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14-35:少女の内省 上

「私に外向きの思考は譲ったから、可愛げが無くなっちゃったんじゃなかったの、ソフィア?」

「むぅ……私も成長してるんだよ、グロリア」


 ソフィアがそう唇を尖らせると、グロリアはソフィアの方でなく、自分の肩に留まった。


「成程ね……でも、そろそろ戻りましょう? アランの絵、昨日から全く進んでないみたいじゃない」

「大丈夫だよ、グロリア。ちょっとお話に没頭しちゃったけど、こうやって横で見ているだけで、アランさんの邪魔はしないし」

「アナタのその特大な存在感で隣にいられたら、集中できるものもできないわよ」

「でも、アランさんも大丈夫だって言ってたよ?」

「粘る気ね? でもそれなら、私にも考えがあるわ……ねぇアラン、聞いてよ。ソフィアったらね……」


 そこから始まったグロリアの暴露は、ソフィアは感情が無くなったと言っていたり、お多感な感じの命名センスを持ったりと、自分としては聞いていて非情に有意義なものだった。年相応でよろしい、何より自分はそういうのは大好物だ――しかし思わずニヤけてしまったせいか、ソフィアは暴露に終始慌てて恥ずかしがっており、大きな声でグロリアを止めようとしていたが、なお相方の暴露は止まらないのであった。


 ◆


 しばらく暴露に甘んじた後、自分はグロリアに引きずられるようにして別荘へと戻った。他の人たちに見られない様にさっさと二階へと移動し、自分とグロリア以外いない寝室へと入って扉を閉めて後、自分はそのままその場にへたり込んでしまう。


「ふぅ……グロリア、ありがとう」

「どういたしまして……まさか、アナタからヘルプが入るとは思わなかったけれどね」


 そう、別にグロリアはアランの邪魔をしている自分を止めに来たのではなく、自分から彼女を呼んだのだ。あのまま隣にいると、気持ちが抑えられなくなりそうだったから。自分でもどうにかなってしまいそうで、しかし自制することも難しく、やむを得ずに彼女に助けを求めたのだった。


 それを気とられないように、グロリアが来た後も自然な会話をできていたと思うが――。


「……でも、あんな風に言わなくても良かったと思うな! 確かにグロリアの言ってたことに嘘も無いけど、わざわざ面白おかしく誇張して……」

「良いじゃない。アランはああいうのが好物なんだから。むしろ同じような感性を持ってると知って、親近感すら覚えたんじゃないかしら?」

「むぅ……でも、アランさんずっとニヤニヤしてたよ?」

「だから好物なんだって……まぁ、からかう気持ちがあったって言うのは否定しないけれど。でも、完全無欠のソフィア・オーウェルに親しみやすい所があるっていうのはプラスだと思う。

 でも、強いてを言うなら……もう少し相手の立場になって行動はするべきな気はするけれどね」

「……迷惑だった?」


 確かに、グロリアは自分とアランが二人っきりになれるように気を使ってくれたのに、自分が限界になったら助けてくれだなんて自分勝手なようにも思う。そう思って質問したのだが――グロリアは肩の上でゆっくりと機械の首を横に振った。


「ヘルプに呼ばれたことはなんとも思ってないわ。むしろ、ちょっと意外だったくらいだし……どちらかといえば、長時間アランを拘束していたことについてね」

「やっぱり、邪魔しちゃったかな」

「まぁ、私も昨晩時間を取らせちゃった身だからなんとも言えないけれど……でもそうね、邪魔ともちょっと違うかしらね。

 アナタがアランの隣にいたいって気持ちも十分わかるし、それ自体は悪いとは思わない。それにアランもソフィアと話したかったって本心だと思うから、別に隣に居たこと自体が問題だったとは思わないわ」


 グロリアの本心が分からず、こちらとしては首をかしげることしか出来ないのだが――彼女も言いたいことを上手く言語化できていないのかもしれない。彼女の思考も少し混乱しているらしく、言うべきことを表現するために少しアレコレと考えてくれているのは自分にも伝わってくる。


 そしてややあってから、上手い表現が出てきたのか、グロリアは翼を広げて自分の前で浮遊し、ゆっくりと頷いた。


「私が言いたいのは……そうね、アナタが凄く一生懸命にアプローチするのはちょっと違うかなってこと。もちろん、あの唐変木を好きって人が他にもいるから、アプローチしないとダメって言うのはそうなんだけれど……ちょっとグイグイ行き過ぎな印象があるのよね。

 それこそ……」


 そこで一度言葉を切り、グロリアは更にこちらへと近づいてきた。それこそ、機械のつなぎ目の部分しか視界に入ってこないほどの距離である。


「グロリア、近いよ……」

「そう。私が言いたいのは、つまりそういうことなのよ」


 そう言って、グロリアはこちらの肩といういつものポジションへと戻ってくる。

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