83話 ギターとゲームセンター
翌週 火曜日 関内
ya yaはリハーサルスタジオに入っていた。
曲は〝エイリアン〟と言う詞で、内容に関しては
ピンクレディの〝UFO〟のオマージュになっていた。
演奏が終わり美々は、「茶番よ!時間またちょうだい!」とリハーサルスタジオを出て行ってしまった。
ベースの幸は「悪くないと思うんだけどな〜まあまあで」と言うが、
菜々は「デジャブ?」琴美「デジャブだわ、先週とまったくいっしょじゃない?」
そう言って楽器隊だけでリハを続けた。
美々は真っ直ぐ家には帰らなかった。
桜木町まで、電車で移動し目的ないままフラフラしていた。
すると、東横線の改札から長髪の〝ギブソン〟と書かれたレスポールらしきハードケースとやたらデカいバッグを持った青年とすれ違う。
美々はなんとなく気になって後をつけてみた。
時間は22時を回っている。
青年は馬車道通りの角にある、ゲームセンターに入った。
バレないよう美々は様子を伺うと、100円玉を沢山両替している。
美々は特にタイプという訳ではないのだが、
何か引っかかるものがあった。
青年はギブソンのギターなどお構いなしに立てかけ
バッグも無雑作に置き、ゲームに興じている。
どう見てもプロには見えなかった。
歳も19、20くらいであろう。
結局、青年は閉店12時までゲームをやっていた。
美々がそばを通るとバッグに足が引っかかってしまい、中から、大量の譜面がでてきた。
それは、手書きのような物もあったし、
コピーされたテキストのようなものもあった。
美々は「ごめんなさい!」
と言って散らばった譜面を集める。
青年は「あっ、大丈夫」と言って譜面を適当にいれた。
青年はギターケースとバッグを抱えて伊勢佐木長者町の方へ消えて行った。
美々は家に帰ると家族が心配していたが
大丈夫と言って菜々の部屋へ入った。
リハーサルの後に起きた出来事を菜々に話す。
菜々は、「普通のバンドマンなんじゃない?」と
ありきたりの事として扱ったが
美々は「なんか違うのよ雰囲気が思いつめてるって言うか?深刻っていうか?
菜々!次は〝ミステリアス・ボウイ〟でいくわ!
ビートルズの〝ダーリン〟みたいな曲書いといて!私は詞を書くために、明日も桜木町いくわ!
よろしく!」といって、出て行った。
菜々は「簡単に書いといてって言わないで!」
と言い返した。




