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14-2:黄金症を克服した世界について 中

 次に、第六世代たちの状況について。光の巨人を退けたことで海に囚われていた魂たちが解放され、世界中で黄金症に罹っていた者の大半が解放された。しかし、戻れなかった者たちも居るようだ。それは一年の間で野ざらしにされた結果、器の損傷が激しく絶命してしまった者や、おそらく右京らの実験により魂を摩耗してしまった者がいるとのこであり、第六世代型アンドロイド達に埋め込まれている生体チップから数を確認したころ、黄金症に罹っていたもののうち全体十パーセントほどは戻ってこれなかったようだ。


 社会的な情勢としては、今のところはあまり進展が無いというのが正確な所の様だ。もちろん、一気に人々が黄金症を克服したことで、都市や街では混乱が起きているのは間違いないようだが、今のところは隣人が奇病から回復したことが喜ばれているらしい。


「……ただ、喜ぶべきことばかりではありません。あくまでも可能性ではありますが、今後レムリアの民たちの中で差別や対立、そして略奪が始まることが想定されています。その主な原因は……」

「ルーナ神、ですよね」


 そう小さく呟いたのはクラウディアだ。彼女の声にレムは頷き返した。想定されるのは以下のようなことらしい。今回世界を混乱に陥れたのは、元々レムリアの民たちが信仰していた七柱の創造神たちに他ならない。もちろん、アルファルド神――右京の神託においてレム神はレムリアの民に同情的だったことは語られたし、レア神はこの一年の間で人々を纏め上げていた。また、ヴァルカン神を信仰するドワーフ達は世界の裏側をある程度知っているのであり、これら三柱を信仰していた者たちに関してはさしたる問題はない。また、特定の教理や信徒を持たないアルファルドやハインラインも同様である。


 そんな中、やはり大きな問題になるのは、世界の過半数を信徒として持っている最大勢力であるルーナ派の存在だ。とくに彼女の暴虐の限りは生き残っていたレムリアの民たちも知る所でもある。


 また、黄金症に罹っていた人達は記憶が曖昧だという点も、今後の混乱に一役買うだろうとレムは付け足した。要するに、多くの従順なルーナの信徒たちにとって、光の巨人が現れた日のことは夢か幻のようなものであり、気が付けば丸一年以上が経過していたということになる。そんな彼らは未だにルーナのことを信じており、それが黄金症を発症せずにいた第六世代たちとの大きな溝となることが予測されている、ということだった。


「もちろん、今のはあくまでも予測であり、そうなるとも限りませんが……」


 レムが一度言葉を切ったタイミングで、チェン・ジュンダーが静かに首を横に振った。


「いえ、残念ながらその予測は高い確率で当たると言えるでしょう。どちらかと言えば、残っていたレムリアの民はまずは眠っていた者たちにこの一年間の様相を語るでしょうし、何より自分たちが抗い続けたからこそ世界が存続したという誇りもある。

 しかし、黄金症を発症していた者たちとしても、ルーナが邪悪であったという記憶にないことはなかなか受け入れることもできないでしょうし、黄金症に罹っていなかったものとの間に軋轢が生じることが予想されます。

 そうなれば、両者の対立は必至……そのような事態になるのは、アシモフとしても無念でしょうがね」

「そんな……ねぇ晴子、なんとかならないのかしら?」


 すがるような声を女神のホログラムに向けたのは、同じホログラムのグロリアだった。彼女はアシモフの無念という言葉に反応したようであり――自分が眠っている間に彼女が散ったことは知らされているが、その時にアシモフ親子の間に何かがあったのかもしれない、グロリアは母の無念を何とか解消してあげたいと思っているように見える。


 対するレムは――在りし日の病室でそうであったように、二人が親密にしていることに少し感動を覚えつつ――グロリアを安心させるように優しく微笑みを返した。


「もちろん、今のは何もしなければ、という話です。一応、その気になれば第六世代達の思考をコントロールすることも可能ですが……」

「……それは、違うんじゃないの?」

「えぇ、私も違うと思っています。この星は、この星で育った者たちに委ねられるべきもの……そうなれば、私たちにできることは、レムリアの民たちが悲しい未来を歩まないように支えることだと思っています……アガタ」


 一同の視線がアガタに集まると、彼女は立ち上がり背筋を伸ばした。

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