15話 アボガド
サギの加入から2ヶ月が過ぎようとしていた。
突っかかっていたリードパートの
俊から風へのアドバイスは、無理に速弾きするなであった。
コードの構成音、スケールをアウトしなければ
大丈夫というものであった。
また、速弾きができるように、指のエクササイズも教えてくれた。
ようやくメリーアンがなんとか、最後まで演奏できるようになった。
ただ、相変わらず咲はベースをぶら下げているだけの時間の方が長かった。
良が、「そろそろ由美ちゃんに聴かせてもいいんじゃない?」
そう切り出した。
風も口にはださなかったは、バンドの様子は
交換日記でしか伝えていなかった。
咲も最初の約束の手前嫌とはいえなかった。
サギは「最初のファンがくるのかいエレガントで
まるでアネモネってことだよ」
「だから、意味わかんないって!」
良のツッコミもお決まりになっていた。
次の土曜日に有村由美 風の彼女を呼ぶことになった。
12月末土曜日
咲、良、サギが工場に到着すると
そこには、風の側に椅子にチョコンと座る
由美の姿があった。
風と楽しそうに話している。
その時点で咲の心は、かき乱されていた。
いつものように4人は、セッティングを始めた。
それでも風と由美の姿を見ると爆発しそうな
咲がいた。
咲は自分でも、感情の理由がわからずコントロールてきなかった。
いつものように良がカウントをとった。
演奏が始まると由美は、満面の笑顔で驚いた。
咲は心なかで、〝どうよ?!〟と自慢げに思った。
ベースは弾いてなかったが、その油断が
歌詞がわからなくなり、自慢の歌の音まで
外してしまった!
その瞬間悪魔のいたずらか?笑っている由美を
見てしまった。
咲は、馬鹿にされていると言う被害妄想に侵され
そからは、ボロボロだった。
演奏が終わり、よくわかってない由美は
拍手喝采した。
メンバー4人は皆最低のデキだということがわかっていた。
咲は、思い詰めた表情をし、ベースを置き、
アンプの電源を切り、
「あたし、脱退するわ!才能ないから」その表情は〝ツッパリ〟咲になっていた。
そしてすぐに走って出て行ってしまった。
皆は「咲!」と声をかけるが振り向きもしない。
サギは「これじゃアボガドだよ!」
と言って咲を追いかけた。
良は、頭を抱えている。
風は、訳がわからず怯える由美を宥めていた。
咲 脱退である。




