110話 JAZZ
恵子とサギは、ジャズの流れるレストランへ入った。
その店はどちらかと言うと暗い照明で所々にあるランプを頼りに、案内された席に着く。
恵子は「今日は私の奢りだからね」そう言ってメニューの一つをサギに手渡す。
恵子は、蟹のドリア、サラダ、ワインを注文しサギもワイン以外の同じものとコーラを注文した。
サギは、恵子の様子がいつもと違うように思えた。
千葉から離れた場所のせいか、店の雰囲気のせいか、可愛らしく見えた。
まず、飲み物がテーブルの上に並ぶと、サギは乾杯をしようとコーラのグラスを手に取った。
すると恵子は「待って、先に話があるの」そう言って姿勢を正す。
サギは、どうしたのだろう?と疑問に思ったが言われたとうりに、グラスを置き待つ。
やや、暫くらし、恵子らしからぬ様子でモジモジし、深く息をして、話始めた。
「今日ね、不倫の関係を清算してきました。別れてきました。充君、私と交際してください!」そう言って頭を、下げた。
サギは何がおきたのかと把握できずに、聞き返してしまった。
恵子は、いつもの様子にもどり「何?2回も告白させる気?」と甘い笑顔でサギを見る。
サギは、そんな時なんと言葉を返せばいいかわからなかった。
「あの〜あの〜 僕と付き合ってください!」と 告白に告白でかえしてしまった。
恵子は思わず笑ってしまった。
続けて、「はい 彼女にしてください。ありがとう」そう言ってサギの手を握った。
サギは嬉しくて、舞い上がっていた。
ハンサムな顔立ちがクシャクシャの笑顔である。
2人はグラスを取り乾杯した。
料理が運ばれてきて、2人は甘い食事のひと時を過ごした。
恵子は、このあとワインのボトルを一本空けてしまい、サギの介助なしでは歩けないほど酔っ払ってしまった。
店をでて、サギがタクシーを拾うと、恵子は「酔っ払った彼女を、交際一日目からほっとかないで」と言った。
サギは恵子のとってあるホテルまで同行した。
ホテルのチェックインカウンターで恵子は鍵を受け取りサギと共に部屋へ向かう。
エレベーターで、恵子はおもいっきりサギに 〝キス〟をした。
サギも恵子を抱きしめる。
恵子とサギはエレベーターが目的階に着いてもキスが止まらなかった。
部屋へ入ると〝ダブル〟の部屋だった。
そのまま、二人はベッドへなだれ込んだ。
サギは恵子という〝花〟の中へ溶けていった。
翌朝、早朝 サギは皆が泊まっているビジネスホテルのロビーにいた。
独り缶コーヒーを飲み、まだ薄暗い外を眺めていた。
甘い息を吐き、唇に残った恵子の感触を確かめていた。
サギは〝男〟になった。




