107話 名古屋
3月末
キャンディとイエローキャブのメンバーは朝6時にMCプロダクションに集合していた。
キャンディのメンバーは鷺沼大介の送りで中目黒まできていた。
名古屋の〝eli〟というライブハウスでライブをやるためである。
一行は、その日は名古屋に泊まり翌日には大阪に移動となっていた。
移動手段は車で、キャンディのメンバーは、MCプロダクションのハイエース、イエローキャブは上川がレンタカーを借りてくれ、2台での移動となる。
イエローキャブの方は運転手が多数いたため、問題はなかったが、キャンディのほうは、ただニイしかいない。
そこで、イエローキャブから〝オッさん〟が運転手として、キャンディの車の方へ乗ってくれた。
上川と、スタッフの石黒さんという女性は、新幹線で来る段取りとなっていた。
ノッポは玄に新ドラマーの立花秀樹を紹介した。
玄は「山倉玄です、宜しくお願いします!」
と挨拶すると、秀樹は、「こちらこそ〜」と茨城訛りがでる。
玄は心が和むが、秀樹のドラムを聴いて顔色を変えるのは、数時間あとのことである。
キャンディとイエローキャブのメンバーは、楽器と共にそれぞれ乗り込み名古屋を目指す。
ハイエースの助手席にはオッさんが座る。
最初はただニイの運転である。
首都高速を順調に抜ける。
オッさんは饒舌である。
今までのバンド経験などを面白おかしくキャンディの皆に話した。
調子に乗ったオッさんは、ポケットから、〝ウィスキーボトル〟を出して飲んでしまった。
ただニイは、「オッさんさん、いま何飲みました⁈」と問いただす。
オッさんは「いけね!酒飲んじまった!」
「オッさんさん!」「オッさんさん何やってるの!」とキャンディのメンバーからも非難を浴びる。
ただニイは、「もう!オッさんさん!運転手で乗ってるのに!」
オッさんは「悪い!飲んじまった。大阪いくときは運転するよ!」と対して悪びれる様子もなく喋り続けた。
一行は、名古屋へ約6時間かけ、到着した。
〝eli〟の前にハイエースをつけると、
そこには、玄の〝追っかけ〟林 文子が一人で待っていた。
玄は文子に気づき話しかける。
「密漁やってないよね?」
文子は真剣な顔色をして、ブルブルと顔色を横にふる。
文子は「今日は楽しみにしてます!」と玄に紙袋のプレゼントを渡した。
玄は礼を言い。楽器運びを手伝った。
あとから、玄が紙袋の中身を見ると中身は〝海苔〟
だった。




