第二十一話 隠せない本質と感情と
触れられた両肩からピリピリと微弱電流が流れるように、自分以外の魔力が身体に回っていく、痛くも気持ちいい感覚に身を委ねている。
「あ゛ぁぁ…肩のコリがぁ…」
「黙っていれば見た目はマシなのに…本当に残念な中身だ」
「うっさい、です…疲れがぁ溶けてくぅ……」
疲れといえば…
最近、スペルビア様やグーラくん達の遊びに来る回数が減ったが、一度研究室に入り浸ると、ブルーム様が雷を落とすまで常備しているお菓子を食べて、癒しが足りないと言いながら私の膝枕を取り合っていた。
ショウは日々の鍛錬で体力も筋肉もついてきたが、未だに素振りの後は自分で腕や肩を揉みほぐしている様子を見掛けるし、アンズちゃんも聖女の力を使い倒し、疲れが溜まっているようだった。
私にもなにか、出来ることがあれば…!
「そうだ、低周波治療器作ろう」
だとすれば、最低限必要なのは筋肉をほぐす程度の電気…それと、力を微量且つ一定の強さに保つ事のできる制御装置となる物で、スイッチも必要となると…作れない事もないけど、それじゃあ使用できる人を選ぶようになるから……それだったら、魔力操作の上手い魔道士団の人が魔力でコリをほぐして回った方が、手間と時間が掛かれど圧倒的にお手軽なのでは?
「…また、新しい魔道具のアイディアでも思い浮かびましたか?」
「そうじゃなくて、誰でも気軽に出来る楽なマッサージを…んぇ?魔道具…?」
確かに言われてみれば、治療器具の魔道具は大半が富裕層か医療関係者にしか使われていないけど…魔力節約の魔法陣を安定感重視で多少簡略化しつつ描き換えて、お手本のスクロールさえ仕上がれば…流行に敏感な購入者の商売人や魔道具職人が解体して描き写して広めてくれるだろうから、次第に安値で市場に出回るかもしれない。
オンオフの切り替えのみなら通電しないカバー内部に真似しやすい導線を組み込んで雷属性の魔石に繋げればいいし、魔石だけ使い捨てにして取り替えられるようにすれば食い扶持に困っている駆け出し冒険者の助けになるかもしれない…!
「ありがとう、ございます…ヨイヤミ様のお陰で、脳内の設計図はほぼ完成しました…」
「お気持ちでしたら、安全性が確認された後にその魔道具一式を。個人用に一つ頂ければ結構ですよ」
「提出期限は無しで良いなら、原価でお譲り可能ですよぉ…」
〜〜〜〜〜
魔力回路の修復治療。
ひとくちにそう言っても、その修復に掛かる労力はピンキリだ。
簡単なもので言えば、子どもが上手く魔力を放出できずにできた、魔力溜まりの吸収がある。
それの解決法は至ってシンプルで、魔力の内包量が多く、魔力操作の経験に長けた者が、双方合意の上で攻撃魔法でもある吸収魔法を使用し魔力を適度に吸収してしまえばいい。
魔力を使い切った空っぽの魔石を、数日間肌身離さずに過ごすという効率は悪いが安上がりな方法もあり、貴族以外の民間療法として広く知られている。
魔力切れの魔石ならば魔道具のある環境であれば有り余っているだろうし、無ければダンジョンに潜り魔物を狩れば魔石を手に入れられる。
頼れる存在もダンジョンに潜るには力量不足な状態も揃った最悪のケースでも、冒険者ギルドにて魔石の魔力充填の依頼を受ければ問題ないだろう。
少なくとも、スペルビア様の支配地域内では、常に空の魔石が魔力溜まりへの対応用として、無償で各地に配給されている。
閑話休題。
一方で、私の魔力回路の修復治療の進み具合は…回復したとは言い切れないのが現状だ。
ヨイヤミ様の魔法に対する知識と魔力操作の繊細さは、魔族のなかでも頭ひとつ抜きん出てる。
それに私の魔力回路が異常をきたしている部分は、数こそ多いものの、個別に見れば一日足らずとして治っていた事だろう。
スペルビア様の魔力を他者のものと識別し、スクロールに魔法陣を物に組み込み魔道具を作り研究している以上、私自身の魔力操作に問題は無いとヨイヤミ様には断言された。
というか、ぶっちゃけた話で言えば、私の魔力回路は健康体の魔族と比較しても引けを取らない程、スムーズに魔力が流れているし、意識すればその流れに多少の緩急をつける事すら出来ているらしい。
だがそれでも尚、魔力を放出できないままなのだ。
先ず浮かんだ要因は、異世界での精神的苦痛によって生まれた、私の心による無意識下での魔力放出に対する拒絶反応。
だが、私は机上論では理解しているであろう魔法や魔術を行使出来ない現状には不服を抱いており、今はより高みを目指してスペルビア様の傍に仕えたいという、実力主義の魔族らしい合理的な思考を持ち合わせていると豪語できる。
よって、この可能性は限りなく無いに等しいだろう。
然し、精神的な理由はこれ以上では思い浮かばず、肉体も鍛錬により自身の魔力量に耐えられる程度にはなっている。
となると、可能性は限られ全ての憶測は同じ結論に至った。
前例の無い事態であり、現代の治療法では安全に修復治療を行う事が出来ない。
だから私はヨイヤミ様に声を掛け、生きたままの魔族に対する新たな魔法による医療の進歩に協力をするという名目のもと、被験者となる事を望まれ、承認した。
因みにだが、私へのメリットの前払いもあり、魔導士団で使われる魔道具の余りの分解及び改造の許可を得た。
施術のやり方によっては、私の命はいつ散ってもおかしくないらしいから、被験者に対する最低限のマナーらしい。
などと…現在に至った経緯を思い出していた。
そんな最中、二つの魔力が聞こえた。
*****
スペルビア様から取り上げて食べた、錬金術によってさも簡単に作られた、濃灰色のビー玉のようなジャリジャリ食感の謎の球体。
アレは如何やら、最初から私に食べさせて身体を瞬時に魔族へ作り変える為の飴玉の試作品だったらしい。
…はい。ココは完全に、私の落ち度でした。
でも、話の全貌を聞く前に飴玉の試作品の原材料を聞き、私は気を失った。
材料は今でも覚えているので、試作品の今回で例えてみると。
先ず、対象の身体の中を流れる魔力と相性の良い、新鮮な魔力を多く含んだ血の中に、その血の持ち主の魂を圧縮凝固させて作れる魂の欠片を地獄の業火かそれに近しい魔法で溶かして、肉体以外を一つに戻した血生臭い人工魔石を作る。
この時点で、かなり吐き気がする。
私が食べたアレは、魔族の農家の畑に棲みついた、全ての農家の天敵で害獣だとも言える、一角ラビットというツノの生えた雑食のウサギだったらしい。
私の知ってるウサギとイメージがかけ離れていたが、意識を取り戻した後は私の一部になってくれた一角ラビットに黙祷を捧げた。
話を戻し、今度はこの世界では高価な貴族や王族の嗜好品に少量使われるのが常識の白砂糖をこれでもかと豪勢に入れて煮詰め、魔力を混ぜ込み飴玉を作る。
そして対象と血と魂の提供者が生前好きだった共通の物を探し出しーー今回の場合はにんじんだったーーそれを液状化させたものと、魂の欠片から滲み出る身体能力などの遺伝子情報の入った液体と、水分や不純物などのそれ以外に分ける為、蒸留機に数日掛けて、作成中に混じった空気中に含まれていた魔力と、相性の良い純粋な魔力の入った血を、更に分離させる。
そうしてできた二つの液体を、根気よく魔力を込めて混ぜ続け完成するのが、別名【魂結晶】だ。
異世界から帰還して以来、地球で独自の発達を遂げた知的文化遺産である各国のスイーツレシピを、少しのミスを除き再現レシピとして発信して生計を立てているのだから、覚えるレシピが一つ増えようが誤差の範疇だ。
…でもきっとこのレシピは、忘れられないと思う。
その日は一角ラビットさんのお墓を立てて、にんじんの粉末をたっぷりと混ぜて作った線香っぽい物を作って、煙を立てて研究室に充満させて、輪廻の輪から引き摺り出してしまった彼女の分も、煙を身体に取り込むようにして一日を終えた。
しかしながら本番では、自分が仕えている主人の両サイドのツノをも素材にした飴玉を噛み砕かなければいけなかったかも知れなかったと聞けば、ジメジメと落ち込んでばかりもいられなかった。
閑話休題。
なんやかんやあり、魔族に変化しつつある私の身体は、魔力が放たれると音やリズムで魔法の種類が判別できたり、魔力の元をなんとなくだが、聞き分けれるようになったのだ。
それこそ、毎朝鍛錬を続けていれば、発動するタイミングすらも。
〜〜〜〜〜
最初に聞こえたのは、違和感を覚えるくらいにお手本通りの完璧な聞いた事のある音が複数回別の地点から同時に聞こえ、悪戯の時にスペルビア様が使ってきた事のある魔法そのものを装った、設置型地雷式の…多分、変身魔法のリズムだ。
なぜ直ぐに分かったかと言えば、スペルビア様も含め生き物の魔法や魔術、魔力の放出には異なる特徴があると私は考えているから。
理屈では答えが出せない感情論なのだが、慈愛に満ち溢れた、他者や大地そのものへの敬いを優先する、自爆を躊躇わないような、優しいのに悲しくて切ない旋律…それがスペルビア様の魔力の音。
一方で、たった今聞こえたのは…まるで完璧を追い求める余りに無感情になってしまった、以前と寸分狂わない引用文のような、無機質で単調な音の組み合わせ。
推察するに、魔法の術者がスペルビア様本人の癖を意識して真似するあまり、使用する度に鑑定書の付いた贋作を見せ付けられているような感覚で、愛情が微塵も感じられなかった。
然しその思考を遮り、爆裂するように聞こえたのは、紛れもなくヨイヤミ様の魔力の流れ。
それも、普段は心地良い川のせせらぎと言った感じで、非常に感情を読み取り難いのに、一瞬だけ滝壺のように轟々と響いた後に、小雨が降るように静かになったのだ。
夏場の通り雨のような感情任せの魔力の放出に、不審者の残したトラップも放り出して、たまらず口を開いて聞いてしまった。
「…大丈夫、ですか?」
闇を抱えた笑顔の仮面が得意な、胡散臭い先輩。
正直に答えた私の中の、ヨイヤミ様の第一印象だ。
だけれど、いざ蓋を開けてみてみれば。
「……少し、感傷に浸っていました」
他者の思惑に雁字搦めにされ、それでもなお抗おうとする、至って普通の青年だった。
私に不意を突かれて悔しい事を笑顔で隠しているが、心の声ならぬ魔力の音でバレバレだ。
「集中力の散漫した状態では、感情に左右されやすい治癒魔法は制御するのが非常に困難なのだと、グーラ様より聞き及んだ事があります」
「…よくご存知ですね」
彼の事は最早警戒などするのもやめて、どうやって懐柔しようかなんて考える余裕もできた。
「疲労の溜まっているなかで無理を通し、誠に申し訳ありませんでした」
私が離れて行き場を失ったヨイヤミ様の手のなかに、ローブの下のお仕着せであるエプロンワンピースに入れてきた、抹茶色の粉末が入っているのが灯りに照らされ透けて見える紙の袋の持ち手を握らせる。
「…これは?」
「一時的に身体能力と自然治癒力を向上させる即席薬草茶の粉末で、沸騰させたお湯にティースプーン一杯分入れて混ぜて飲めば、簡易的な回復薬になる出来立てホヤホヤの新薬です。身体能力の上昇する効果時間は一時間と短いですが、新しい傷ならば数分程度で傷痕を残さず、自身の免疫力によって完治できます。特徴としては、ポーションとは違いより効率良く回復するには、熱湯を用意する手間と経口接種をする必要がある。その反面、痛覚を麻痺させ疲労回復効果を売り文句にしている低品質の素材と不衛生な環境下で作られた物や、行軍用の睡眠妨害の副作用のある量産体制の整った劣悪品とは違い、原材料は城の薬草園で育てた薬草しか使用していません。なので、この新薬を連続使用したとしても、一般品質のポーションの成分が主な要因である健康被害に見舞われる恐れは、先ず有り得ません」
自慢の新薬について最低限で語り切り、大きく息を吸った。
と、同時に大きな溜め息も聞こえて、見上げると。
「貴方の想像力には…いつも驚かされますよ」
次の瞬間、ヨイヤミ様の手の中には渡した紙袋は無く、代わりに煮えた沸るお湯が入った土鍋を宙に浮かせていた。
続け様に白い長方形の冷気を放つ物体が風の刃によって小さく均等に切り分けられ、一滴も跳ねさせずにぐつぐつと音を立てたままのお湯の中に沈んでいった。
「…そのような秘薬が、実在するとでも?」
「神の祝福である、生者であれば種族を問わずに癒しをもたらす聖女の魔法以外では代用できないような…身近な例ならば、古傷や肉体の部位欠損などの傷以外は、時間を掛ければ大抵は再生するかと思われますが」
「それ程までの価値があると、あくまでも主張するのですね…」
「はい。事実は事実ですから」
魔法の新たな使い道に感心しながら返答する。
「…そんな事実など、報われるものかっ…!」
それに対しヨイヤミ様は苛立ったように呟きながら、これまたいつの間にか持っていたオタマで煮湯を掬い、あろう事かローブを捲った自分の左腕へ勢いよくかけた。
煮湯を浴びた褐色の肌は一瞬にして赤く腫れ上がり、切れ長な碧眼が痛みに目を細める。
「熱っ…い…?」
数滴飛んできただけでこんなにも痛みを感じるのに、それを腕へ大量にかけた…?
血の気が引いて、状況を理解し始めた私の心の中を、暴れ狂うように怒りと悲しみがごちゃ混ぜになった感情が、私を蝕んでいく。
「さぁ…火傷くらいっ…直ぐに、治せるんでしょう?」
目に余る愚行を敢えてして見せた彼に向かって、激情に任せて叫びたくなるが…僅かに残っていた理性で制して、幾度となく繰り返し練習した、新薬式治療を迅速に進める。
簡単に言えば、自分用に予備で持っていた新薬の余りを全て患部にぶちまけて、荒々しく素手で揉み込み馴染ませているだけだ。
それでも、患部に触れる手のひらはまだまだ熱いし痛いとも感じる。
だが、ヨイヤミ様の感じる激痛と熱に比べれば、私が感じる痛みなど些細なものだろう。
「…腫れはゆっくりと引いてきましたが、少し痛みますね」
「でしょうね」
どれだけ優れた薬を処方しても、馬鹿につける薬はない。
だから、自分自身を傷付ける事の愚かさと痛みを、後悔として記憶に焼き付けさせるように、配慮など微塵もしないで触れているのだ。
「っ…優しさが、欠如しているようですが?」
「患部を刺激する事によって激しい痛みは伴いますが、最高率の回復を促せるようにしているので」
それ以上は何も言わず、理由不明の涙を拭いつつ真剣に治療を続ける。
そんな姿が、愉快だと言わんばかりに笑みを浮かべ見ているヨイヤミ様が視界の端に映って…いつの間にか彼に期待していた自分が、腹立たしかった。
身勝手で自己中心的な考え方から生まれる期待なんて…相手からすれば重荷にもなる事は、とっくに知っている。
私が彼を理解し尽くせないのと同じように、彼も私の事を理解し尽くすことは不可能なのだから、当たり前の事なんだ。
それでも尚、失いたくないとハイペースで脈打つ心臓の鼓動が自分の本心だとは、認めたくなかった。
〜〜〜〜〜
「あぁ、もう治りましたね」
火傷が治った途端、そう言って私を引き剥がしたと思えば、左腕を生活魔法で洗浄して、曲げて伸ばして火傷していた箇所を右手で触り、違和感が無いか確認しているヨイヤミ様を睨み付ける。
「…無から有を生み出し、穏やかに変化を成し得ない水面へ波紋を広げる……無の化け物とは、貴方の為に用意された言葉のようです」
「新薬の性能を身を持って実感して頂けましたか?これ以降は話を聞いて欲しいのが本音ですが」
「こんなバカな真似など、普段なら考えつきもしませんが?」
「そうでしょうね!」
…私はヨイヤミ様が大切な人達の一人だとは明言できないだろうし、今も言動の裏に隠された意図を勘繰ってしまう。
だが、安心したとはいえ床に座り込んだままの私に、手を差し出してくれるヨイヤミ様に、完全に見切りをつけられないのも、また事実だった。
「蒸発一歩手前の煮湯による火傷でも、粉末状の新薬を使った激痛を伴う応急処置により、完全に再生して元へ戻し、魔力回路にも支障をきたすことはない…どうやら、虚言ではなかったようですね」
「私は自分の研究成果を誇張する事はありません」
「…ですが、現在支給されているポーションのようにすぐに痛みがなくなる訳ではなく、戦線への復帰を促すには…少し足りない」
聞いているのかいないのか、悪びれた様子もなく探るような声色に変わったヨイヤミ様が、治しようのないバカなのだと、今改めて再認識した。
「痛みは…簡単にはなくなりませんから」
だから時期尚早だと思いつつも、いつかは言う予定だった言葉を吐き出した。
「…ほぅ?随分と含みを持たせた言い回しですね」
くつくつとヨイヤミ様は笑うが、それに釣られて笑う程楽観的な考え無しになったつもりはない。
その事を理解していて尚見せてくるのだから、彼よりも相手の神経を逆撫でするプロは、今は少なくとも知り得ない。
「先程まで気持ち良く語っていた貴方の知識量ならば、如何にもならなかったとは考え難い」
ヨイヤミ様の碧い瞳に怪しげな薄い赤色が重なって、複雑な紫の魔法陣が双眼に浮かぶ。
然し、私が感じたのは呆れだけ。
「精神干渉系の魔法に耐性があると、以前に話しましたよね?」
「貴方にしては珍しい事に、私にも怒気を包み隠さないものですから…貴方が以前に語っていた物語に登場する悪役の…ちょっとしたごっこ遊びですよ」
悪戯っ子のように微笑んだ表情が、普段の作り笑顔よりも断然似合っていると思い、気持ちが揺らぎ……私は心の中で白旗を振った。
「お答え願えますよね…?」
「確かに回復薬やポーションと比べれば痛みも和らぐだけで、出血量によっては恐怖心によって生死に関わるかもしれないです。だけれど、その可能性を考慮したとしても、痛みを無くさないように、一時的な痛覚麻痺や麻酔効果のある薬効や成分を含むものは、一切配合しませんでした」
「ふむ…詳しく理由を聞いても?」
漸く私を見た見定めるような視線と、私の視線は…噛み合わない。
「痛みがあるから、生き物は踏み止まれるんです」
「…何故貴方は……いえ、続けて下さい」
私の自己満足な正義など、個人的な我儘に過ぎないのだとも、既に見透かしている癖に。
「…生き物は記憶を刻む際に五感を刺激されると、より鮮明にその時を思い出して…忘れられない」
もうこの際面倒だ。
羞恥心など脱ぎ去って、私が腹を括って伝えよう。
「傷は癒えても元通りになる事は、決してない」
怒りを向けても飄々とした態度でいる、目の前の大馬鹿者へ。
誰もが自分の人生の、主人公であると信じることができるよう、いつも画面越しにパワーを込めて執筆しています。




