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ドミナントフレンズ  作者: 霞 芯
72/119

72話 ノッポの場合

ノッポはバンドサバイバルの収録を終え、例に漏れず打ち上げを行い、明け方まで呑んだ。

起きたのは月曜日の午後だった。

アパートの台所へ行き、コップで水を2杯飲む。

「さて」そう言って畳の上にあるテーブルに向かい

レスポールJrをちょこんと膝の上に乗せ、

コードをいくつか鳴らす、ペンを持つ

またコードを鳴らす、ペンを持つ。

それを小一時間繰り返すが、一向に〝これ〟といった曲はかけなかった。

たまに、ギターの〝オッさん〟も曲を書いてはいたが、〝イエローキャブ〟の作詞作曲はノッポが

担当していた。

野球とファンク

サッカーとファンク

バスケとファンク

どう考えを巡らせても、納得のいくものは、かけなかった。

夕方になり、焼き鳥屋開いてるな?

と思い、ノッポはまた酒の誘惑に負けてしまった。

ノッポは大学生だったが学校には殆ど行ってなかった。

留年も確定的でこのまま就職し社会人になる、と言う選択肢は頭隅っこに追いやられていた。

ジーンズにスカジャンと言う格好で、ヨレヨレの

千円札2枚をクシャっとポケットに突っ込む。

アパートの階段を降りて南六郷商店街へと向かった。

馴染みの焼き鳥やに入りウーロンハイと焼き鳥を

数本注文する。

馴染みの客から「ノッポ!今度テレビに出るんだって?」と冷やかされる。

「大したことないっスよ」と軽く流す。

ノッポの頭の中は作曲の事で一杯だった。


酔いも回ってきたところ、テレビでは、プロレス中継が始まっていた。

「おい!そこだ!やれ!」と焼き鳥屋はプロレスで熱くなっている。

「おいハンセン!ラリアットだ!」

〝ラリアット〟ノッポの頭に響くものがある。

プロレスってスポーツだよな?

「ラリアットだ!」

ノッポの中で ラリアットとファンクという図式が

できた!

ノッポは慌てて会計をし、

ギター目指して小走りにアパートへ戻った。

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