114話 アカペラ
中台さんの息子とただニイは大阪〝ナバナホール〟を目指した。
途中渋滞もあり到着したのは、19時を回っていた。
到着すると、ただニイは楽屋へ走りキャンディの メンバーに楽器を運ぶため声をかけた。
「みんな、すまねえ!楽器持ってきた!状況は?」
玄が「今、イエローキャブのメンバーが場をもたせてくれてます、合図をします!」と答えると、
皆一斉に楽器の元へはしった。
玄は袖からノッポへ〝オッケー〟の合図をだした。
ノッポは理解し、「最後の曲です!ラリアットだ!」とエンディングに向かった。
イエローキャブもレパートリーをほぼ出し尽くし、
ギリギリであった。
ラリアットが終わり、歓声があがる。
場内は500人の観客で満杯である。
風はただニイに、「どうやって楽器とりかえしたんですか?詳しいこと聞いてなくて」とトラックから降ろしながら聞いた。
ただニイは「こちらの中台さん親子のおかげだよ」
そうとだけ言って楽器を運ぶ。
転換になり、ただニイは名誉挽回とばかりに、必死にセッティングする。
玄が「咲!何が喋って場をつないで!」と依頼すると咲はマイクに向かった。
「皆さん!こんばんは えっと、楽器盗まれちゃって遅れました えっと、えっと」
咲はもともとMCは得意なほうではなく、詰まってしまった。
会場が戸惑う。
咲は「わかった!歌います!えっと 〝翼をください〟です」
そう言って、一呼吸置いて、〝翼をください〟を アカペラで歌い始めた。
会場はどよめきがおきたが、すぐに咲の歌唱力に
息を呑む。
セッティングするメンバーも聞き惚れて手が止まってしまった。
2番になると会場のお客さんも歌いだした!
〝翼をください〟の大合唱である。
歌い終わり大歓声が起きた。
すかさず、玄がビートを刻む!
〝フレンズ〟である。
会場内は一気にヒートアップした。
袖にいた、ただニイは安心してへたり込んでしまった。




