キミがすきってきがついた
次の日の朝、私はキミに傘を返した。
「昨日はありがとう。助かった。」
「わざわざありがと。傘、大丈夫だった?」
「それがねぇ…」
くすくす笑う私を見てキョトンとするキミ。
「何?なんかおかしかった?」
「あの傘、穴開いてた。」
くすくす笑いを堪えてやっと言えた言葉。
「えっ…まじで?気付かなかった…悪かったなぁ…」
「ううん。別に大丈夫だったんだけど、なんか面白かったの。」
「何が?穴開いてた事?」
「まあね。でも、それだけじゃなくて前野君の事、昨日初めて知れて…良かったなって。」
「俺も。有沢の事ちゃんと知ったのって昨日。ま、お互い良かったじゃん。俺の事さ、良平でいいよ。」
「私も優梨で。レギュラー、いつ発表?」
「今日の部活。受かってるかな…昨日もあんまり寝れなくてさ…」
「頑張ったんだから大丈夫!私も応援してる。」
「そうか?んじゃあ結果が分かったら、優梨に一番最初に話す。」
「うん。楽しみにしてる!」
「おう!それじゃ、俺、ちょっと職員室行かなきゃ…じゃあな!」
「うん。またね。」
“またね”…今まで男の子に言った事なんてなかった。初めての相手がキミだった。
「何?優梨、前野と仲良いじゃん。どしたの?」
「亜花莉…実は良平君に昨日傘借りてさ、さっき返してたの。」
「ふぅ〜ん…ホントにそれだけ?」
「それだけだよ。別にそれ以外何も無かったし。」
「ま、私には彼氏いるからさ、どーでも良いけど、前野の事狙ってる女子、意外と多いから、頑張ってね。」
「だからぁ〜、違うって言ってんじゃん!」
口ではそう言いながらも、心の中ではちょっと落ち込んだ。
昨日、家に帰ってからも、ずっと眺めてたキミの傘。
よく分からないけど、キミの言葉が木霊する。
『笑うとカワイイ』
…キミの目に映った私はカワイイ女の子だった?
…キミの前で私は、笑顔だった?
そんな自問自答ばかり繰り返してた。
心の中に、キミが居る。
キミが眠れない夜…私も眠れなかったよ。理由は違ったけど。
自分の好きな歌手のラブソングを聞いた。
今までは他人事みたいだった歌詞が、自分の事を歌っているのか?…と思う程共感した。
すきだよ。キミが。
初めてだよ。
こんな気持ち。心が君の言葉と笑顔で染まっていくのが分かる。
恋って、思い続けて実るものだって思ってた。
でも、私は違った。 これを世間一般では、‘一目惚れ’っていうんだよ…
キミは私にどういうつもりで“カワイイ”って言ったか分からないけど、君の笑顔と言葉が、私の心でとろけあう。
前野良平―私が初めてスキだって思った人の名前。初恋の言葉。一目惚れの相手。




