38話 余韻
中野サンプラザ 閉幕後 楽屋にて
〝バンド エクスポ〟ティーンエイジ部門は
〝ya ya〟と〝キャンディ〟の2バンドの痛み分け
と言う結果に終わった。
〝ya ya〟の美々のところには、何人かの〝業界〟関係者が押し寄せていた。
咲と玄のところにも、県大会の時に電話番号をくれた〝MCプロダクション〟の社長 上川英二が訪れ何やら話ていた。
レスポールを仕舞う風のところへ、菜々が来た。
菜々は、「引き分けだね」と美しい微笑みを投げかけた。
風は、「いや、僕の負けですよ菜々さんがベストギタリストじゃないですか ランディローズみたいで
凄かった」
菜々は、「私は、高校2年よ!風くんは、中学3年でしょ!すぐ抜かれちゃう!」と謙遜した。
菜々は、これ私の電話番号と風の手にメモ用紙を
握らせた。
「じゃあ また」と菜々は、髪をかき上げた。
風も「じゃあ また」と言って握手した。
ライバルというには、あまりに、甘い危険な香りが帯びる関係であった。
側にいた良は、「いいのかよ 又ビンタだぞ」と
風に忠告した。
風は、「そんなんじゃないよ ライバルだよ 来年は〝ya ya〟に勝つ!」
そう言ってレスポールを背負った。
咲と玄が上川と話を済ませて皆んなのところへ戻ってきた。玄は、簡単に言うと練習生にならないか?との誘いだと伝え、後で相談しようと言った。
キャンディのメンバーが、ロビーに出ると
応援団がまだ残っていた。
それぞれ、祝福を受けた。
「やったな〜」「すげ〜よ」
ロビーは、笑顔につつまれた。
例にもれず、良に桜木美香が抱きついてくる。
美香は、「告白するならもっと〝ロッキー〟見たいにやって」と注文をつけたが涙ぐんでいた。
キャンディのメンバーと桜木美香は、
鷺沼大介サギの父が用意した車に乗り込み 近くで食事をする為に会場を出た。
風と咲は隣に座っていた。
2人の手は、固く握られていた。




