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15-6:A Boy and the Tiger 下

「……まったく、皮肉だよ。僕は永遠に消え去りたいと思っていたのに、上位存在を取り込んでしまったことで、むしろ永久に消えることが出来なくなってしまったんだから」


 実際の所、消え去りたかった男が永遠にその機会を失ったとなれば、それは最大の罰とも言い換えることはできるだろう。少年の言葉に対し、アラン・スミスは心底嬉しそうに口元を吊り上げて少年の方を見下ろしていた。


「それじゃあ、俺の勝ちってことで良いな?」

「はぁ……こんな世界の果てまで来て、下らない勝ち負けにこだわってるのはどっちなんだい? でも、まぁ、そうだね……うん、僕の完敗だよ、先輩。やっぱり貴方は……僕が憧れた、最高のヒーローだった」


 今の言葉は、嘘偽りのない少年の本心だった。アラン・スミスは、宇宙と共に心中しようとする自分を見限る訳でもなく、こんな次元の果てまで駆けつけて、確かにその心を救ってくれたのだから。幼い日々に少年が憧れたのは、ただ強いだけのヒーローではない。困っている誰かを見たら、それこそ理由なんか考えずに手を差し伸べに行く。それこそが、少年が素晴らしいと思った魂の在り方なのだから。


 しかし、こちらの素直さに面を食らったのか――いつものように皮肉の一つでも返されるとでも思った居のだろう――アラン・スミスは唖然とした表情を浮かべて後、すぐに照れくさそうに頬を掻き始めた。


 少年自身も狙っていなかったカウンターが決まって少し胸がすく心地がして後、視線を上げて改めて辺りの景色を――再開された人々の営みをみつめる。そこには、自分が、自分達が創り上げた世界に生きる人々の営みが映し出されている。彼らは自分達が生み出し、育んできた結晶、随分と親の我儘を押し付けてしまったかもしれないけれど、それでもひたむきに成長し続ける萌芽――アラン・スミスが語ったように、自分達の良さも確実に継承してくれている愛おしい存在達の様子が、まさしく無数の星のように煌めいていた。


「それで……僕も、見たくなってしまったのさ。貴方が好きだと言ってくれた世界に生きる人々の未来をね」

「……なるほどな」


 男は頬をかくのを止めて小さく笑い、そして少年から数人分ほど距離を離して隣に座った。それは、いつかの日に二人で語り合った距離感と同じであり――気が付けば、二人の腰の下には瓦礫の山が敷き詰められていた。未来に希望を見出している時に瓦礫とは、少々景気が悪いのではないか――少年は一瞬そんな風にも思ったが、すぐにこの光景のもたらす懐かしさが勝り、悪くないような心持ちになった。


 アランの方も同様だったのか、最初こそ現れた瓦礫に驚き、しかしすぐにしっくり来たのか、瓦礫の下で足を延ばし、少年と同じように色鮮やかな星の瞬きを見上げた。


「……しかし、お前の作った設定な、全部が全部良いと思ってるわけじゃないぜ? なんだ、アラン・スミスが死人の呼び名って言うのは。人のコードネームを使うだなんて、趣味が悪すぎるだろう」

「それは、僕なりに先輩の死を悼んでだね」

「自分でとどめを刺しておいて、悼むもくそもねぇだろうがよ」

「はは、違いない」


 男の言葉は乱暴だが、声色は穏やかだ。だから、話しやすい。二課においては先輩と後輩という間柄だったが、互いに皮肉を言い合う悪友のような仲であったし、それが少年にとっては心地よい関係性であったことを思い出す。


 それは、アラン・スミスが真っすぐであるから安心できるという意味合いでもある。他の者と違って、彼の本心は分かりやすく、少年としても自然体でいやすく、だからこそ会話をしていて心地よかったのだ。


 もちろん、少年は知っている。アラン・スミスは大胆な一方で繊細な部分も持っており、相手の立場や気持ちを慮って、様々なことに苦心していることは理解している。ただ、少年と彼とが対照的であったのは、苦心した結果として自分の殻にこもってしまうか、全てを認めたうえで奔走し続けるのか、その違いであったのだろう。その諦めずに抗い続ける様が彼の真っすぐさであり、心地よさであり、同時に少年が永久にその背に追いつけないという絶望をもたらしていた。


 ただ、今となっては、羨望よりも感謝が勝る。二度も自身を殺めた相手を救うために、こんな果ての果てまで来てくれるなど、真似しようと思ってできることでもないし、何よりそのお人よし加減は真似しようとも思わない。だから、もはや少年は完敗だと認めた訳だし、ようやっと自己の肥大化を抑えて、彼我との間に明確な境界線を引くことができたのだ。


 少年がそんな風に自己分析をしている間に押し黙っていると――単純に会話より思考が勝っただけだが――隣からどこか遠慮するように小さな声が上がり始める。


「……でも、聞いたぞ。惑星レムに美しい景色をたくさん作ったのは、それこそお前が死んだ俺に捧げようとしたんじゃないかってな」

「晴子からそう聞いたのかい?」

「あぁ……違うのか?」

「ここで肯定してあげられれば、底値になっている僕の株を少しは回復できるんだろうけれど……残念ながら違うね。

 もちろん、この世界の文明レベルを中世相当で抑えたのは、進歩が最も遅れた暗黒時代と呼ばれた時代を再現するというのが一番の理由だった訳だし、そも自然環境も文化形成の重大な一要因になるから、なるべく旧世界に近い環境を再現させるのが良いだろうという実践的な理由もあったけれど……かなり細部までこだわったのは、単純に、僕がそれを見たかったからさ。

 ま、要するにだ。僕の趣味と先輩の趣味とが、たまたま合致したってだけだよ」

「はぁ、なるほど……いや、野郎と趣味が合うだなんて気色悪いだけだぜ」


 男は一瞬納得しかけたようで、すぐに首を振ってしっしと少年の方へ向けて手を振ってきた。だが、互いに悪い気はしていないはずだ。趣味が合うというのはそれだけ互いを理解しやすいということの証左なのだから。


 その後は、惑星レムについての話を瓦礫の上で気の向くままに語り合った。アラン曰く、都合の良いように改造して抑圧していたことはいただけないが、それでもやはり少年たちが創り上げた機構は冒険心が掻き立てられて不謹慎ながらにワクワクしたということ。自然と共存し、時に切り拓き、積み上げてきた街並みや景色には何度も心を打たれたこと。そしてどれだけ創造主たちが抑圧しようとも、少しずつでも成長しようとする子供たちの在り方を美しいと思ったこと――アラン・スミスが惑星レムをディストピアと評したことなど、少年たちが創り上げた世界のうちのほんの一部の評価にしか過ぎなかった。本当に、彼はあの世界のことを愛してくれているのだと――話しているうちに、それが少年には痛いほど伝わってきた。


 男の感想に対し、少年は「それはこういうつもりであった」だの、「結構苦労して作った」だのと、創り上げた世界に関しての蘊蓄うんちくを語った。きっと、我が子を自慢したくなる親の気持ちというのはこういうものなのだろうと。可愛いだけでない、好きなだけではない、時には面倒くさいことだってあるし、合わせ鏡の存在に眼をそむけたくなることもある――だが同時に苦労して育て上げたからこそ誇らしく思う。少年は今更ながらにそれを理解した。そしてやはり脳裏に浮かんでくるのは、いつでも自分の隣に居てくれた彼女のことだった。


 今となってはどうすることもできないが、出来ればもう一度彼女と――そう思って首を振っていると、隣からまた控えめな調子で質問の声があがった。


「……それでお前、これからどうするんだ?」

「どうするもこうするも、さっき言った通りさ。僕は高次元存在と同化し、永久に消滅できない存在になってしまった。まぁそれこそ、はるか遠い未来か何かに、僕のようなヤツがもう一度現れて、今度こそ意志という物を全て消滅させてやるって殴りこんで来たら分からないけど。

 ただ、そんな馬鹿な奴が来ない限りには……ここから永久に世界を見守ることになるだろうね」


 少年はそこで言葉を切って隣を見る。男はどこか寂しげに眉を潜めていた。それは一般的な魂の在り方から逸脱してしまった自分への同情なのか、消えようとしていた魂がその機会を永久に失ったことに対する――または失わせてしまった事に対する悔恨なのか。はたまた、ここで少年が永久に孤独に過ごすことに対する憐憫なのか。恐らくそのどれもが正解であろう。


 同時に面白かったのは、やはり彼が真っすぐな人だということを再確認させられた点だ。以前は仮面で表情が見えなかったはずなのに、彼から感じる感情は、以前から少しも変わらない――むしろ表情が見えているせいで、余計に余計に痛ましく感じるくらいだ。


「大丈夫さ、悲しいことなんかない。ここからなら、全てが見える。過去も、現在もね。未来からの光はまだ来ないけれど、それはせいぜいネタバレの回避とでも思って楽しむことにするよ。

 それに当面は、誰かさんの行く末を見守っているだけで、退屈はしなさそうだ」

「……テメェに見られていると思うと、おちおち眠ることすら出来なさそうだ」

「まぁまぁ、良いじゃないか。僕がこうなったのは自業自得なんだろうけれど……こんな所まで追いかけてきた誰かさんに対する、ちょっとした仕返しだよ。

 でも、そうだね……もし、望むなら、彼女が隣にいてくれればありがたいんだけれど……」


 少年が伊藤晴子を愛していたという気持ちに偽りはなかった。ただ、申し訳なかったのだ――愛する彼女に対して、到らない自分が。完璧でない自分では、彼女を幸せには出来ないのではないかという焦燥感が常にあって、そんな彼女の隣にいる自分が許せなかった。今となってはそんなことは些末な問題ではあるのだが――。


「……僕はとんでもない甲斐性なしだったからね。もはや、愛想も尽かされてしまっただろうし……そもそも、彼女は僕を止めるために、貴方を蘇らせたわけだし……」

「いいや、そんなことは無いさ。大丈夫、晴子はきっとそのうちここに来てくれる……言ってたぜ、お前に対する感情は執着だってな」


 アランが聞いたというのは、正確には晴子の言葉ではなく、彼女の人格を模したAIが言った言葉なのだろう。しかし、少年はずっとそのAIに対して本物を感じていた。実際に、彼女は本物であったに違いない。それは、夢野七瀬の魂が、クローンを通じてセブンスという器に宿ったのと同じように。


 魂とは、別に必ずしも肉の器に宿る必要性はない。単純に有限の器に魂をもたらすことが命の代謝を産むからこそ――ゴードンが危惧したように、循環しなければ硬直と腐敗を生む――高次元存在は有機物に魂を封じたのであって、自ら思考し世界に何某かを働きかけようとする物に対しては、なんにでも魂は宿りうる。


 その証拠に、第五世代型の中でも、その萌芽を見せている個体は存在する。それに、キーツが考えたように、道具にすら微細ながらに意思は存在するのだ。それならば、AIに魂が宿ったってなにもおかしくはない。惑星レムの海を管理するAIには、確実に伊藤晴子の魂が宿っていた。


 何より単純に、高次元存在と一体になった今の少年なら、晴子の魂の居所をある程度は把握することができる。一年前に海と月の塔で本来の彼女の生命維持装置を破壊してからも、彼女の魂は次の輪廻に向かっていない。つまり、彼女の魂はまだ現世にある。そして、彼女が機械の目を通して見ている景色を、少年はただいま宙に浮かぶモニターから確認できるのだから、彼女はまだあそこに存在しているのだ。


 それならば、確かにアランの言うように、彼女はきっといつの日かここに来てくれる。その時に、何て言われるかまでは想像も出来ないが、もう一度、彼女と会うことはできる。散々彼女には酷いことをしてきたし、今更彼女と一緒にいたいなどというのも全くこちらの我儘という物でもあるのだが――しかし執着というのはどこか彼女らしくて、少々笑ってしまうのも事実だった。


「はは、そいつは怖い。まったく、執着なんて……僕になんかもったいない感情だ」

「そんなこと言うなよ。俺の大事な妹なんだ……お前は、晴子が愛し続けた男なんだ。だから、勿体ないなんて言うもんじゃないぜ。今度こそ……晴子のことを頼む、右京」

「……あぁ、今度こそ。嘘偽りなく……今更彼女のことを幸せにするなんて言えなけれど……任せてくれ、先輩」


 少年の返答に、男は満足そうに頷いてくれた。そして瓦礫の海に静寂が訪れた。こんな風に沈黙ですら心地いいのは、彼が少年にとって数少なく心を許せる相手であるからこそだ。これは、この兄妹の特性といって良いのかもしれない――むしろ、晴子は兄の影響があったからこそ、一緒にいて居心地が良かったのかもしれない。


 もちろん、やはり同性と異性で距離感が違う部分もあるし、兄には兄の、妹には妹の良さがあり、同時に難しさもあるのだが――ともかく、先ほどは自分のことを聞かれたので、少年は相手のことを聞き返してみることにする。


「それで、先輩の方こそどうするつもりだい? 何か帰れる算段があってここに……あるわけないか。タイガーマスクはそういう男だ」

「イヤな方向性に信頼が振り切れているが……まぁ、その通りだ。残念ながら、無策でここに吶喊してきたよ。それに……」


 男はそこで一度言葉を切り、外套の下にあるベルトを優しく叩いて見せた。それが最後の衝撃となったのか、ベルトはバラバラと木屑かのように崩れてしまう。


「もう、コイツは使えないからな。ここに来た時みたいに、馬鹿みたいな速度で走って帰ることも難しいな」


 そう言いながら、アラン・スミスはどこか寂しげに笑った。流石に光すら超えるほど無茶をさせたのだから壊れて当然と言えば当然なのだろうし、逆によくここまでもってくれたとも言えるのだろうが――彼が今抱いている感情としては、恐らく良きライバルであったフレデリック・キーツの作品を壊してしまったことに対する申し訳なさ、と言ったところか。


「それじゃあ、僕と一緒にここで過ごすかい?」

「勘弁してくれ。陰気臭い野郎と一緒に四六時中一緒だなんて、気が滅入らぁ」


 アランはそう言いながら、再度少年の方へ向けて面倒くさそうにしっしと手を振る。直後、遥か彼方をじっと見つめながら口元を引き締めた。


「仮に戻れなかったとしても、後悔はない。あの子たちの未来を繋ぐことは出来たんだから。だが、未練はある……俺は、あの描きかけの絵を完成させたいんだ」

「それなら、貴方は帰らないといけないよ」


 そう言いながら立ち上がり、少年は目の前の空間を指先で一撫でする。すると、瓦礫の海の上に一筋の光が入りその光は遥かへと続く道になった。その道の終着点には、虎の帰りを祈っている者たちが待つ、現世への眩い光が輝いている。


「悪の組織を倒して戦いに終止符を打ち、そして還らぬ英雄となる……一見すると美しい幕引きだけど、そんなものよくある三文芝居だ。ヒーローは生き残り、決断して掴んだ未来の結末を、その最前線で見る義務があるんじゃないかと思う。

 そして、今度は僕に見せて欲しいんだ……貴方の作品をさ」

「ヒーローだなんて、そんな大それたもんじゃないさ……俺は勝手に皆のためだとかなんだと走り回ったが、結局……俺の方こそ、あの子たちに救われたんだから」


 男はそこで言葉を切り、道の先で輝く光を見つめながら自嘲的な笑みを浮かべる。


「散々言われたよ。自分一人頑張れば世界がどうにかなるなんて酷い傲慢だって……実際にその通りだと思う。思えば、人なんてもんは誰かに救われるもんじゃないんだ。確かに、幾分か手伝いはできるかもしれないけれど……誰かが救われる時ってのは、勝手に救われてるもんなんだ。

 もっと言えば、自分で自分を許した時にこそ、人ってのは救われて、成長するもんなんだと思う。お前だって、結局のところはテメェが歩いてきた道筋に救われたんだから」

「そうかもしれないね……ただ、ならばこそ、貴方は帰らないといけないよ。貴方を救えるのは、未練を解消できるのは、貴方だけってことになるんだからさ」

「右京……」

「……とまぁ、あぁだこうだと理屈はつけたけど、ここで貴方がキチンと帰ってくれなきゃ、さっき誰かさんの未来を見届けたいって言ったのが嘘になってしまうからね。話が締まらないってのが本音さ」


 少年が振り返ると、男は道の先にある光をじっと見つめ――そしてまた微笑を浮かべながら首を横に振った。


「不公平じゃないか? 俺はお前から感想を聞けないんだからよ」

「大丈夫だ、ちゃんと伝えるよ。ただ、それは未来の話……僕からしたら一瞬だろうけれど、貴方からして見たらまだまだ先の話になるだろうね」

「……あぁ。その時が来たら聞かせてくれ。そん時は、俺はしわくちゃのジジイになってるかもしれないがな」


 そこまで言って男はようやっと立ち上がり、瓦礫を踏みしめながら亀裂の前に立った。一応、少年はまったくの善意から帰り道を用意したのだが――元々持っていたJaUNTの発展型でもあり、自然とできたことではある――如何せん他人を遥か彼方に送り届けなければならないので、一瞬で移動とはならない。そして、いくつか注意すべき点もある。


「光の筋の上を行けば、あるべき場所へと帰れるはずさ。だが、気をつけてくれ……かなりの距離の移送になるから、結構な距離を歩くことになるはずだ。

 そして多次元宇宙はその構造上、ちょっとでもズレれば上手く戻れなくなるかもしれない。少しのズレが複雑な因果をもたらし、たとえば宇宙空間に投げ出されてしまうとか、何万年もズレた時間軸に放り出されてしまうかもしれない。

 だから、この筋に乗ったら、後は振り返らず、真っすぐにあの光を目指していくんだ……貴方の帰りを待っている人たちがいる、あの場所にね」

「あぁ、了解だ……とはいっても、別に外れることも無いと思うが……」


 アランはそこで言葉を切り、しばらく亀裂の奥にある光の筋を見つめて押し黙った。確かにそう幅のある道でもないが――横幅は三十センチメートルといったところだ――今更になってそれを怖がる男でもあるまい。恐らく、本心としては――。


 そしてややあってから首を回して少年の方へと顔を半分見せ、嘆息を吐きながら口元を吊り上げた。


「……どうせこれが最後なわけでもないんだ。あんまりしんみりしても仕方がねぇな」


 そう言って男は少年に背を向けて光の筋へと一歩足を伸ばす。


「それじゃあな。またいつか会おうぜ、少年」

「そうだね……またいつか会おう、先輩。そして、ありがとう」


 少年の返答を背中で受け、男は右手を挙げてひらひらと手を振り、そして一歩一歩を踏みしめながら光の方へと向かって歩き出す。少年は段々と小さくなっていくその背が見えなくなるまで――いや、見えなくなってからも男が去っていった道筋をいつまでも見つめていた。

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