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霊命預所(仮)  作者: シズキ
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「この者は生まれ変わるリンネに入るまで相応の時間を要する、その者の代わりを受けるのだ、命よ今一度問う・・後悔はないな?」

「はい・・紫鶖様や皆さんのお心遣い感謝いたします」

そう言って命は頭を下げるのだ。

紫鶖は扇を前面に広げ今も苦痛を受けている魂をさらけ出した、冥獄では現世の姿で罰を受けているなのでその身はボロ雑巾のようになっており身体中血だらけになっている、紫鶖は扇を操りその魂を命の横に移動させた。

責め苦を受けていた魂はいきなり苦痛がなくなった事に驚きを隠せず辺りを見回す。

「えっ?!」

女性の目に映るのは宮殿のような綺麗な場所、見張りの鬼の姿もなく身体の痛みも無くなって自分に何が起こったのか分からなかっただが一瞬女性の脳を横切ったのは、苦痛が終わったのかという希望だった。

ある意味それは間違いなかった、そうそこに命がいるからだ。

「石塚久子だな」

玉座の上に鎮座する紫鶖が静かに問う。

女性は己の居場所に戸惑いながらも「はい」と答えた。

それから視線を彷徨わせながら恐る恐る訪ねてきた。

「あ、あの・・私は、私の罪は終わったのでしょうか?」

玉座に座る紫鶖は異様な気を発しており、誰が見てもここの主だと分かるそれほどに強い覇気を纏っていたのだ。

「愚か者が、お主はまだ己の罪を償いきれておらん」

「ではどうして私はここに?もしかして別の場所に連れていかれるので?!」

「そうじゃな、間違いではない」

それを聞いた女性はぶるぶると震えてその場にへたり込んだ。今でもきつい責め苦だったのにもしかしてそれ以上の責め苦を受けるのかと絶望に陥ったのだ。

女性は涙を流しながら強く訴えた、いったいどこにそんな強さがあったのかと言うくらい心から叫ぶように訴えた。

「お願いします!もうこれ以上は落とさないで下さい!何でもします!どんな事でもやります!だから元の場所以上の責め苦は許して下さい!!お願いします!」

最後の言葉を何度も繰り返しながら泣きわめく女性に向かって紫鶖は冷静な静かな言葉で告げるのだ。

「石塚久子よ、そなたは命の預かりとする。お主に会いたいと思ってる者の所へ逝くがいい」

「・・えっ?!どういうことですか?命とは?」

「様をつけぬか、お主の横にいる者が命じゃお前自身の魂を預かる者じゃ」

女性は横を見上げそこに立つ少女を見た、ニコリと微笑み彼女は優しい眼差しを向ける。

「貴女に会いたいと言う人がいます、私と一緒に行きましょう」

会いたい?そう言われて女性は思わずある男性を思い出し

「あの人ですか?!主人なんですか?!」

と命の服に縋りついた。

「お前は愚か者じゃな、お前の大事な者は・・」

「紫鶖様それ以上はおやめ下さい、この子が自分で気づかねばならない事です」

命の言葉に紫鶖はふぅと息を吐き出しそれ以上の言葉は発しなかった。

「それでは行きましょうか」

命の言葉と同時に紫鶖の扇が舞い光の道が出来上がる、そして女性は黒き魂となり命の手に収まった。

「紫鶖様ありがとうございましたこの子の魂は大事に預からせてもらいます、まあお会いしましょう」

「次回会う時はこのような事で呼び出してくれるなよ、命よ・・妾はそなたの友でありたいのだからな」

悲しそうな眼差しが命を見つめる、その視線を受けて命はニコリと微笑むのだった。


現世に帰ってきた彼女はその手に持つ魂を食らった、暫くすると彼女の身体に異変が起こり身体から血が流れ出す。

ベッドに行かなくては・・・

渾身の力を込めて寝室へと歩こうと向かうがその一歩がままならない、ただれゆく身体、高熱で視界がかすむ、世界が回るような感覚を覚えて彼女はガクリと膝から倒れた。

それを抱きとめたのは玄桐だ、意識のない彼女をベッドへと寝かせ静かに見つめる。

「人とはどこまでも哀れな生き物ですね」

「お前には分からぬよ・・」

紫鶖は苦しんでる命を見つめ

「命なら一ヶ月もすれば元に戻ろうて、じゃが今受けてる責め苦は数百倍じゃがの・・

命が動けるようになったら連絡をよこせくれぐれも一番にじゃ!」

画面を通して見ていた紫鶖は念押するように男に告げた。

「わかりました、それではこれで今日は失礼します」

プツンと画面が消えて冥獄との連絡は途絶えた、玄桐は口角を上げほくそ笑む。

ベッドで苦しむ彼女を見て「時はもうすぐですよ」

と謎の言葉を残し男は姿を消した。


数日が過ぎ魂達は彼女と話が出来なくなっていることに不安を覚えていた、今彼女にとっても同じ事だが今は出来ないそんな不安が魂達を不安定にさせていくそれは拭いきれない闇となって・・

それでも彼女は一つの魂の憂いを拭うため今は必死にあの女性の責め苦を一人で負っていた、その現状は地獄そのものだ、肌は荒れ皮膚がはだけ身体中血だらけその上高熱が続きほぼ彼女の意識は無いに等しく虫の息だった。

魂達はそれぞれに思い願った、早く彼女と会話がしたいと祈りを捧げていた。

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