106話 卒業式
3月中旬 村上中学校にて
風、咲、良、サギは中学校を卒業する。
中学に入学して、〝ひまわり〟で俊に出会い、音楽に明け暮れた3年間であった。
キャンディのメンバーは、様々な体験をし、中学生中心とは思えないほど活躍をした。
ドキュメンタリー番組が卒業時式にくるほどである。
学校の中でキャンディを知らない者はいないのは
当然ながら、付近の学校や父兄まで巻き込んでいた。
卒業式は、一学生として、参加する4人であったが、周りはそうは見ていなかった。
将来はバンドで成功するに違いないという期待を
キャンディに背負わせていた。
式は、無事閉幕した。
おのおの卒業証書をもらい下校する。
そんな様子をカメラは追っていた。
テレビ局の人は、誰かにキャンディの事をインタビューしたいと考え、よりによって有村由美と荒井に声をかけた。
テレビ局の人は、有村由美に「キャンディの事は知ってますよね?」と聞いたが、知ってるも何もである。
由美は、「ええ、知ってます、応援してます」と気丈にも答えた。
さらに「キャンディの中で誰が好きですか?」の問いに荒井がキレた。
「誰が好きも何も、この娘はねえ!」
それを由美は遮った。
「ギターの風くんは、人気があるから良くんかな?」と答えた。
テレビ局の人は「最後に、キャンディにメッセージお願いします!」といわれ、
『頑張って!応援してます!』と泣きそうな由美と
ふくれつらの荒井が画面には、映った。
由美と荒井は体育館の裏にいき、泣く由美を荒井が
慰めた。
「よく頑張ったね!支えた元彼女って言ってやりたかったよね!」と荒井は言うが、由美は顔を左右に
振り、「だって、だって‥」
それ以上は言葉にならなかった。
風は後にテレビの放映で由美の事を知る。
だが、いまさらかけられる言葉も、ありがとうの一言も伝えられなかった。
キャンディは中学校を卒業した。




