成果物その1-1. 送料は命で払え! ~俺の【ネットでお取り寄せ】スキルは、悪党をポイントに変える外道専用サイトでした~
改行や内容はまあまあ加筆修正しました。2話以降の、他者の命をポイント化は私のアイデアです。さすがにAIからこんな発想出たらビビるwww
第1話:神様、その「送料無料」は嘘ですよね?
「おめでとう! 君は死んだ! だから異世界で第二の人生を謳歌させてあげよう!」
真っ白な空間で、自称・神様のジジイが鼻をほじりながら言った。
俺、僧良 波羅宇は、コンビニの帰りに死んだ。……といっても、トラックに撥ねられたような華々しい死ではない。
賞味期限切れの半額弁当にあたり、自宅のトイレで
「うおおおお、腸が、腸が裏返るぅぅぅ!」
と絶叫しながら悶絶死したのだ。二十二歳のフリーターとして、あまりに情けない最期だった。
「不憫すぎるからな、特別に最強の固有スキルを授けよう。その名も――ネットでお取り寄せだ!」
「……はあ? なにその、いかにも後から苦労しそうなスキル」
「何を言うか! 脳内に浮かべたECサイトから、現代日本の商品を何でも取り寄せられるんだぞ。○マゾンでも○天%でもヨ○バシでも思いのままだ。これで魔王を倒すなり、スローライフを送るなり好きにしたまえ。あ、転移先はゴブリンの巣窟のど真ん中にしておいたから。じゃあね!」
「ちょっと待てジジイ! 投げっぱなしすぎるだろ――ッ!?」
視界が歪む直前、俺は神のニヤついた面を脳裏に焼き付けた。
いつか、いつか必ずこのジジイを「不良在庫」として特定し、完膚なきまでに返品(殺害)してやる。俺の新しい人生の目的が「神への復讐」に決まった瞬間だった。
視界が開けると、そこは湿気た洞窟の中だった。
目の前には、緑色の肌をした化け物――ゴブリンが3匹。棍棒を振り回し、涎を垂らしながらこちらを睨んでいる。
「ギギッ! ギギギ!」
「うわあああ! 出た! 本当に出た! えーと、スキル! スキル発動! ネットでお取り寄せ!」
俺は必死に念じた。武器だ。ゴブリンをぶっ飛ばせる強力な武器!
脳内に浮かんだのは、某大手通販サイトの検索窓。俺はそこに『レーザー銃』と打ち込もうとしたが……。
『エラー:その商品は現在の配送エリア(異世界・絶望の洞窟店)では取り扱っておりません』
「はあぁ!? 異世界配送対応してねーのかよ! 偽装サイトかよ!」
焦る俺の脳内に、無機質な音声が響く。
『代わりの推奨商品を表示します。……お徳用・防犯ブザー(大音量モデル)をカートに入れますか?』
「背に腹は代えられねえ! それだ! 注文確定ッ!」
その瞬間、俺の目の前に段ボール箱がポップアップした。
よし、これで助かる! 俺は素早く箱を開けようとした。……が、開かない。
「なっ……開かねえ! なんだこれ、ガムテープがめちゃくちゃ頑丈なんだけど!」
『警告:開梱オプション(100円)が未選択です。素手で開ける場合は、筋力ステータスが「50」以上必要です』
「今の俺の筋力は!?」
『「3」です。ゴミ虫並みです』
「詰んだわ! 物理的に詰んだわ!」
ゴブリンが迫る。棍棒が振り下ろされる! 俺は死に物狂いで、届いたばかりの段ボールを盾にして叫んだ。
「このっ、クソ○マゾ……あッ、角が当たった!」
バチィィィンッ!
「ギギャアアアア!?」
段ボールの角がゴブリンの鼻先にクリーンヒットした。なぜか火花が散り、ゴブリンが消し炭になって吹き飛ぶ。
「えっ……何これ。段ボールの角、強くね?」
『解説:有料会員特典により、梱包材には対魔力コーティング・強化カーボンが使用されています。なお、配送料として僧良様の魂の残量(寿命)が3ヶ月分引き落されました』
「……は? 魂の残量……寿命? 三ヶ月分……?」
俺は震えた。このスキル、自分の命を削って配送してやがるのか。
送料は無料じゃなかった。俺の命が、直接送料として差し引かれたのだ。
「僧良なのに、送料が払えねえよ! 名前負けだわ! ふざけんなジジイィィィ!!」
俺の絶叫が、洞窟の中に虚しく響き渡った。
第2話:等価交換(※ただし支払いは他人任せ)
「ハァ……ハァ……死ぬ。いや、送料で死ぬ……」
洞窟の地面に四つん這いになりながら、俺は自分のステータス画面を睨みつけた。
寿命が三ヶ月減っている。このままお取り寄せを続けたら、地球に帰るどころか、この洞窟で「送料不足」によって餓死する未来しか見えない。
『通知:ユーザーの極限状態、および神への殺意を検知。新規決済オプションが解放されました』
「……あん? 新規決済オプション?」
脳内に響く無機質なアナウンス。俺が画面をスクロールすると、そこには驚愕の項目が追加されていた。
> 決済方法の追加
> ・本人決済(寿命マイレージ)
> ・他者決済(譲渡・強奪による魂のチャージ) ※New!
> ・リボ払い(来世の運勢を担保)
「……待て。他者決済って、まさか」
『解説:対象の生命力および魂を、当サイトの専用ポイント、デッド・ポイント(DP)に変換し、代金として充当することが可能です。条件は、法的な死刑対象であるか、ユーザーの所有物であること。目視できれば決済可能です』
「…………」
俺は静かに、先程段ボールの角で消し炭にしたゴブリンの仲間たち――まだ生きている残りの2匹を見た。こいつらは、この世界の法律(神の適当な設定)によれば、間違いなく「討伐推奨=死刑対象」だろう。
「……お取り寄せ……害獣駆除用・高電圧スタンガン。支払い設定、こいつら全頭で」
『承諾されました。ゴブリン2匹分の魂を回収。合計100DP獲得。……注文確定。決済完了!』
バシュゥゥゥン!
目の前のゴブリンたちが、まるで電子レンジで加熱しすぎたマシュマロのようにシュポーンと消滅した。
代わりに、空から真っ黒なコンテナが降ってくる。
「お, 重い……! でも今度はちゃんと開くぞ!」
中に入っていたのは、鈍く光るメカニカルなデバイス。
自動追尾型・高電圧スタンガン(魔改造済み)だ。
「よし。これで寿命を削らなくて済む。……いや、それだけじゃないぞ」
俺は邪悪な笑みを浮かべた。
このスキルのリストには、確かに存在していた。『地球への片道航空券(時価)』。その価格、数千万……いや、数億DPは必要だろう。
「自分の寿命で払うには足りない。だが、この世界にはポイントの種(悪党)が腐るほどいる。あいつらを片っ端から決済して、ポイントに変えてやればいいんだ」
俺はスタンガンを握りしめ、洞窟の出口へと歩き出した。
外の世界には、山賊がいる。魔物がいる。そして、俺にこのクソスキルを押し付けた「最高級の不良在庫(神)」がいる。
「待ってろよジジイ。お前をポイント化して、そのポイントで地球に帰ってやる。それが俺のカスタマーレビューだ!」
洞窟を抜けた先には、のどかな街道が続いていた。
少し歩くと、馬車が数人の山賊に囲まれているのが見える。
一人の美少女が、悲鳴を上げながら震えていた。
「ヒッヒッヒ! この女、高く売れそうだぜぇ!」
「やめて! 誰か助けて!」
俺は草むらからぬっと姿を現し、スマホ型のスキル発動機を掲げた。
「おい、そこな下衆な野郎ども。いいツヤしてるな。……お前ら、一人いくらだ?」
「あんだぁ? てめえ、どこの馬の骨だ!」
山賊が斧を振り上げる。俺は冷徹に操作を完了させた。
「お取り寄せ――瞬間硬化ボンド・スプレー。支払いは……お前ら全員だ。まとめて『一括払い』で決済してやるよ」
『オーダー承認。山賊5名による決済、完了しました』
「ギャアアアア!? 体が、消え……ッ!?」
シュポーン! という軽快な音と共に、山賊たちが次々と消滅していく。
代わりに俺の手に巨大なスプレー缶が握られた。
「あ、の……助けていただいたのですか……?」
馬車の陰で震えていた美少女が、涙目で俺を見上げる。
「君、名前は?」
「え?? 私をご存じない? 第2王女のミルテです」
俺は彼女の顔をジロジロと眺め、値踏みするように呟いた。
「……なるほど。君、王女様なの? 法律上は俺の所有物じゃないけど……これ、王宮に届けたら『着払い』でいくらもらえるかな?」
「は? ……着払い……?」
俺は異世界お取り寄せ無双。
それは、出会うすべての悪意をポイントに変換し、世界そのものをポチっていく外道な旅の始まりだった。
第3話:王女様は着払い(お急ぎ便不可)
山賊五人が「シュポーン!」という軽快な電子音と共に消滅した街道。そこに残されたのは、腰を抜かした美少女一人と、巨大なボンドのスプレー缶を抱えた俺、僧良 波羅宇だけだった。俺は手元のスマホ型デバイスを操作し、現在の残高を確認する。
「……チッ。山賊五人でたったの五百デッド・ポイント(DP)かよ。端金すぎてポテチの一袋も取り寄せられねえぞ」
俺が不機嫌そうに舌打ちをすると、地面に座り込んでいた美少女――自称・第2王女のミルテが、震える声で突っ込んできた。
「な、な……何が『端金』よ! あいつら、この辺りじゃ有名な極悪非道の山賊団だったのよ!? それを一瞬で消し去っておいて、感想がそれ!? っていうか、あいつらをどこにやったのよ!」
俺はミルテを冷ややかな目で見下ろした。
「どこって、当サイトのサーバーに『決済完了』として吸い込まれたよ。まあ、せいぜい来世で何かの梱包材にでもなってるんじゃないか?」
「決済!? 人間を代金みたいに言わないでよ! あなた、助けてくれたんじゃないの!? 正義の味方じゃないの!?」
「正義の味方? 勘違いするなよ、着払い商品」
俺はミルテの顔を指差し、断言した。
「俺は自分の寿命を削るのはゴメンだ。だから、送料を肩代わりしてくれる『悪党』を仕入れただけだ。ついでに言うと、君を助けたのは善意じゃない。王女なら王宮に送り届ければ、莫大なポイントか、それに代わるお宝がもらえるだろ? それが『着払い』の仕組みだ」
「着払いの定義が私の知ってるのと全然違うんだけど!? っていうか、私を荷物扱いするなぁぁぁ!!」
ミルテの絶叫が街道に響き渡る。だが、俺の耳にはそんな不平不満は届かない。俺が今考えているのは、いかに効率よくポイントを稼ぎ、あのクソジジイ(神)に復讐し、地球への帰還チケットを手に入れるかだけだ。
改めてショップ画面の『地球への片道航空券』を確認するが、表示されている価格は『時価:一千億DP~』。……山賊一人が百DP。つまり、あと十億人くらい悪党を決済しないと帰れない計算になる。
「いや、悪党でなくてもいいか? 十億人くらい決算すればいい話だな。そのためには……」
「一人で物騒なこと言わないでよ!? っていうか、その手に持ってる物騒な缶は何なのよ!」
「これか? さっきの山賊たちの命で取り寄せた『瞬間硬化ボンド・スプレー(工業用・特盛)』だ。お急ぎ便(プライム会員特典)を使ったからな、配送料込みで綺麗に五百DP消費したよ」
「山賊五人の命がスプレー一本に化けたの!? 命のコスパ悪すぎでしょ!」
俺はスプレーのノズルをミルテに向けた。
「おい、動くなよ。君は高額商品だ。配送中に逃げられたり、傷がついたりしたら困る。これで足元を地面に固定してやる」
「言っていることが悪党よアナタは!!?」
ミルテが必死に逃げようとするので、俺は溜息をついてスプレーを収めた。確かに、王女が街道の真ん中でオブジェになるのは効率が悪い。
「わかった。接着は保留だ。だが、その代わりに……案内しろ」
「案内? 王都までなら、この道を真っ直ぐだけど……」
「違う。さっきの山賊どもの根城だ。まだ在庫が残ってるんだろ?」
ミルテは目を見開いて絶句した。
「……は? な、何言ってるの? あいつらのアジトには、まだ数十人の山賊がいるのよ!? 普通は逃げるでしょ!」
俺はニヤリと、自分でも惚れ惚れするような邪悪な笑みを浮かべた。
「逃げる? バカを言うな。落ちているお金をみすみす逃す奴がどこにいる? 数十人の山賊……数千DPの山が俺を待ってるんだ。手に入れるほか手はないだろ」
「この男サイコパスだ!? 山賊を金にしか見えていないサイコパスだわ!!」
「褒めるな。さあ、さっさと歩け。遅延が発生したら、その分は君の慰謝料から差し引くからな」
「私の慰謝料って何!? どこまで強欲なのよこの男ぉぉぉ!!」
こうして、俺は泣きべそをかく王女を引き連れ、山賊の根城――もとい、ポイントの詰まった「物流センター(予定地)」へと足を進めた。神様、見てるか? お前がくれたこのクソスキル、俺は徹底的に悪用してやるよ。まずはこの世界の悪党をすべて「決済」して、俺の帰還費用に変えてやるからな! 待ってろよ、カスタマーサポート(神)のジジイ。お前をポイント化して、そのポイントで地球の極上焼肉セットを取り寄せて食ってやるのが俺の最終目標だ。
「おいミルテ、もたもたするな。お急ぎ便だぞ」
「誰が荷物よ! 足が痛いのよ! サンダル取り寄せなさいよ!」
「あ? 自分でお取り寄せスキル(自費)に目覚めてから言え。送料は魂着払いな」
「最低だわぁぁぁ!!」
僧良 波羅宇の、文字通り「命を買い叩く」異世界生活。最初の仕入れ先(山賊の根城)は、もう目と鼻の先だった。
第4話:山賊の根城でポイント取り放題
山賊の根城。それは切り立った崖の影に建つ、見るからに治安の悪そうな木造の砦だった。入り口には見張りの山賊が二人、酒を飲みながらだらしなく座り込んでいる。俺、僧良 波羅宇は、震えながら俺の服の裾を掴んでいる王女ミルテを連れて、堂々と正面から歩み寄った。
「ちょ、ちょっと! 本当に正面から行くの!? 隠密行動とか、搦手とか、そういう概念はないの!?」
「隠密? そんなコストのかかる真似ができるか。買い物は常に最短ルートで行うのが鉄則だ」
俺は迷わず、見張りの二人の目の前まで歩みを止めた。見張りの山賊たちが、ようやくこちらに気づいて鼻を鳴らす。
「あぁん? なんだてめえ。……って、おい! そいつはさっきの馬車に乗ってた王女じゃねえか! 逃げ出したと思ったら、わざわざ手土産(男)を連れて戻ってきやがったか!」
「ヒッヒッヒ! 運がいいぜ! アニキに報告だ!」
山賊たちが下卑た笑いを浮かべ、獲物に手をかける。俺は無機質な視線で彼らを見つめ、スマホ型デバイスのボタンを淡々とタップした。
「……見張り二名。ステータス:低。DP換算、一名につき七十ポイントか。端数だな。まあ、塵も積もれば山となる……一括決済だ」
「シュポーン!」「シュポーン!」
「えっ」
「ふぁっ??」
山賊たちが驚愕の声を上げる暇もなく、その姿が粒子となって消滅する。代わりに俺の残高が百四十DP増えた。
「はい、入店完了」
「入店じゃないでしょぉぉぉ!! 門番が軽快な音を立てていなくなったわよ! あなたのスキル、本当に怖すぎるんだけど!?」
「何が怖い。決済されるような悪いことをしている連中が悪い。さあ、次は本会場だ」
俺は砦の門を蹴り開けた。中は広い広場になっており、そこには三十人近い山賊たちが屯していた。突然の闖入者に、広場が静まり返る。中心で肉を食らっていた巨体の男――おそらく山賊の頭領が、立ち上がって吼えた。
「何事だぁ! てめえ、何者だ!」
「……三十、三十一、三十二。よし、全部で三十五名か。平均単価百DPとして……三千五百ポイント。うん、いい。いい感じのバーゲン会場だ」
俺は満足そうに頷き、ショップの検索窓にキーワードを打ち込んだ。
『検索:暴徒鎮圧用催涙ガスランチャーセット』
『価格:三千DP』
『在庫:あり(即日配送可)』
「ポチっとな。支払いは、そこにいる頭領っぽいおっさんの予約注文(決済予定)で」
『予約決済承認。ターゲット:山賊頭領。納品後に魂を回収します』
「え、何? 予約注文!? まだあいつピンピンしてるけど!? 死ぬ前提で買い物してるの!?」
「買い物っていうのはな、ミルテ。支払いの見通しが立ってれば成立するんだよ」
頭上の空間が歪み、一辺が二メートルほどある巨大な段ボール箱が、もの凄い速度で落下してきた。ターゲットは、もちろん呆然としている山賊の頭領だ。
「ヌ, ヌオォォォ!? 空から巨大な箱がぁぁぁ!?」
ドガシャアアアアアン!!
親方ぁ、空から巨大な箱がぁ。なんてな、ハハッ。
重量にして数百キロはあろうかという特大サイズの段ボール。それが「置き配」の勢いで頭領を押し潰した。対魔力コーティング・強化カーボン仕様の角が、頭領の脳天にクリティカルヒットする。
「シュポーン!」
「……決済完了。あ、配送料として頭領の魂がまるごと引き落とされた。残りは俺のポイントだな」
「死因が配送って、あんまりすぎるでしょぉぉぉ!! っていうか頭領を殺して買い物を済ませるな! 順序が狂ってるわよ!」
うるせーな。いいだろ、こんな奴らがどうなっても。俺は開梱オプション(百DP)を選択し、段ボールのガムテープを弾き飛ばした。中から現れたのは、近未来的な形状のガスランチャー。
「さて。残りの在庫ども。お前ら全員、俺の帰還チケットのための『小銭』になってもらうぞ」
「な、なんなんだこいつはぁぁ! 頭領を一瞬で殺しやがった!」
「逃げろ! こいつは人間じゃねえ、魔王だ!」
「逃がすかよ。配送エリア外への移動は認めない」
俺は引き金を引いた。ランチャーから射出されたグレネードが広場で炸裂し、あたり一面に超強力な催涙ガスが充満する。
「あがぁ!? 目が、目がぁぁぁ!!」
「鼻がもげる! 息が……ヒィッ!」
のたうち回る山賊たち。俺は、ショップで取り寄せた『高性能ガスマスク』を装着しながら、地獄絵図の中に足を踏み入れた。
「あ、の……私の分は? ねえ、私も目が痛いんだけど! その付けているやつ、私にも寄越せぇぇぇ!!」
「自腹で買え。……さて、全品回収(ポイント化)開始だ」
俺はもがく山賊たちを片っ端から指差し、「決済」を連打していく。広場に「シュポーン!」「シュポーン!」という小気味いい音が連続して響き渡った。
広場から人影が完全に消え失せた。残されたのは、山賊たちが食い散らかしたゴミと、ガスマスク姿で佇む俺、そして涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら俺の足を蹴っている王女だけだった。俺はガスマスクを脱ぎ、満足げにデバイスを確認する。
「ふむ。合計四千二百DPか。いい仕入れだった。これでしばらくは食費に困らないな」
「最低よ! あなたは最低の極極悪人よ! いたいけな王女を山賊と同じ訳の分からない薬に巻き込むなんて!! 末代まで呪ってやるんだからぁぁぁ!!」
「さて、あとはアジトの奥を掃除して終わるか。まだ『在庫』が残ってる気がするしな」
俺はミルテを引きずりながら、砦の奥深く、地下へと続く階段を下りていった。最奥の鉄格子の扉。そこを蹴破ると、そこには薄暗い部屋の中で、山積みになった「奪われた金品」と、その横で黙々と何かを整理している少女がいた。
「……五十八番、銀の盆。傷あり。……五十九番、欠けた魔石。低級品。……嘆かわしいですね。この賊たちは並べ方というものを知らないのでしょうか。これでは取り出す時に無駄な時間がかかります」
ぼそぼそと呟きながら、羊皮紙の束を抱えて何かを書き留めている銀髪の少女。彼女が、後に俺の「在庫管理の鬼」となる第ニのヒロイン、ベルティーユとの出会いだった。俺は彼女に近づき、声をかける。
「おい、そこで荷物の整理をしてるお前。なかなかいい手際じゃないか。俺の仲間ににならないか?」
どこぞの鬼が、鬼殺しの1人に提案するように、問いかける。
少女はゆっくりと振り返り、眼鏡を光らせながら無機質な視線を俺に向けた。
「お断りします。私はここで、誰にも邪魔されずに整理整頓をしていたいのです。あなたは……せっかく私が並べた秩序を、土足で台無しにする気配がします。非常に不快です」
「助けてやったのに好感度が低いのはなんでだよ。ちっ、愛想がねえな」
「助けた? 私は山賊たちが残した在庫の管理をしていただけです。それ以上の興味はありません。お引き取りください」
俺は思わず眉をひそめた。だが、この執着心、そして無機質なまでの正確さは捨てがたい。どうにかしてこいつを「所有」できないか……。俺はふと、デバイスのショップ画面をスクロールした。もしかして、とあるカテゴリーを開いてみる。
……あ? なんだこれ。検索窓に『人間』って入れたら……出てきやがった。え、悪くない人もポイントで購入し、所有物にできるのか?画面には『未登録在庫の所有権譲渡(強制)』という不穏な項目が表示されていた。価格は、その人間の価値や負債によって変動するらしい。
「……ベルティーユ……没落貴族の令嬢、山賊への借金肩代わりオプション。価格、五百DP。安いな、バーゲンセールかよ。よし、ポチっとな」
『決済完了! ベルティーユ様の所有権が僧良 波羅宇様に移譲されました。対象は「所有物」としてポイント化条件を満たしました』
「? 何をしたのですか。今、私の魂に……何か抗えない印を付けられたような感覚が……」
「おめでとう、ベルティーユ。お前はたった今、俺の『在庫』になった。……正確には、在庫を管理する側の在庫(従業員)だ。断る権利はないぞ。俺の所有物だからな」
「ちっ、わかりましたよ、よろしくおねがしいます、けっ」
「人を買った!? スキルで人を買った!? しかも没落とはいえ貴族を!? あんた、いったいどうなってるのよぉーーー!!!」
ミルテの叫びが地下室に響く中、俺は無機質な表情を崩さないベルティーユを、満足げに眺めた。
僧良 波羅宇の、文字通り「世界を買い叩く」外道なショッピング。三人のヒロインが揃うまで、あと一人の「広報」が必要だったが、それはまた別のセールの時の話である。




