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14-60:最後の作戦会議 上

 ソフィアの質問の後、レムは一息入れてから「さて、作戦としては到ってシンプルで、つまりいつも通り」と話を切り出す。


「こちらは火力を一転集中して穴を作って最速で抜けていくだけです。右京からしてみてもまたか、という作戦にはなりますが……結局戦略とか戦法というのは、量か地の利が伴わなければ実行不可能なものですから。

 こちらに関してはノーチラス一隻にて何倍もの敵戦力を超えていかなければなりませんし、海と月の塔の時のように生身で戦闘をすることも出来ません。また、我々は結局一点を目指して攻めていかなければならない以上、相手側としてはその防衛に徹すればいい……奇策を用いて艦隊をおびき出すことも考えられますが、マルドゥークゲイザーがある以上は飛行時間が伸びるほど不利ですから、結局最短を駆け抜けていくのが一番可能性としてマシ、という結論になりました」


 補足として、レムからは二つのことが共有された。まず、地上にはこちらが使える宇宙艦隊が存在しないこと。これはキーツの艦隊が地上の最後の守護者の役割を担っていたのであり、それらを破壊してしまった今では地上に艦隊は存在しておらず、こちらとしては他の艦隊を利用することはできず、結局ノーチラス一隻で宇宙に上がっていかざるを得ないと。


 次に宇宙艦隊の数について。万が一異星人との戦闘になった際に数十隻というの数が心もとないのではないかという点に関しては、以下三点の理由があるらしい。


 第一に観測可能な範囲で異星人は存在していないこと。要するにワープでもしてこられない限りには一気に近づかれることも無いのであり、仮に亜光速レベルでの接近ならば数百年単位で準備期間を取ることも可能で、それらを観測してから本格的な準備を進めれば良かったという点が挙げられた。


 次に、そもそも亜光速レベルで接近されたとしても、艦隊による接近戦を――艦隊が接近戦というのも違和感はあるが、宇宙レベルなら確かにそうなるのか――する前にマルドゥークゲイザーなどの破壊兵器で迎撃するのが合理的だという点。


 そして最後に、もし相手側がワープで一気に接近してくるような技術力がある場合は、それはDAPAの技術力をはるかに超えた存在であり、そもそも抗うということ自体が無駄であるということから、必要最低限の艦隊しか準備をしていないということらしかった。


 最たる理由はとくに三番目であり、とくに邂逅の可能性が高いのはこの星の原生民族――彼らはDAPAよりも一億年進んだ技術レベルを有しているのであり、もしも攻められた場合には抵抗は無駄だろうと考えられていたようだ。


 それに、仮に異星人との邂逅があったとしても常に戦闘行動に直結するとは限らない。ただし、七柱の目論みを知れば異星人たちはそれを良しとはしないだろうから、高確率で抵抗せざるを得ないとは考えていたようだ。


 とはいえ、結局三千年の間、異星人たちからのコンタクトは一切なかった。そこから推測するに、原住民族達はもはや何百万光年近く離れた場所に居て自分たちのことを観察できていないか、はたまたワープのようなものは開発できておらず、七柱たちがその願いを叶えるまでの邂逅はもはやほとんどあり得ないと考えられていたようだ。自分たちの尺度からすれば三千年も途方もない数字だが、宇宙スケールで考えればほんの一瞬の出来事に過ぎないということなのだろう。


 要するに、月の艦隊はマルドゥークゲイザーを超えてきた場合における最後の切り札として、そして地上の無敵艦隊は主に他の七柱に対するキーツの私設の戦力としての側面が強かったということらしい。必要最低限として作られていた月の艦隊が相手をすることになるのは異星人ではなかったという点は皮肉だろうが――同時にそれらがこちらの壁として立ちはだかるのも皮肉ではあるが、ひとまず自分たちと右京側の戦力差についてはそういった状況らしかった。


 それに、仮に地上に利用できる宇宙船があったとしても、それに乗り込む人材が居ない。自動制御や第五世代にやらせることも不可能ではないが、そうなれば右京のハッキングの的になる。惑星側の付近であればレムが護れるが、月に近づくほど電波が届く速さの問題で右京側が有利になる。月側に近づくほど乗っ取られる可能性が高いので、どの道一隻で突破するほかないということも付け加えられた。


 話を戻すと、つまりはマルドゥークゲイザーこそが最大の関門であり、それを先立って破壊できればノーチラス号の生存確率は大分上がる訳だ。とはいえ、それが出来れば苦労はしない。同じ星の中なら地中だとか電波を阻害しながら秘密裏に動いて施設に潜入工作することなども可能だが、如何せん宇宙を隔ててしまっているとなれば、必ず宇宙船にて接近しなければならない。


 自分がそんなことを考えている傍ら、ソフィアがチェンと何やら話しているのが耳に入ってくる。

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