キミとのであい。
好き・すき・スキ…何度この言葉を繰り返したかな…。
初めてキミに会ったのは…天気予報が大外れした、どしゃぶりの日だったよね。
「おい、有沢!有沢優梨!!」
そうやって、生徒玄関前で雨宿りする私に声を掛けてくれたっけ…。
「何?今日遅いね。委員会?そろそろ文化祭だし、有沢って文化祭の実行委員だろ。大変だな」 それまで私の中では、キミなんてただのクラスメイトだった…
「うん…まぁね…でも、嫌いじゃないよ。こういうの。…前野君は?委員だっけ?」
「いや、俺は裏方とか仕切るのとか向いて無いからさ、どっちかというとお膳立てしてくれたのに乗っかるタイプなんだよね。」
明るく笑い飛ばすキミ。
キミと話したのはあの日が初めて…でも、キミの尽きない話しは、私にキミの魅力を気付かせるかの様に鮮やかだった。
「…前野君は?部活?」
「そ。部活。バスケ部。今日はレギュラーテストでさ、遅くなったんだよ。」
「へぇ、スポーツ部なんだぁ…すごいね。私って運動音痴だからスポーツやってる人って尊敬する。」
「尊敬なんて大袈裟だよ。それに、俺はお前の尊敬に値する様な奴じゃないと思うけど…」
「どうして?レギュラーテスト、受けたんでしょ?そのやる気に尊敬だよ。」
「やる気に尊敬?お前、面白い奴だな。」
「そうかな…ふふふ。」
「有沢がそんな風に笑うの初めて見た…笑うと結構カワイイじゃん。クラスでもさ、そうしてなよ。絶対モテる。」
「前野君、変な事言わないでよ。私、カワイくなんかないし…」
「そんな事無いと思うけどなぁ…あ、ところで、なんで有沢はここにいんの?」
「私?…天気予報外れちゃってさ、傘忘れて雨宿り。…でも止みそうにないよね…」
ちょっとの沈黙。そしてキミが口を開いた。
「コレ、貸す。」
「えっ…?」
「有沢って北町だろ?学校と反対側じゃん。俺んちこの辺だし。」
「でも、悪いよ…それに、結構降ってる…風邪引いちゃうよ。」
「部活で鍛えてるから大丈夫だよ。それに、レギュラーテスト終わったし、別に風邪引いても問題ないし。」
まだ少し迷っている私の手に傘を押しつけて、キミは駆け出したよね。
「じゃあな!気をつけて帰れよ!!」
あまりにも突然の出来事に、私は呆然としながらこう言った。
「バイバイ、また明日、前野君!!」
最後まで言い終わらないうちにキミは見えなくなったよね。
手の中の傘を見た。100円の透明なビニール傘。キミとの会話が鮮明に残ってる。
『笑うと、結構カワイイじゃん。』
「…結構カワイイか…カワイイのかな…私って…」
そう言いながら傘を広げた。
くっついてたビニール同士がパリパリと剥れていく。
「コレ、使った後干して無いな…」
ブツブツ独り言を言いつつ傘をさして歩きだす。
ふと上を見上げた。
私は笑ってしまった。
「ふふふ。何この傘、穴あいてんじゃん。」
“笑うとカワイイ”…のかは別として、私は傘の穴を見て笑っていた。
そして、そのままの顔で家に帰った。
前野良平―忘れられないキミの名前。 そして、聞いたら心があったかくなるキミの名前…。




