112話 値踏み
風達キャンディのメンバーは、新幹線の中にいた。
衣装など手荷物は無事だったが、楽器類全てハイエースの中であった。
〝自分の楽器ではない〟と言う条件でのライブは
メンバー全員困難に思えた。
上川、石黒、ただニイは、名古屋に残り警察の事情聴取を受けていた。
ただニイは、鍵の行方をはっきりと覚えていなかった。
昨日、打ち上げ前に、鍵を挿しぱなしにしてしまったのか?落としたのか解らなかった。
ただニイは上川にひたすら謝ったが、上川は笑いながら「大丈夫だなんとかなる。」とただニイを励ました。
上川の心情もただごとではなかったが、自分が、皆を率いるリーダーとして、トラブルに対して、冷静にポジティブに対応しなけれざならないと言い聞かせていた。
名古屋 とある質屋
店主は、「ふむ、ふむ、いいギターだな、だが
〝ギブソン〟じゃな!〝グレコ〟だったら20万はくだらんが‥残念じゃがせいぜい、2万だな!」と
〝カマ〟を掛けた。
それは店主がパンチパーマの男にあまりに、につかわないからである。
ギターの手入れといい、ストラップに染み込んだ汗といい、昨日までバリバリの現役のギターであるのは、明らかであった。
店主は、〝盗品〟であると思っていた。
パンチパーマの男は、「そうだよな!ギブソンだもんな!俺もグレコが欲しかったんだが、手が出なかったんだよ!」と話を合わせる。
〝盗品〟であると確信した店主は、「おっそうじゃ
さっき、高額のものを買い取ってしまってな!
あと、ベースやキーボードも見とくから、お茶でも
してきてくれ!ちょいと銀行に行ってくる まあ 1時間後位にきてくれ!」そう言って男を追い返した。
男は「わかった、1時間後だな?飯でも食ってくるよ」そう言って店を後にした。
店主は男がいなくなるのを確認し、警察に問い合わせの電話をした。
警察署にて
事情聴取を受けていた上川達のもとに、「楽器が売りにだされたかもしれませんよ!」と警察官から
知らされた。
上川とただニイは刑事に同行し、持ち込まれた
質屋に急行した。
質屋に着いた刑事と上川達はただニイに、楽器を見てもらった。
ただニイは、「これ、風のレスポールに間違いない!キズの位置と言い、弦の張りかたと言い間違いない!風のレスポールだ!」
それを聞いた刑事は、上川達を警察の車両に待機させた。
その後、まんまと戻ってきた、パンチパーマの男は
刑事に事情を聞かれ、警察署に連れて行かれた。
上川、石黒、ただニイは時計と向かい結果を警察署でまった。
時間は午後3時を回っていた。




