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第3話「敵と呼ぶには近すぎて」
夜の偵察中、レイは不意に足を止めた。
あの気配だと、直感で分かる。
振り向いた先、月明かりの下に少女は立っていた。
今度は剣を向けてこない。
「殺さないのか」
低く問うと、少女は小さく息を吐いた。
「あなたもでしょ」
図星だった。
戦場で見せていた殺気はなく、そこにいるのはただの一人の人間だった。
沈黙が落ちる。
やがて少女は、少し迷うように口を開く。
「……リナ」
それが本当の名前かどうかは分からない。
それでもレイは、自分の名を返していた。
敵に名前を明かす愚かさを理解しながら。
その瞬間、二人の距離は確かに変わった。




