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濮水の戦い
少年には知らない、その日の朝から晩まで、彼の里の近くに大戦が繰り広げられていた。魏の城、煮棗を包囲した斉・宋軍が北上し、濮水で秦・魏・韓連合軍と遭遇した。
その日は大戦の二日目だったが、側翼の宋軍の全面撤退により、すでに濮水北岸に渡った斉軍はやむを得ず南岸に撤退した。斉軍の死体の一部は、濮水の支流に沿い、やがて少年のところに流された。
今、濮水南岸の魏の民にとっては、これ以上お金を手に入れる機はない。
まずは、少年のように自ら死体を見つけて、闇商人や里の長と取引するのは一方法。
そして、集落に誤って入ったはぐれた兵士を狩るのも一つの手。
また、戦場掃除の役夫に選ばれたら、運が良ければ小銭、絹製の衣服、革制の靴などを召し上がれる。
特に今回みたいな野戦、交戦双方はゆっくり戦場を掃除する暇はないので、当地の民を徴発することが多い。この時、一部の兵器、弓矢、甲冑、輜重が戦場の掃除を執行する伍長や什長を通じて闇商人に転売される。
煮棗が数か月囲まれている間に、北の燕国から狐毛一行はすでに濮水南岸の丘陵に潜んでいた。