キミの事、ねぇ、好きだよ。
あれから、10年が経った。
私たちはそれぞれの目標に向かって進みだした。
途中いろいろあっても、あなたが居たから乗り越えられた。
そう、実感できた。
あなたたちが居たから、毎日が鮮やかだった。
ありがとう…。
コツコツコツ…
少しヒールの高い靴をはき、右手にバックを持ち、左手に娘の手を握りながら私たちはある場所へ向かっていた。
「ママ、今日も行くの?」
「そうよ。…真莉はキライ?」
「ううん。好き!」
満面の笑顔の真莉。
私も笑顔になる。
私たちが向かったのは、ビルの前。
入り口の自動ドアが開く。
そこを左に曲がってドアを開けるとスグに受付だ。
「こんにちは」
笑顔の受付嬢。
「予約していた田辺ですが」
「はい、それでは託児ルームにどうぞ」
「はい、どうも」
私は笑顔で言った。
「おはようございます、おはようございます」託児ルームの方から声がする。そこには3人の保育士がいた。
その内の一人の前に立ち、私は話しかけた。
「おはよう、優梨先生」
すると、呼ばれた保育士は笑顔で言った。
「おはようございます、田辺亜花莉さん」
すると二人ともお互いを見て笑いあった。
あれから私は専門学校へ行き、ファッションの勉強をして、小さな店を立ち上げた。
そして、真章と24の時に結婚し、娘を産んだ。ちなみに真章は予告どおり警察官になり、今は警視庁につとめている。
なかなか家に居ないけど、時間がある時は家族を第一に考えてくれる。
優梨は高校を出てから大学へ行き、幼稚園の先生の資格を取った。そこで2年ぐらいつとめた。
前野はなんと、大学の医学部に現役合格!…信じられないけれどその後で見事に医師免許を取り、実家の前野医院を継いだ。
前野は医院を継いだとき、一つの夢があった。それは…託児所の様な機能を持った施設を病院を持ち、優梨と二人で運営して行くことだった。
そのため、優梨は幼稚園を辞め、前野の手伝いをしながら夢を実現させた。
3階建てのビルを作り、そこの1階は託児所。2階は病院。3階は前野一家が住む場所をそれぞれ作った。
託児所は基本的に予約制。1日単位で子供をあずかる。それ以外にも、急な用で子供をあずかって欲しい時は時間内ならいつでもあずかってくれる。また、前野医院へ親が行くときに子供をあずかったり、子供を遊ばせるためにプレイルームという遊び道具がたくさんある場所を開放したりもしている。私は娘の真莉をよく連れていく。真莉は楽しそうだ。なので幼稚園が休みの日などはよく連れていく。
「おはよう、真莉ちゃん。今日もまた遊ぼうね」
しゃがみ、真莉と同じ目線になるようにして笑顔で話しかける優梨。
「うん。遊ぼうね、優梨先生!」
そう言ってにこにこする真莉。
私もつられて笑顔だ。それは娘に向けたものだけでなく、夢を叶えて輝いている友達にも向けていた。
今日は早く仕事が終わる日だったので、午後から私は亜花莉の家に遊びに行くことになった。
二人でお茶を飲みながら話をした。真莉ちゃんは一人で遊んでいた。
「それで?来月だったっけ?」
亜花莉が紅茶をすすりながら言う。
「…うん」
私は少し照れながら言う。
「長かったよねぇ…あんたら。ここまでくるの…」
「そうかな…振り返ってみたらあっというまだったけど…」
そう言って、私は左手の薬指を見た。
キラキラ光る銀色のリング。キミからもらった…婚約指輪。
私たちは、来月結婚する。でも…
「実感ないなぁ…」
ボソッと独り言。
「何が?結婚すること?」
「うん…なんか戸籍が変わるだけって感覚なんだよね…」
「ついでに名字も変わるけどね」
亜花莉が言う。…まぁ、そうだけどさ…。
「そうだけど…亜花莉は結婚して何か変わった?」
「…そうねぇ…真章、前より優しくなったかな…」
「そうなんだ…」
「でも逆に些細なことでケンカばっかりしてた。価値観が違うっていうのかな…とにかく細かい事が気になるの」
「…例えば?」
「エビフライにかけるのは醤油かソースか!」
「…ケンカしてたの?」
「かなり。1週間ぐらい」「そうなんだ…」
「あ、勿論エビフライだけで1週間じゃないわよ。ケンカしはじめたら色々言い合っちゃって…」
「それで…?どうやって仲直りしたの?」
「私ね、」
亜花莉は思いだし笑いをするように少し笑った。
「1週間たった辺りから急にむなしくなったの。バカみたい…って」
「…急に?」
「そうなの。それで、私は仲直りしようと思ってその日の夕食にエビフライ作ったのよ」
「へぇー…」
「真章はいつも帰りが遅いからいつもは先に寝てるんだけど、その日だけは起きて待ってたんだ」
「うんうん」
私は頷く。
「夜の11時ぐらいだったかな…真章が帰ってきたの。で、私が起きててビックリした。それでなんて言ったと思う?」
「謝った?」
「うーん…惜しいな」
クスクス笑う亜花莉。
「真章は、『意地張ってごめん、仲直りしよう。エビフライ買ってきた』って言ったの」
「えぇっ!ホントに?」
「それがホントなのよ。それでその後に二人でエビフライ食べたの。ちなみにタルタルソースつけてね」
亜花莉は笑った。私も笑った。意外だな…でも良いなぁ…そういうの。
「夫婦ってそんなもんよ。ケンカしてもちゃんと仲直りできる」
「…そうだね。恋人なら出来ないかもね」
「そうよ。一度結婚すると、しょっちゅう別れられないじゃない?だから頭冷やす時間がちゃんと取れるの。仲直りもしやすいし、ケンカした後は相手の事が前よりも分かりあえたって思えるんだ」
目をキラキラさせながら言う亜花莉。
私も、こんな夫婦になりたいな。
…なれるよね?
亜花莉の家から帰ったのは夕方。帰りに夕飯の買い物もした。
ガチャッ
ドアを開ける。
「あ、おかえり〜」
奥の方から声がした。キミの方が早かったんだ…。
「ただいま。今からご飯作るね」
「おぅ!腹減ったー!夕飯は何?」
「エビフライだよ」
そう言って私はクスッと笑う。
キョトンとするキミ。
「…なんか面白い事があったのか?」
「うん、あのね…」
そうして私は夕飯を作りながら亜花莉たちのケンカの話をした。
キミも私を手伝いながら笑っていた。
そうしてその日の夕飯はエビフライ。勿論タルタルソースで食べた。
夕飯の片付けを済ませて私はソファーへ座り込んだ。
キミはお風呂。…つまり、今は私一人。
私はふとベランダへ出た。
夜風が心地良い。
ぐーと腕を上にのばした。今日も無事に終了。
「おーい、風呂上がったよ」
その時、キミが後ろから声をかけた。
「はーい」
返事をするものの、なんだかこの場から動きたく無かった。
「どーしたの?」
キミがベランダにやってきた。
「なんかね、ココが気持いいんだ」
「ほぉ…」
キミは私の横にやってきた。
…しばらく私たちは何も話さなかった。
車の走る音がする。
遠くで子供泣く声がする。
星がきれい。
「ねぇ…」
キミに話しかける。
「ん?」
「ここまでくるの、長かった?」
「どーしたの?急に」
「いや…今日亜花莉に聞かれてね…私はあっという間って言ったけど」
「俺もだなー。受験勉強してる時とビルに開業する時は長かったけどな」
苦笑いするキミ。
「でもさー、私たちが出会ったのって10年前だよ?覚えてる?高校時代」
「覚えてるよ。全部」
急に真顔になるキミ。
「私は…どうかなぁー」
「えっ…忘れたの?ひでぇ…」
「ウソウソ!覚えてるよ。」
「なら言ってみろよ」
「えっと、穴のあいた傘貸してくれたでしょー、レギュラー落ちて校舎裏で泣いてたし、あと遊園地に行く時バスの時間を間違えて結局行かなかった。あとは…」
「あー、もー言うな!そんな事ばっかりかよ!」
キミは顔を赤らめて言う。
「嘘だよ。他のも覚えてる。」
クスッと笑い、私はキミの目を見た。
「私、良平君に会えて良かったよ」
「俺も」
そう言ってキミは私の肩に手をまわす。
「優梨に会えて良かった。優梨が居てくれて良かった。優梨が居るから俺、ここまでこれたんだ」
キミは私の耳元で優しく、囁くようにゆっくり言った。
「好きだよ、優梨」
好き…その言葉はこの世の中で一番あたたかく、やわらかいものに思えた。
「私も、好きだよ」
目を閉じ、キミに少し寄りかかりながら言った。
大スキ。
キミが居てくれて良かった。
これからも、ずっと私の隣で居てね。
「はっ…はっくしゅん!」
唐突なくしゃみ。
キミだ。
「もぅ…結構良い感じだったんだけどな…」
私はそう言って少しふくれっつら。
「ゴメンゴメン…なんか湯冷めしたみたい…くしゅん!」
「あー、もう分かったから!早く中に入って!医者が風邪なんかひいたらシャレにならないよ!」
「はーい。…あ、優梨も早く風呂に入れよな」
そう言ってキミはまたくしゃみを一つして中に入っていった。
私はふぅ…と軽くため息をついた。
でも、急に嬉しくなった。
好きだよ。キミの事。
ずっと変わらないでいてね。
キミの事、ねぇ、好きだよ。
いかがでしたか?最終回ということで、その後のみんなを書きました。
この作品は、初めてこのサイトで書いたもので、とても思い出深いです。笑顔の場面を沢山盛り込む事と自分もこんな恋愛したいな…と思える小説執筆を自己目標に書いてきました。ちなみに、この小説は完結が17話と中途半端なので、いずれ続編を書くかもしれません(笑)
ここまでお付き合い下さった読者さまに、心から感謝申し上げます。次はまた別の作品(もしくは続編?)でお会いしましょう!本当にありがとうございました。




