42話 菜々と美々
菜々は、お風呂上がりに黒の下着姿でベッドの上に横になり天井を見ていた。
考えていたのは、〝風〟の事である。
自分の中で〝風〟に対しての思いが整理出来ていなかったのである。
菜々にして見れば三つ歳下の中学生
高校生の菜々にとっては、子供である。
だが、中野サンプラザの楽屋で風とギター談義をしたのが、とにかく楽しかったのである。
菜々は、恋の3つや4つはしてきた。
でもどれにも当てはまらないのである。
まず自分の大好きな〝ランディローズ〟の事を
あれ程理解してくれる人は、菜々の周りには、いなかった。
〝盟友〟それが一番しっくりくる関係だったが、
風とギターの事を喋る想像すると胸がドキドキするのである。
「なによアタシ相手は子供」
その独り言が自分を納得させる〝お呪い〟のようになっていた。
そこに、ノックをして、美々が入って来る。
「菜々!またボーっとして、どうせ〝キャンディ〟のギターの事考えてたんでしょ!だって受話器いっつもジッと見てるもの、隠したって私にはわかるの」
そう言って寝転ぶ菜々を上から見下ろした。
菜々は、身体を起こし「違うよ!デビューの事考えてたの!」そう言って風のことから、話をそらした。
美々は、「あたしは、アメリカンレコードが一番いいと思うんだけどな!好きにやっていいっていってたし、まあ小さいレコード会社だから、苦労はするかもしれないけど」
バンド〝ya ya〟には、デビューの話が3つ来ていた。
リベンジをしたいキャンディにとっては、残念だが
来年の今頃〝ya ya〟はプロになっているであろう
状況だった。
美々は、「それよりさ!キャンディのギター 風くんだっけ?どうして電話番号聞かなかったの?」
菜々は、「別にそんなんじゃ無いって!ギターの深い話が出来る人が今まで周りに居なかったから
新鮮だっただけ!電話かかってこないんだから
仕方ないじゃない!私は、ギターの話をしたいだけ!」
「ムキになるところが怪しい!ねぇねぇあの子
童貞かな?奪っちゃえば?」
「美々!いい加減にして!」
そう言って枕を思いっきりなげた。
美々は、逃げながら「連絡とりたいなら、ファンレターでも書けば?」
そう言って部屋から逃げた。
菜々は、ファンレターを書く、それが現実味を持つほど風の事を考えていた。