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14-84:暴食の女神 上

 トリニティ・バーストを展開してからも、相変わらずの苦戦は続いていた。まず数で圧倒されているのは勿論だが、やはりローザ・オールディスの術が強力であるというというのは認めざるを得ない。一体一体の強さはタイタンの妖女を使っている時ほどではないものの、それでも生半可な第五世代など比較にならないほど強力であり、その数も相まってかなりの厳しい展開が続いていた。


「一体一体ならなんとかなりますが、少ししんどいものがあります……!」


 セブンスが言う「しんどい」とは、主に敵の外見のことを指すのだろう。凶悪な表情をしていると言っても、外見は年端もいかぬ――下手をすればセブンスより幼く見える――女子おなごを相手にしているのであり、それを両断しなければならないというのは心根の全うなセブンスには堪えるはずだ。


 かと言って、自分たちの中で最大の攻撃力を持つのは彼女であり、また本人もそれを理解しているが故、彼女の剣閃に迷いはない。セブンスが剣を一振りすれば、必ず一体の器が倒される。黄金色の剣戟に伏す器が幸いなのは、単純に両断されて贓物をぶちまけることなく、ラグナロクの持つエネルギーに炭化するという点だろうか。とはいえ、切断面が直ちに炭化するだけで死骸は残っているし、同様に自分やチェン、ブラッドベリが倒す器はそのまま肉塊として辺りに散っている。戦っていれば当たり前とも言えるのだが、それが年端もいかぬ少女のものであるともなればセブンスが気分を害するのも致し方がないだろう。


 その後、しばらく戦っていて分かってきたこととして、恐らく同時に動ける器の数には限りがある。それこそ、この部屋の中に居る全体が一機に襲い掛かってくるわけでないのがその証左とも言えるのだが、一体倒れると新たに一体、二体倒れると新たに二体と言う形でシリンダーから器が飛び出してくるという点も、同時に操るのに制限があるということの証拠と思われた。


 ただ、それが分かったからといって何かが有利になる訳でもない。依然として部屋にはまだ動いてない器が数多く存在しており、数体倒したところで全体としては全く数を減らしていないからだ。不幸中の幸いとしては、薄布一枚で眠っていた器たちは武器を持っていないので、相手からの攻撃の脅威度は抑えられているというのはあるが――それでもその肉体の強靭さは折り紙付きで在り、互いに連携し、複数体同時に襲い掛かってくるというのはそれだけでも十分な脅威になる。とくに教会の手合いが使用する結界を纏った攻撃は攻防一体であり、腕にまとった七星結界が四方から跳んでくるというのはかなりの脅威だ。


 他にも分かった点として――こちらが肝要なのだが――依然としてローザが何かを喋る時にはどこからともなくスピーカーから声が聞こえるという点である。これの指し示すところは、少なくとも自分たちが相手にしている器たちは本体でないということ――。


「……チェン」

「えぇ、恐らく私は今、貴方と同じことを考えています……確かにこの人海戦術は厄介この上ありませんが、それを操っている者さえ倒してしまえば、全ての器が糸の切れた人形のように動きを停止するはずです。ですが……!」


 チェンは一度言葉を切り、ローザの本体が居るであろう通路の方を睨みつける。自分たちの予測が正しいということの証左であるかのように――同時に自分たちにとって厄介なこととして、通路の付近には複数の器と二体の熾天使とが配置されている。あの防衛網を突破するのは並ではないし、さらに奥にはまだ敵が控えているかもしれないことを鑑みると、安易に飛び込むことも難しい。


 とはいえ、いつまでも数の暴力に付き合って、消耗していくよりは幾分かあの壁を突破することを考えたほうが建設的だろう。やはり誰かがこの防衛網を突破して、ローザの本体を叩くのが良いように思われる。


 そしてそれをするのなら、やはり自分の他に適任はいない。ローザの領域もそれなりの面積を有しており、またその内部の詳細はローザしか認識していない以上、あの通路の先のどれくらいの位置に本体が座しているか分からないからである。ここから直ぐの場所にあるのか、それとも複雑な迷路のような構成になっており、距離に換算してまだ数キロメートルあるのか――いずれの場合にしても、自分ならばADAMsで迅速に移動し、本体の元まで辿り着くことができる。


 そうなれば、セブンスに道を切り拓いてもらうのが良さそうか。彼女のラグナロクならば、その特殊な指向性をもつエネルギーで器共の七星結界やルシフェルの反物質バリアを打ち破ることもできる――。

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