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狐毛
燕国の上都、薊の北西には、居庸塞がる。
居庸塞の西は太行山脈、東は燕山山脈。
燕から北方の地に馬車で行くには、居庸を通らなければいけない。
居庸から北西に進むと、谷がだんだんと広がっていく。
山脈の果てには、綱成という城がある。
北地から中原に行くには、この綱成は一番目の目的地。
行き来する商人はここで補給を取ったり、卸し売りしたりしている。
綱成のすぐ北西には、ウランという部族が生活している。
赤色が好きたがるから彼らのことを赤狄と中原の人々が呼んでいるが、ウラン部の赤は、別の意味がある。
その赤色は、旅人が果てしない草原に足を踏み入れる前に、振り返って見た赤い峰だ。
狐毛は、子供のごろから何度もこの峰を見た。
太陽の光の中、金色ぽく赤い峰だ。
彼にとってその峰は二つの世界の境であり、長い旅の終点でもある。
彼の父親は、ウラン部多くの商人の一人だった。
幼いごろから、彼は父親と一緒にさらに北のに行き、北の民から生革や毛皮を集め、綱成の市で卸売りに出す。
山谷に沿ってウラン部への帰り道にいつもこの峰が赤く輝く。