〜戸惑い・子猫?〜
不思議の国への階段を出ると、月が綺麗に光る
双葉は変わらぬ笑顔で
「ごちそうさま、外は寒いねー」
と、寒そうに震えている。
その意見には激しく同意で
「暖房の効いた部屋のありがたみが分かる」
と、軽く返答してしまった。
[さよなら]の時間だ
その事実に気づく前に双葉は言った
「じゃあまたねっ」
僕が一言返すより前に、君は走っていってしまった
(夢だったのかなぁ)
突然の出来事に、僕は何もできずただ帰路に着く…
部屋につき暖房をつけた時、双葉の顔を思い出す
(ちゃんと双葉も帰ったのかな)
君はそもそも、なぜいつもあの場所に座り込んでいたの
なぜいつもの場所なのに、いつもと違う表情だったの
なぜ、こんなおじさんの何気ない一言に反応したの
なぜを考え出したらキリが無かった
頭の中は[なぜ]だらけ
体は走り出していた。
外はまだ寒い当然だ
月はまだ綺麗に映っているんだから
いつもの場所に着いた時
いつものようにしゃがみ込んでいる
「や、やっぱりここにいたんだ…いったぁ」
普段走らないのに慣れない足で頑張って
走った結果、足をつる始末
でも、居た
見失ってしまう前に見つけることが出来た
「どうしたの!?」
目が点とは言い得て妙だ
というか、実際に見るとこんな感じなのか…
双葉は驚きを隠せない様子でこちらを
見上げている。
「君がまだ帰っていないような気がして」
「気づいたらここまで走ってた」
嘘偽りのない真実だ
「意味が分からないよ…」
自分でも分かってないんだ
「でも、私を探しに来てくれたんだ…」
「…ありがと」
涙目になる君を見て
僕も涙目になってしまった。
お互い泣いているのか笑っているのか
分からない状態での談笑だったけれど、
時間はあっという間に過ぎていった。
気がつけば今日が終わる時間
「そろそろ帰らないと、もうこんな時間だよ?」
双葉はいつまでここにいるんだろう
いつも通りすがりに見るだけだったから、
あまり深く考えた事がなかった
「んー、まだ帰らなくてもいいかなぁ」
その言葉にどんな意味があるのか
何を考えているのか知りたかった。
「家帰りたくないの?」
今思えば、デリカシーもなにもあったもんじゃない
「1人になると悲しい気持ちになるからさぁ」
君は一体何を抱え込んでるいるの?
僕が少しでも支えてあげたかった
「普通に心配なんだけど…」
ボソッと呟いたような一言
他に何を言ったら聞いてくれるのか分からなかった
「そんなに心配してくれるなら」
「一緒にいてくれる…?」
理解不能だ…
アラフォーのおじさんに言うべき言葉ではない
「はい?」
頭の回転は追いつかず、疑問が口から溢れた
「だーかーらー」
「そんなに心配なんだったらうちに連れ帰るのが
1番簡単で安心するじゃん?」
君は捨て猫かなにかですか?
「君は捨て猫かなにかですか?」
人は頭の中に浮かんだ事をそのまま言ってしまう事が
あるんだって事を初めて知らされた
「そうだにゃーん♩」
「家はあるから旅猫だにゃーん♩」
にゃんにゃんにゃんにゃん
うるさいんだよっ!
可愛すぎだろがっ!
そんな言葉遊びをしている時間にも、時間は過ぎていく
「双葉さんはどうしたいと思ってる?」
「家に帰りたくないってのはわかったけど」
もう一つ頭の中では分かっているものもあるけど、
決して自分からは言わないって決めたんだからっ
「んー、総二さんに拾われるのが1番丸いかな?」
出てしまった、後にも先のも進めない鉄板パターン
「その発言は危ないからやめなさい」
わずかな善意で止めようとする…が
「総二さんがだめだったら日本は終わりであります」
よくわからん押し付け設定に完全に押し負けている
押し問答に勝てる気がしなかった…
「じゃあ今日はウチで寝なよ」
「納得はいかないけど、心配が勝つ」
「やったー!大勝利」
「総二さんにだから、聞いてみたんだからっ」
心底他の人にはそんな事は言わないでくれ
頼むよっ 男はそんな言葉投げかけられなら
返事は一つしかないんやで…
うちに帰宅途中、小腹が減ったからお菓子を少し
って寝るんじゃないんかーい!
つまみながら寝しちゃうパターンにゃ
猫が乗り移ったようである
そんな事はなかったように、君の第一声は
「暖房効き過ぎ、偉大でありがたーい」
初めの方の言葉ひろってくるんかいっ
ちょい辱めにあったような感じ
まったく誰に似たんだか
ベットに潜り込んであっという間に寝てしまった。
不眠症の僕への当てつけなんだろか…
こうして謎の子猫と一時的に過ごすことになった
家には定期的に帰ると言っていたので一安心
僕はソファーの上で寝ることにした。
流石に一緒のベットでは抵抗感が…
君はさも当たり前のように呼んできたけど、
これは譲れないぼくなの唯一の良心なんだ。
「おやすみなさい、今日は突然のことばっかりで驚きを隠せないけど、総ニさんのおかげで1人で居ないですむ」
君のその言葉が僕の行動に意味をくれたことがうれしい
「双葉落ち込むこととかあったら、」
「早めに相談するんだよ」
「部屋はいつでも暖房つけておくから」
1人のおじさんと双葉の不思議な同居?