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ギルドでの決心

そこは異様な熱気に包まれていた。



「うちのパーティーはどうですかー?」


「アットホームなパーティーです!」


「先輩優しいし、練習も自由参加!」



(なんだこれは。新入生の部活勧誘みたいだな)


でも俺はパーティーに入るつもりはない。あんな魔法の詠唱きかれたくないし、なにより服が透ける魔法が使えると知られたら街から追い出されるだろう。


あの手この手で必死に勧誘してくる集団を振り切って「初心者の方はこちら」という看板に従って進むと、1つの建物が見えてきた。


(これは、ギルドと言われるやつなのか?にしても小さいし、ここに入るなと本能が言っている気がする)


恐る恐る建物を覗くと、男たちが騒いでいるが見えるし、お世辞にも治安が良いとは言えないポスターが貼ってある。


(入るしかないんだよなぁ)


一抹の不安を抱えながらも扉の前に立ち、一呼吸置く。


(よし、いくか)


勢いよく扉を開くとそこはまるで運動部の部室のようなむさくるしい熱気が漂っていた。


(俺の本能は間違っていなかった…)



「今日は飯食って帰ろうぜ!」


「明日雨降って、討伐が中止にならないかなぁ」


「冬の間ってあまりモンスターが湧かないから、基礎練ばっかなんすか?!」



部屋のあちこちから部活でしか聞かないであろうセリフが聞こえてくるし、挙句の果てには、上裸で踊り出すやつまでいる。


(どの世界でも体育会系はこんなノリなのか……苦手なんだよなぁ…… )


絡まれると面倒なので、目を合わせないように床を見ながらそそくさと通り抜けて受付に向かう。


(どうにか絡まれずにすんだ。もうなるべくここには来たくないな)


無事受付に着き、顔を上げるとそこには、部室のようなこの場所には似つかわしくない、圧倒的な美貌を持つお姉さんが座っていた。


「どうかされましたか?」


「あ、あの、すみません。冒険初心者なんですけど、どうしらいいか分からなくて」


(声まで綺麗だとは…絶世の美女とはきっとこのような人のことを言うのだろう)


「初心者の方ですね!ではまず冒険者の登録をおこないますので、ステータスカードを拝見してもよろしいですか?」


「ステータスカードで…す……ね…?」


お姉さんの美貌に酔っていたのもつかの間、とんでもないことを要求された。いや、普通の人からすればなんてことのないことだろうが、俺のカードには『とっておき☆裸が見れる魔法』通称(《服透視シースルー》) が書かれている。


「どうかされましたか?」


魔法名を見られてしまうと、俺の職業名が「変態魔法使い」に書き換えられてしまうのは間違いない。しかし、カードの提出を拒むなんてしたら、余計怪しまれてしまう。


(あぁ、もう、これしかない!)


「これですね!お願いします!」


そう、あまりにも堂々と爽やかな好青年のように振る舞う作戦だ。たとえあの魔法名が見られても、「こんな好青年があんな魔法使うわけがない!きっとカードのエラーなのね!もうこのカードったら悪い子!めっ!だよ!」などと思ってくれるだろう。


「登録しますので、少々お待ちください」


そんな俺の作戦に引っ掛かったのかは分からないが、カードを受け取ると手際よく魔道具と思われる箱に差し込み何やら魔法を唱えている。


その最中、俺はある欲望に襲われる。そう、『とっておき☆裸が見れる魔法』だ。今使えば確実に’見る’ことができるだろう。だが、目の前で魔法を使えば確実にばれてしまう。どうにかして…と考えていると、登録を終えたお姉さんの説明が始まる。


「モンスターを倒したり、依頼をクリアすると自動で記録され、報酬をお渡しできるようになっています。あと、わたしたちには守秘義務があるんで、どんな……『個性的』な魔法をお持ちでも、外に漏らすことはありませんよ♡」


(バレてる!!!)


完全に見られていた。このままではイケナイ男の子リストに載ってしまう。それは何とか防がないと、と必死に言い訳をする。


「いや、でも、違うんです!、こんな魔法使ったこともないし、絶対使わないんで大丈夫です!気にしないでください!」


だが、叫んでから致命的なミスに気づいた。そう、この世界では使った魔法だけがカードに登録される。すなわち、このカードに登録されている以上、この世界では俺はすでにどこかで「実行済み」の常識外れな変態ということになる。


「個性的な魔法を使う方はたくさんいらっしゃるので、あまりお気になさらないでください♡一度も使ったことがないというなら、せっかくだしここで試していきますか??」


なんということだ。こんな綺麗な人が、自分の体を好きに見ていいよと言ってくれている。


(これは…どっちが正解なんだ!?)


「どうぞ遠慮なく♡」


(遠慮なくとまで言われて見ないのは、逆に失礼にあたるのではないだろうか。断る理由がない。せめて気持ち悪くならないよう、爽やかにいこう! 元気よくいこう。)


「は、はい!!よろしくお願いいたします!!」


「じゃあ、いつでもいいよ♡」


かつてないほど集中を高め魔法を唱える。


「《服透視シースルー》」


(…あれ?)


「《服透視シースルー》!!」

「《服透視シースルー》!!」


いくら唱えても見ることができない。


魔法ランクもBだし、圧倒的な集中力でイメージ力を高めているのに。


「やっぱり、何も見えなかったでしょ?理由は2つ。1つは周りにいるの冒険者の魔力が漂っていること。2つ目は人は誰しも魔力を纏っているということ。魔力が干渉し合って、君の魔法が上手く使うことができないの」


なんということだ。干渉して見ることができないだと。 落ち込む俺にお姉さんは優しく声をかけてくれる。


「だから、他の魔力に干渉されないくらいの上級魔法使いになれば……ね♡」


「は、はい!!そのときは…ぜひ!!」


(よし決めた。俺はこの魔法を使えるような上級魔法使いになる。なんか魔王とかなんかいたような気がするけど、この魔法使えるレベルなら多分大丈夫)


俺は満面の笑みで深々と頭を下げ、出口に向かって力強く歩き始めた。





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