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■第12話「名前を呼ぶということ」
「レイ」
不意に名前を呼ばれ、心臓がわずかに跳ねた。
戦場では、番号や役割で呼ばれることの方が多い。
名前はただの識別にすぎなかった。
それなのに、リナの口から呼ばれると、まるで違う意味を持つように感じる。
「……なんだよ」
平静を装って返すが、内心は落ち着かない。
リナは少しだけ楽しそうに笑った。
「ちゃんと呼んだの、初めてかも」
その言葉に、妙な実感が湧く。
確かにこれまで、名前を呼ぶ必要などなかった。
敵だったからだ。
だが今は違う。
少なくとも、この時間だけは。
「リナ」
呼び返すと、彼女の表情が柔らかく変わる。
それだけで、距離が縮まった気がした。
名前はただの音ではない。
相手を“特別”にするものだと、初めて理解する。
戦場では不要なもの。
だがここでは、それが何よりも大切だった。




