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ドミナントフレンズ  作者: 霞 芯
117/119

117話 仕事

風と咲は、稲毛駅で電車を降りタクシーに乗り、運転手に〝千葉脳神経外科〟と行き先を告げた。

咲は「運転手さん、スピード違反してとは言えないんですけど、お母さんが手術なんです!お願いします!」と前の席にかじりついて、懇願した。

風はというと、震えていた。

自分の元気な母親は永遠にいるつもりでいた。

まさか、突然の出来事に、人生の不確定さを痛感していた。

学校からかえれば、「また、ギター?」と笑って見守ってくれていた母親の存在は絶対的であった。

タクシーは、咲の意をくんでくれ、国道16号線をとばす。

千葉脳神経外科の表門につき、咲が素早く支払いをすませ、風と咲は受付に向かった。

風は、「横山と申しますが、母が手術なんです、どこで行われていますか?」と聞いた。

声は震えている。

受付の女性の方が案内してくれた手術室の前には、

風の父、妹の雲、咲の母 上杉和美が待機していた。

妹の雲は、姉のように慕う咲をみると、抱きついて泣いた。

風は、父に「状況は?助かるの?危ないの?」と聞いたが、父、和彦は「まだわからない、脳梗塞という事はきいている、かれこれ、4時間は経つ、もう手術終わってもいいんだが?」

和彦も威厳を保っているが、動揺はさすがに隠せなかった。

手術室前の椅子に5人は座り、ただ待った。

父、和彦は風に、「ライブの次は、明後日の東京だったな?ところで、ライブの出演料は貰うのか?」

風は、「なんだよ、こんな時に、貰う事になってるよ」と伝えると、和彦は「では、お前のギターは

〝仕事〟って事だな?お前の代わりはいないだろう?何があっても明後日はライブにでるんだ!

美枝子もそれを望むはずだ。」

風は、「明後日なんて、わからないよ!まともに、

弾けないかもしれないし!」そう言葉を発すると、

和彦は鬼の形相になり「ふざけるな!お前はもう

責任ある仕事をしてるんだ!お客さんしかり、事務所のスタッフの方しかり、迷惑をかける!穴をあけることは許さん!もし、穴を開けるなら、ギターなど2度とさわらせない!」そう言ってじっと前を見た。

風は生唾を飲んだ。

沈黙が訪れる。

それから暫くして、手術は終了した。

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