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キミとにくまん



キミが私に話した夢は、お医者さんになること。

大丈夫。キミならきっとなれるから。みんなはムリって言ったって、私だけは応援してるからね。

「優梨ぃ〜!!分かんないよぉ〜。」

泣きべそをかきながら、向かい側に座るキミは机に突っ伏した。

「はいはい、どこが分からないの?」

クスクス笑いながら私はキミに問いかける。

今、私たちは勉強していた。明日は期末テストの最終日だ。

医者になると決めたキミは前半にある教科を(数学以外は)捨てて、後半の教科に的を絞り昨日から図書室で私と勉強していた。

「あ、だからここは問題文のここを読んでみるんだよ。」

「あ…あぁ!そっかぁ!ありがと、優梨!」

キミの声が少し大きかったのか、勉強中の生徒が一斉にこっちを向いた気がしたので、私は慌てて口の前に指を立て『しぃ〜!』と言った。

さすがにみんな、明日が最終日ということもあって、空気がピリピリしている。

医者になるためにはどのくらいの教科を勉強しないといけないか、私とキミは昨日の放課後に本屋へ調べに行った。

…思っていた以上に大変そうだった。

キミは数学以外は全部といっていいほど苦手なんだよね…。

キミの昨日の青ざめた顔が浮かんでくる…。でも、入試までは1年ぐらいあるし…。

だから、キミと一緒に私も勉強するよ。

分からないところは答えられる範囲で教えるよ。私、応援してるからね。

チラッと向かい側のキミを見ると、必死に考えていた。…解答欄は白かったけど…。

そうしていると、図書の先生がみんなに向かって言った。

「そろそろ下校時間なので図書室も閉めますよ。」

チラッと時計を見た…もうこんな時間…外は藍色になっている。

「良平君、そろそろ帰ろう。図書室閉まるみたいだし。」

「…うん。そぉだな。あー、疲れたぁ!」

クスクス笑う私。私たちは勉強道具をカバンに詰めて図書室を出た。

外との温度差に身震いしながらも、下足場を出て、私たちは帰りはじめた。

今日は一段と寒い。マフラーと手袋をしていても、すきま風が冷たかった。

「寒いなぁ…なぁ、コンビニ行かない?」

「賛成!暖まりに行こう!」

私たちは帰り道にあるコンビニに立ち寄った。

曇っているガラスの自動ドアが温度差を表している。

「あ…。」

キミは何か思い出したようにつぶやいた。

「どうしたの?」

「いや、ちょっと。オレ、買うもんあったんだ。優梨、ちょっと待ってて。」

そう言ってキミは、なぜかレジに向かって歩き出した。…ま、いっか。

私は立ち読みしていた。すると、意外と早くキミが来た。

「アレ?もういいの?」

「うん。あ、優梨は何か買うもんとか無いの?」

「うん…。無いよ。…出る?」

「うん。出よう。」

私たちはコンビニを出た。もう少し居たかったけど早く家にも帰りたかった。

店から出たとたん…あることに気づいた。

「あっ…雪!」

今年の初雪だった。ふわふわした雪がいくつも降りてくる。

「ホントだなぁ…だからこんなに寒かったんだなぁ…。」

「良平君、今日は送ってくれなくても大丈夫だよ。家はすぐそこだし…雪まで降っちゃってるよ。」

「平気だって。」

キミは何でもないと言うかのように平然としている。

「ダメ。良平君は良くても私が心配なの。」

キミの制服の裾を引っ張って私は真剣に言う。

「…分かったよ。んじゃさ…」

キミはそう言って、コンビニのビニールから、なにか手のひら程の包みを取り出した。

「これ、やるよ。寒いし。」

受け取ってみると、暖かくていいにおい…。これって…

「…肉まんだ!」

私はつい叫んでしまった。

「優梨、肉まん好き?」

「大好きなの!」

「良かった…嫌いだったら2つ共食べてたけどな。」

笑いながら言うキミ。

そっか…レジに行ったのは、レジの横の肉まんを買うためだったんだね。

「ありがとう。」

私は心からお礼を言った。

「ま、優梨には勉強教えてもらってるし、ほんの気持ちですが。」

おどけてみせるキミ。

「いつも肉まんくれるならいつでもやっちゃおうかな。」

冗談っぽく言ってみる私。

「えっ…肉まんだけで勉強教えてくれんの?随分安上がりな先生ですこと。」

「あー。言ったな。もう教えてあーげないっ。」

「ごめんごめん!優梨先生いないとムリ〜!許してよ。」

私はふと気づいた。

「良平君、今、優梨先生って言った?」

「えっ…?うん。」

「わぁ、本当?私、優梨先生ってよばれるのが夢なの!なんか嬉しい!」

しかも、それを言ったのが…キミだったし。

「おいおい、言ったのがオレで良かったのか?ホントは子供だろ。」

「いいの。先生は先生なんだし、良平君は十分子供だよ。」

「…優梨…最近真章や北里に…似てきた気がする…。」

「ま、いいじゃん。じゃあ、私はそろそろ帰ります。」

「おう。気をつけろよ。知らない人についていくなよ。」

「…良平君。」

「ははは。さっきのお返し。それじゃあな。」

「うん、また明日。」

私たちはそれぞれ反対方向へ歩き出した。

付き合いはじめてから、初めて一人でかえるかもしれない。ちょっと変なかんじ。

でも、私は抱えている暖かな包みを思い出した。

まるで、キミがここに居るみたい…あったかい…。

降り続いている雪に、暖かさすら感じる。

ほら、また、キミのぬくもりが私の中に入ってきたよ。

あったかいんだ。

やさしいんだ。

ここちいいんだ。

ただの肉まんも、キミがくれただけで、もっと嬉しくなる。

…おかしいかな。

…私だけかな。

…ま、いっか。私だけでも。

キミの役に立てるなら、そばに居られるなら…肉まんがなくったって、勉強教えるよ。一緒に勉強しよう。

帰ったら…真っ先に肉まん食べよう。

冷めてても良い。多分キミのも冷めてるだろうから。

前野良平…ほかほかしてて、あったかくて、大好きな…私にとって肉まんみたいな…キミの名前。

明日もまた一緒に、肉まん食べたいな…そんなキミの名前。


いががでしたか?今回は帰り道編です。タコヤキといい肉まんといい…食べ物に縁の深いカップルです(笑)

今回で15話目です。正直自分でもびっくりです。どこまで続くか分かりませんがこれからも頑張って執筆していきます☆

それではまたお会いしましょう!

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