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キミの家で


舞い降りた雪。

ふわふわの雪。

今年初めての雪。

それはそのまま積もって、町中を真っ白にした。

初雪が降った次の日、テストが終わった。

結果はまだだけど、キミは結構良かったみたい。

ガラッと私は窓を開ける。はく息は昨日よりも白い。

「うー…寒い…」

私は小さく身震いをしてすぐに窓を閉めた。

今日は休みだ。

何しよう…。もうテストは終わった。勉強する気にはなれない。

その時、携帯が鳴った。キミからの電話だ!

私は急いで電話に出た。

「はいっ!おはよう、良平君?どうしたの?」

私は緊張と喜びが混ざった声で言った。

『おはよう。あのさ、今日、ヒマ?』

「えっ…予定ないけど…どうして?」

『あのさ、今日は先生の予定が入って練習無くなったんだ。それで…』

もったいぶるキミ。

「…それで…?」

『…今日…ウチ来ない…?』

「良いよ。…良平君の家行くのって初めてだし。」

『マジで?じゃあ迎えに行く!何時が良い?』

「うーん…じゃあ9時半に…来てくれる?」

『9時半だな、了解!じゃあ、待ってて』

キミは嬉しそうな声。

「うん、じゃあ、後でね!」

『おう、またな!』

そう言って電話を切った。

…キミの家に行く…。というより、男の子の家に行く…。私には初めての事だ。

…でも…何しに行くんだろう…?

ちょうどその時、携帯がまた鳴った。メール音だ。見てみると…キミからだった。

『さっきの追伸。勉強教えて欲しいから、もし良かったら勉強道具持ってきなよ。』

…そうか…勉強…。

そうだよね、テストが終わっても…勉強しなきゃいけなかったね…。

確かキミは、先生から

「死ぬほどやらないと無理だ」

って言われてたよね…。

私は急いでカバンに勉強道具を詰め込んだ。

そしてご飯を食べ、着替をして、キミを待った。

…8時27分…。

玄関のチャイムが鳴った。私は出たがるお母さんを押さえ、ドアを開けた。

…キミが立っていた。

「おはよう」

息を弾ませ、頬も耳も赤くしながらキミは言った。

「おはよう」

そんなキミがとても嬉しかった私は笑顔で言った。

「ごめんな…急に…」

「ううん。どうせヒマだったし…こっちこそ迎えに来てくれてありがとう。…上がってく?寒かったでしょ?」

「ううん。オレは大丈夫。…優梨が良ければ…」

「私は良いよ。行こっか」

私はお母さんの視線をムシして外へ出た。

空気が冷たい。

はく息は真っ白。

雪に足を取られる…。

「大丈夫か?コケんなよ」

キミは私の様子を見ながら歩くスピードに合わせて歩く。

「うん…大丈夫…」

私はそう言いながらも必死で歩く。絶対にコケるもんか…!

ところが、たまたま足場の悪い所に足を置いたので体制が崩れた。

「あっ…」

絶対コケた…。

そう思ったら…体が妙に浮いた。

腕を掴む手…。

キミだ。

キミはニヤニヤしながら

「ほぅら、やっぱりコケた」

と言って私を持ち上げた。

「…ありがとう…」

すごいな…片腕で私を楽々持ち上げたキミ…私は寒さと恥ずかしさで顔を赤らめながら言った。

私たちは歩き出した。

すると、キミが急に私の手を掴んで自分のジャンパーのポケットに入れた。そして自分の手を私の手の上に重ねた。

「…道連れ」

「えっ?」

「次に優梨がコケたら一緒にコケてやるよ」

「えっ…でも…」

「でも…?」

「…助けてくれた方が嬉しいかな…」

…少しの沈黙。

「あ、そうか…そうだよな!ごめん…」

キミはポケットから手を取ろうとする。

「待って!…やっぱり…このままでいいよ」

「…そう?」

そう言ってキミは再び手を戻す。

キミの手と私の手が重なりあう。

キミの手も、ポケットも…とってもあったかいよ。

そうやって私ちは、寄り添いながらキミの家に行った。


キミの家に着いた。

大きなウチ…。

「俺んち診療所だって…知ってるだろ?それは裏側にあるんだ」

そう言って家の向こう側を親指で指すキミ。

「へぇ…」

「最近急に冷え込んできたから患者さん、増えてるんだ。不謹慎だけどな…」

「…じゃあ…誰もいないの?」

「うん。みんな診療所…あ、でも、だからって変なことはしないから…」

「…何も言ってないよ…」

私はキミの方を見る。

「あ…そうだな…」

キミは頭を掻きながら家の鍵を開けた。


キミの手と私の手が重なりあう。

キミの手も、ポケットも…とってもあったかいよ。

そうやって私たちは、寄り添いながらキミの家に行った。

「お邪魔しまーす…」

中に入った私は驚いた。

まるで自分のいる世界とは全く違う世界に来てしまったかのようだ。

「広いねぇ…」

「おい、そんなところでつっ立ってないで、行くぞ!」

キミは照れながら私を手招きする。

「は…はぁい…」

私は我に返り、キミの後をついて行った。

螺旋状の階段をのぼり2階へ上がった。

その間も度々高そうな絵や置物を見掛けた。

でも、すべて品のいい物ばかりで高そうに見えても、決して派手ではなかった。

そうしている間に、キミはある部屋の前で止まった。私も止まった。

「ココ」

キミは部屋を指差し、ドアを開けた。

キミの部屋は広くて掃除もきちんとされていた。

私の部屋より2畳分位広いんじゃないかな…。

「部屋、大きいね」

「…まぁな…あ、俺、お茶持ってくるよ!適当にくつろいでて」

そう言ってキミは下へ降りていった。

くつろいでてって言われても…なぜか落ち着かない…。

私はそわそわしながらベットの端に腰かけた。

その時、ドアの向こうで言い合う声が聞こえた。

不思議に思って様子を見ていると、ドアが勢いよく開いて女の人が入ってきた。

「あー、やっぱり!かーわいいっ」そう言って女の人はこっちに入ってきた。

私がキョトンとしていると後ろからキミが大声で言った。

「おい、アネキ!入ってくんなよ!」

…えっ…?!

「お…お姉さんなんですかっ?!」

私は突然の出来事に驚く。

「そっ。優梨ちゃんよね?いつも良平がお世話になってます。姉の良美(よしみ)です」

ペコっと頭を下げ、無邪気に笑った良美さん。笑った顔は、確かにキミとそっくりだ。

「優梨、ごめんな…急にアネキが出てきて…驚いただろ…」

「なによ、その言い方。休憩時間だから家に帰ってきてみたら誰か来てるみたいだから挨拶しただけよ」

最後にお姉さんは

「ねー」

とこっちを向いて言った。

私は少し笑ってから

「はじめまして、有沢優梨です。以前、遊園地のチケットありがとうございました。…結局使わなくてごめんなさい…」

「あ、良いの良いの。後で聞いたら良平が時刻表間違えて持っていったからなんでしょ?気にしないで。こっちこそごめんねー」

そう言ってお姉さんはキミの頭をポンポンと軽く叩いた。

キミは恥ずかしそうに手をはらって、

「もう良いだろ。俺たち勉強するんだからよ」

その言葉にお姉さんは反応した。

「…あんたさ…どうして急に勉強し始めたの?」

「どーでも良いだろ」

お姉さんは何か言いたそうだったが、私がいるせいかそれ以上は何も言わず、ちょっと笑って、

「そうね。ま、学生の仕事は勉強だからね。私はもう行くわ。じゃあね、優梨ちゃん」

「はい、さようなら…」

そうしてお姉さんは去っていった。

…ドアの向こうの廊下から、お姉さんの足音がかすかに聞こえた。

「…言ってないの?お医者さんになりたいって…」

「…言ってない。バカにされそうだし…」

「…違うと思うけどな…」「良いんだ。今は勉強して、皆を見返してやるんだから。…あ、優梨は迷惑かな…」

「迷惑だなんて…思ってないよ。ただ、家族に協力してもらうのも一つの方法じゃないかなって思っただけ」

「そうだな…ま、それは来年にとっておくよ」

キミは笑った。

私も笑った。

「じゃ、勉強しようか」

私はカバンから教科書を取り出しながら言った。

キミもベットの側のテーブルに勉強机から教科書を取り出して座った。


どのくらい時間が経ったただろう。

部屋にはシャーペンを動かす音。

時々キミが

「これってどうやるの?」

と言って私が答えるが、それもすぐに止み、また元の静けさが戻る。

ふとキミを見た。

真剣な顔。

私の視線に気付いたのか、キミもこっちを見る。

「なんだよ」

笑って言うキミ。

「別に」

笑ってまたノートに視線を戻す私。

こんなやりとりが嬉しくなる。

これから先、どんなことがあっても、キミとこうしていたい。

こうしていてね。

前野良平。キミの名前。ずっとずっと一緒にいるよ。キミも私の側にいてほしい。そんなキミの名前。


いかがでしたか?今回はある方からのアイディアで優梨が良平の家に行きました。ずっと出したかった良平の姉・良美も出せて個人的には満足しています。

さて、突然ですが次回で最終回になります。一番はじめに書いた小説だけに、思い入れが強い作品なので今まで以上に力を入れて執筆します。

それでは、最終話でお会いしましょう!


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