第六話 8不思議その4
「こんにちは…もみじさん」
その女子、もみじはなにも言わない。
「ごめんよ春、彼女は人見知りでね、もみじちゃん、彼は話してた友春だよ。同じ部活の。」
「あ、、はじめまして、浦上もみじです。」
「よろしく、安田友春です。」
「…」
気まずい沈黙が流れる。
「あぁそう。春を呼んだ理由なんだけど、なんでももみじちゃんが8不思議を見たってことなんだ。」
「8不思議…どの不思議?」
「第4だよ。」
「第4…」
僕もオカルト研究会に入るにあたって部室の報告書だったり図書館だったりで8不思議について調べた。
「確か第四不思議は‥」
「黒い幽霊‥」
「黒の幽霊だね」
声が重なる。
「あれ?春も知っていたのかい?意外だね。」
「うん調べたんだ。」
「勤勉なようで何よりだね。」
「それよりも、もみじさんはなにをみたの?」
「え、えっと、私が見たのはもやのかかった人影?です‥」
「状況とかはどんな感じだったの?」
「えっと‥、日直と掃除で遅くまで学校に残ってて、
帰ろうと廊下に出た時に、横に黒い人がいて‥」
「でも、放課後に掃除ってなんかいけないことでもしたの?」
「いや、日直のもう一人が掃除をしてなくて‥それで日直である私たちに連帯責任で掃除をさせられることになったんです‥でもすぐに帰っちゃって‥」
なんとも後味の悪い話だ。
「そう‥なんだ。もみじさんは偉いね。」
「いや、全然偉くなんかないですっ、」
再び沈黙が流れる。
「事情はなんとなくわかったでしょ春。僕らで解決しよう。もみじちゃんはこのことで嘘つき呼ばわりされてるんだ。」
そういうことで、僕たちは第四不思議を解決するために調べることとした。
「安っほら風見野シャーロックホームズが来てやったぜ。」
ドアを開け、親指で自分を指しながら入ってきたのは自信満々な表情でドヤ顔を決める隼人だった。
「ちょっとごめん神谷さん。このバカったら張り切っちゃって。前は何もできなかったとかなんとかで。」
「いいさ、心強くて何よりだよ。」
神谷さんも苦笑いをする。
「また、別の人‥」
神谷さんの後ろに隠れながらもみじさんがそう呟く。
「この人が例のもみじさんね!任せてよもみじさん。
私と結衣と友春がなんとかして見せるから!」
美優がにっこりと笑い言う。
「おいテメェ俺のこと除け者にするんじゃねぇよ。」
隼人が食いかかる、全くこの二人がくれば途端に騒がしくなる。
「ごめんねもみじさん。この二人がうるさくて。
それよりもどうして神谷さんともみじさんはそんなに仲良いの?」
「そうだね。僕はよく図書館にいるだろ?実はもみじさんと結構前にそこで知り合ってね。お互いに話すようになったと言うわけさ。おすすめの小説とかを語り合ったりしてね。」
「そういうことなんだ。そういえば僕らが最初に会ったのも図書室だったね。」
「そうだね。たしかずっと春を待ってたんだっけ?」
神谷さんと思い出を語り合う。
「おい、安、それに神谷さんも、今は思い出話に花を咲かせてる場合じゃないだろ。8不思議のこと調べないとだろ。」
「そうだった、ごめんよ。つい楽しくてね。まぁ、打ち合わせをしようか。 まず、もみじちゃんが黒い幽霊と出会ったのは放課後、しかもかなり暗い時間帯だよね?具体的には何時くらいか覚えている?」
「えっと、確か6時暗いだったと思う。」
「わかった6時くらい‥ね。じゃあ次はその黒い幽霊の外見について覚えてる?」
「説明するのは難しいんだけど、人の形に鉛筆で塗り潰したみたいな、影がそのまま形になったみたいな、そんな感じだった。」
「こんな感じ?」
美優が紙にマジックで書いて見せる。
「うん、本当そのまま、すごく似てる。」
それは人の形をただマジックで塗りつぶしたものだった。
「君悪いな…」隼人が思わず口をこぼす。
「まぁ、僕らで解決しよう。とりあえずは放課後、6時くらいまで時間を潰すとしよう。」