツだと思ってるのか?」
「そんなことないよ!」
そう言うと、キミは私の頭を包み込む様に抱き締めた。
「俺さ、不器用なんだよ。」
キミが、耳元でそっと囁く。
「もし器用なヤツなら、さっさとお前がスキだって言えるよ。でも俺はそれが出来なかったんだよ。」
キミの声を、全身で感じる。
「でも、俺、お前を守る自信はある。」
そう言うとキミはまた私を見つめる。
「だから、優梨には何でも言って欲しい。良い事、嫌な事、悲しい事、悩んでる事…」
キミの優しさが…キミの言葉に乗せて…私に流れていく。
私は何を悩んでいたんだろう…
キミはこんなにも私を思っていてくれるのに…
「私も…自信あるよ。」
キミを見つめる私。
優しいキミのまなざし。
「自信?」
「そう…良平君が世界で一番大好きでいられる自信。」
いたずらっぽく笑う私。
キミもほほ笑む。
「これからもよろしくな。俺、真章の言うとおり…3歳児かもしれないけど…」
「何歳でも構わないよ。私が良平君より精神年齢、高ければ良いんだもん。」
「コイツ…言ったな…」
キミが頭を優しく私の頭にくっつける。
キミの顔が近い。
ついこの前までは考えられなかった事。
これからも…擦れ違う事、勘違いする事、仲違いする事、あると思う。
でも、それでも、キミと一緒に居られるなら…乗り切れそうだよ。
こんな私を…これからもどうぞよろしく。
「…そろそろ行くか…何気に昼時だし…」
「うん。ちょっとお腹減ったね。」
「ちょっと?俺はかなり…」
「そうなの?なら、模擬店にでも食べに行こうか?」
「おっし、決まり!行こうぜ。」
左手を差し出す私。
ほほ笑みながら右手をだすキミ。
キミのぬくもりが…手のひらから伝わる。
あったかいよ。
このぬくもりを、ずっとずっと…感じていたい…
模擬店の前に、亜花莉と田辺君がいた。二人とも昼食をとっていた。
「有沢!良平!!」
「あんたら、どこ行ってたの?…急にいなくなって…」
「プチ喧嘩と仲直り。」
「プチ喧嘩?なんだ、それ…」
「読んで字の如く。ま、仲直りの方が多いけどな。」
「ま、悪い方にいってないなら別に良いわよ。」
「そーそー。俺たち、それなりに回れたしな。」
「なんだそれ…俺たちの事…心配じゃなかったのかよ…」
「別に。だってもう高校生じゃない。」
「それに、3歳児には説得とか正論は通じないしな。」
「おっ…お前ら…よくもヌケヌケと…」
「有沢ぁ〜…これからもこのお子様が今日以上に迷惑かけると思うけど、見捨てないでやってな。」
「ホントよ、優梨。前野は大変よ。なにせ、勉強さっぱりなスポーツ&バスケバカなんだから。」
「悪かったな。」
私はクスクス笑い、
「まぁね。それも覚悟の内よ。」
とイタズラっぽく笑った。
「おいおい、優梨もかよ…」
ちょっと脱力気味なキミ。
でも、目が笑ってる。
「優梨、別の店いこ。コイツらと一緒じゃロクに食えやしない。」
「好きな所に行きなさいよ。誰も引き止めないから。」
「へーへー。優梨、アイツらほっといて行くぞ」
「有沢〜頑張れよ〜」
「優梨〜達者でね〜」
「ほっとけ。」
「じゃあね。また終りごろにね。」
キミと手をつなぐ。
手のひらの感触が、まだくすぐったいけと、心地良い。
前野良平…あったかくて、優しくて、心地良い…ずっと一緒に居たいと思うキミの名前。
いかがでしたか?今回は文化祭の前編でした。次回は後編です。もし、感想等あれば教えて下さい☆それではまた!




