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13-64:一つの決着 上

「くっ……グロリア、ソフィア!」

「動くな!」


 こちらが声に足を止めると、ゴードンは人差し指で少女の上を指した。そこには巨大な氷柱が浮かんでいる。自分が妙な動きをしたら、それを落下させて小夜啼鳥にトドメを刺すということなのだろう。


「ふぅ……いや、なかなかに捌くのは厳しかったよ、君たちの連携はさ。ただ、妙な動きをしてみせたら、ソフィア君の命はない……もちろん、妙な動きをしなくてもトドメはさすけれどね」

「くっ……」


 実際の所、ダニエル・ゴードンを倒すのにソフィアとグロリアの犠牲で済むのなら、戦果としては問題ないと言える。しかし、距離を離されてしまっている今、仮にこちらが手を出したとしても仕留めるだけの一撃を瞬時に撃てない。ともなれば単純にナイチンゲイルの犠牲だけで得る者が何もないという事になりかねない。


 何より、少女らに守られた身としては、ここで彼女を見捨てるのはあまりにも情けない。勝算があるのなら卑劣な手を取ることもやぶさかではないが、ひとまず向こうも呼吸を整えるのに時間を稼ごうとしているようだ。それならば、こちらもその間に策を練れば――。


『……チェン、これで良いの。私たちに策があるわ……今はアイツの注意を逸らして、時間を稼いで』


 自分が策を練ろうとしている間に、通信機からグロリアの声が聞こえた。できればその策の内容とやらを教えて欲しいのだが、敵を欺くにはまず味方からともいう。下手に知れば気とられかねないし、何よりソフィアとグロリアが考えた策なら信用できる。


 彼女らがダニエル・ゴードンを出し抜ける確証はないが、それは自分も同じことであり――どうせ全てにおいて確実でないならば、ひとまず彼女たちの策を利用させてもらい、時間を稼いでいる間に自分も何か有効打を考えておけばいい。そう腹積もりを決めて両手を上げながら正面へと向き直ると、男は息を整えながら杖の薬莢を詰め直しながら口を開く。


「ふぅ……ちょいと一つ気になるんだがね、チェン・ジュンダー……君はどうして異様な妄執を見せ、僕らを追ってきたっていうんだい?」

「単純なことです。貴方達を放っておけば、宇宙の均衡が崩れかねない……私はそれを止めるために、貴方達を追い続けていたのです」

「嘘だね。人はそんな綺麗ごとで、そこまでの執着は見せられないさ。母なる大地で実験に失敗した僕らが再び高次元存在に手を伸ばすとなれば、相応の年数が掛かることなど君にも分かっていたはずだ……そうなれば、君は適当に天寿を全うし、後のことなど誰かに任せておけばよかっただけだろう?」


 自分の言葉に嘘があった訳ではないが、確かに彼の言うように執着を見せていた理由は他にある。だが、それは同時に、魔術神アルジャーノンと呼ばれる男にも同様に、一万年も生きていたのには相応の理由があるということの裏返しになる。


 元々、彼奴等の動機になど興味があった訳でもない――知ったところでどうせろくでもないことだと思っていた部分はあるが――今はグロリアに注意を逸らす様に言われているので、少し会話を長引かせられるように思い切って相手側に質問をしてみることにする。


「逆に……貴方は何故、高次元存在を封印しようと考えているのですか?」

「以前にもソフィア君には言ったんだがね。僕らに意味を見いだせだなんてふざけたことを考えている連中を引きずり下ろし、更に多次元宇宙について研究することで、全てを知るためだと」

「いいえ、私が気になるのはそのもっと先です……いいえ、むしろその前と言っても良い。どうして貴方は全てを知ろうと思ったのか、その動機を知りたいのです」

「……僕に二度目は無いかもしれないからね」


 アルジャーノンは一度言葉を切って、どこか自虐的な笑みを浮かべながらため息を吐く。

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