表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼煙  作者: ニンニクアワビ
12/16

少女

 黄昏の中、狐毛らは齊軍が山道に設けた一番目の営に着いた。

 この営には、およそ斉兵百人が泊まっている。

 うまく紛れ込むために、狐毛らは来る途中、函から必要な高唐弁を学んだ。

 幸い、敗兵はあまり他人と喋る意欲はない。

 狐毛ら一行には一つの帳が振り分けられて、夕食は粟米のお粥に野菜漬け。

 一方、蕩は、営が見えやすいところで谷間の様子を見ている。

 営には防御工事がない。此時、夕日がすでに沈んでおり、営には五人の巡回しか外にいない。

 十里の以内はひっそりしている。山道を通る人が見当たらない。

 「ほーほーほー、ほ」

 三長一短、これは蕩が出した合図。

 「守備少し、外から兵士来てなし」

 という意味だ。

 

 「そろそろ雨神が来るんだよ」

 突然の声に蕩がびっくり。

 ふりかえば、いつの間にうりろに一人の少女が立っている。

 「あなた、奴らに合流しない?」

 月の光で顔がよく見えないが、少女は素朴な服を着て、背中に籠を負っている。

 ただ、蕩が里で見た女子と違って、彼女の髪は短く、そして散っいる。

 どうする?居場所がバレた以上、彼女を殺め......いや、少なくとも気絶させなければならない。

 「あなた、奴ら口下手だから追い出されたのか?」

 蕩が葛藤している間に、少女が不快な声で蕩を揶揄した。

 少女が話した言葉は蕩がよくわからない。でも「奴ら」と言い続けているから、少なくともこの女子は斉軍と関わりはないようだ。

 蕩が思い出した、狐毛らと初めて出会った時。

 蕩は袖の深いところから、一粒の金を取り出した。

 「これ、あげる」

 それは昨日、狐毛からもらった金の粒。

 「おうち、かえって、ここでみたこと、はさないで」

 蕩は手足を使って、少女に言葉の意味を分からせる。

 「ハハハ、あなた、やはり口下手な人だな」

 少女が金の粒を取って、月の光に照らしてじっくり見る。

 「きれい、あーりーがーとうー」

 少女は、蕩にならつて手足を使う。

 「あたし、いえは、すぐあそこ、いまかえる」

 少女は、遠くないところの営を見つめ、不気味な顔をしている。

 「奴らは嫌いだ」

 「でも大丈夫、いつか神々が懲らしめてあげるから」

 蕩にわからない言葉を残して、少女は夜に消えた。

 まもなく、谷間で雨が降り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ