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第7話「触れそうで触れない距離」
第7話「触れそうで触れない距離(完全版)」
夜の森は静かで、やけに距離が近く感じられた。
手を伸ばせば届く距離に、リナがいる。
それでも、どちらも動かない。
動いてしまえば、何かが変わってしまう気がした。
「怖いの?」
リナが少しだけ笑う。
軽い調子のはずなのに、どこか本音が混じっていた。
「お前だろ」
レイは視線を逸らしながら答える。
否定はなかった。
戦場では迷いなく剣を振るえるのに、この距離では一歩が踏み出せない。
触れれば壊れる。
そんな確信にも似た感覚が、二人を縛っていた。
それでも、この距離が心地よいと思ってしまう。
だからこそ、余計に動けなかった。




